表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

その令嬢、思案する

本日二話目

 フォルスナー王国公爵令嬢の朝はコーヒーの香りを感じるところから始まる。

 まだ目が覚めていない時間から御付きのメイドが淹れてくれるコーヒーの香りでベッドから降りると、それを堪能し目を覚ましている間に髪を梳かしてもらう。


 髪を梳いてもらうと次にメイドが持ってくる今日のオススメの服の中から着る服を選び着込む。

 そうして服を着た後くらいにようやくレイの頭は起動し始める。

 そしてそこからのレイの動きは早い。

 まずは朝の騎士団の稽古に参加。無論動きやすい格好などではなく、朝にメイドが選んでくれたドレスのままでだ。

 すでに日課、そして騎士団の面々にとっては当たり前となりつつある光景である。


 そうして朝稽古が終わるとその間にメイドが準備していたお風呂に入り、再びメイドチョイスのドレスを着込み、朝食をとると殿下に会いに王城まで向かうのだ。


「いつも思うのですが……」


 馬車に揺られ、窓から見える城下町へと目をやりながらレイは一人口ずさむ。

 馬車の窓の縁に肘を置き外を見る姿一つをとっても絵になるような姿であった。


「公爵家の館からでも見えるような距離なのですからわざわざ馬車に乗って行く必要があるのでしょうか?」


 むしろ自分で走った方が早いのでは? とレイは疑問に感じる。

 ステアノス公爵家ののレイの部屋からでもアレスの住む王城は見える。つまりあまり距離的には離れてはいないのだ。

 飛びながら歩いていけば二十分くらいだろう。


「お嬢様、貴族には立場というものがあります。あと貴族は建物の屋根の上を飛び回りません」

「要するに見栄なのね」


 メイドがやんわりと言った言葉の意味を正確に捉えたレイはため息混じりに無駄よねと告げる。


「見栄もありますが護衛の意味もあります。王都と言えども治安が万全というわけではございません」

「ステアノス家には手を出すなというのは貴族の間だけではなく国中に知れ渡っているというのに?」


 今度はレイの言葉にメイドが苦笑で返した。


 ステアノス家には手を出すな。


 これはフォルスナー王国に住む者ならば常識と言われるほどのものである。


 レイがまだ物心つく前の話である。

 父親であるフレイと母親と共に国王陛下から預かっている領地の様子を見るべく向かっていたステアノス家の馬車は領地へ向かう街道で大規模な盗賊に襲われた事があるのである。


 普通、貴族というのは争いごとを嫌う傾向にあり、金で解決する事が出来るならば金で解決しようとするのだ。

 それを幾度もの襲撃で知っていた盗賊達は今回も金になるだろうと考えていたのだ。


 それが王家の剣と呼ばれるステアノス家の馬車とは知らずに。

 ステアノス家は使用人ですら並みの騎士を凌駕する。

 襲撃してきた盗賊達は嘲笑った。馬車から出てきたのがメイド服や執事服を着た者達ばかりのだから。

 しかし、この世界にはレベルという概念が存在し、そしてステアノス家の使用人の最低レベルは40であった。

 一般的な成人男性が普通に暮らしていれば平均レベルは18くらいである。騎士ならば25といったところであろう。それを軽く超えている使用人達がワラワラと現れたのである。

 野盗たちの嘲りの表情は数秒後には恐怖へと変わる。メイドや執事達が馴れた手つきで各々武器を構え襲いかかり壊滅させていた。


 こうして襲いかかってきた盗賊はことごとく蹴散らされるという事が続き、ステアノス家には手を出すなという暗黙の了解が生まれたのである。

今や犯罪者が近づかない館や領地、それがステアノス家なのだ。


 そして数年後、その了解をさらな強固にした人物であるレイは深々とため息をついていた。


「やっぱり、アレス様のためにも悪人を根絶やしにしないといけないのかしら?」


 自分のためではなく愛しい人のために王都の掃除を決行しようか真剣に考える主人にメイドは顔を青くしながら止めに入るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ