国府台の合戦 1
3隊に分かれた豊嶋泰明の軍を追う千葉、真里谷軍9000だが、実際の所は半数の4500程しか追撃せず、残りは後方から追撃する隊を追いかける感じで進んでいた。
敵は3隊に分かれたにも関わらず、伝令の報告では3隊すべてに泰明が居るとの事だ。
後から追いかける本軍に居る真里谷信興は流石に怪しいと思い、轡を並べる千葉孝胤に語り掛ける。
「千葉殿、これは豊嶋の有利な地に誘い出されているのでは? 一旦追撃を中止し物見を出すべきではないか?」
「確かに、ワシもそう思っておった。 敵は明らかに我らを誘っておる。 一度足を止め、軍を纏めましょうぞ」
追撃している家臣より送られた伝令からの報告を聞くにつれ、流石におかしいと思い進軍を止め、追撃している兵を呼び戻そうとした直後、長距離を走って来たかのような武者が両脇を抱えられて千葉孝胤と真里谷信興の前に連れて来られた。
「ハァ、ハァ、ゲホッ、も、もうし…、ゲホッ、もうし…」
「誰ぞ!! 水を持て!!」
見るからに走り続け、呼吸が乱れ話す事もままならない者を見て、真里谷信勝が家臣に水を与えるように命じる。
渡された竹の水筒を渡された武者は中に入った水を一気に飲み干し呼吸を整えるとその場に平伏し口を開いた。
「某は、公方様の臣である簗田成助が家臣、持田信郷と申します。 公方様よりのお言葉を預かり馬を駆って向かっておりましたところ、途中で馬が潰れ…」
「そんな前置きはどうでもよい!! 持田とやら、公方様からのお言葉とは何だ!!」
千葉孝胤が疲労困憊で駆けこんで来た理由を説明しようとする持田信郷を一喝し、成氏からの伝言を早く言うように急かす。
「申し上げます。 公方様は昨夜のうちに兵を進め、本日昼頃には松戸辺りに到着し、即座に総攻めを行う故、急ぎ兵を進め、豊嶋のわき腹を突けとの事にございます」
「な、何だと!! それを先に言わんか!! もう昼だ、既に公方様は豊嶋と合戦に及んでいるという事では無いか!!」
「も、申し訳ございませぬ、途中馬が潰れ…」
「もうよい!! 下がって休め!!」
「恐れながら、主に公方様のお言葉を無事お伝えいたしましたことを早く伝えたく、馬を一頭お貸し…」
「分かった!! 誰ぞ!! この者に馬を与えよ!!」
成氏からの伝令によれば既に合戦が始まっていてもおかしくない時間となっており、急ぎ戦場に向かわねば後れを取るのでは、という焦りから家臣に命じ馬を与えるよう伝え、すぐさま今後の方針について話し出す。
「千葉殿、今から全軍に指示を出さねば合戦に間に合いませぬぞ!」
「確かにその通りだが、コバエのように纏わりつく豊嶋泰明の兵が邪魔だ、あれをどうにかせねば…」
「所詮は小勢、全軍で攻めかかれば尻に帆をかけて逃げ出そう! ここで無為に時を潰し合戦に遅れたとなればお家の恥となろう」
「確かに、後れを取っては武門の恥、一気に泰明の軍を蹴散らし豊嶋の兵を血祭りにあげましょうぞ!!」
千葉孝胤と真里谷信興は家臣に命じ、泰明を追撃している兵達に追撃を中止し、散っている兵を集結させ本体の到着を待つよう伝令を送り、急ぎ本軍を進める。
追撃をしていた千葉、真里谷軍は本軍と大柏川で合流し、休む間もなく兵を纏めると一気に軍を進める。
朝から泰明の軍を追いかけ続けた兵達は本軍が合流するまでの間、少し休息が取れたものの、主君の檄で目を輝かせながら、即座に進軍を開始した。
千葉孝胤と真里谷信興が家臣を通じて兵達に飛ばした檄、それは既に豊嶋軍の本隊は古河公方と交戦中であり、自分達は背後から攻めかかるので大した抵抗を受けない。
そして合戦で正面からぶつかった古河公方の軍と違い、後方から攻める事で被害は少なくなり、豊嶋軍を蹴散らしたら即座に江戸へ兵を進め乱取りを許すとの内容だ。
江戸の発展ぶりを噂程度にでも知っている士分の者達は、足軽、雑兵に対し、江戸で乱取りをすれば持って帰るのに苦労するぐらい金目の物が手に入ると話し、それを聞いて多くの者が疲れを忘れたかのように獰猛な笑みを浮かべている。
その頃、国府台に陣を敷いている俺の元に風魔衆から千葉・真里谷軍が進軍を開始しこちらに向かっているとの報告もたらされていた。
即座に父、泰経に狼煙を上げて合図を送り、村々の家に火を付けさせる。
合図を送って暫くすると、松戸方面から幾つもの煙が立ち込め始めた。
物見が現れ豊嶋家の陣容を確認し去っていき、暫くすると千葉・真里谷軍9000が姿を現した。
陣幕を複数設置し、兵を隠していたので物見の目には待機している千葉実胤と弟の千葉自胤兄弟、そして武蔵の国人衆のみと見えたようだ。
千葉兄弟の兵は千葉家の家紋である月星が大きく書かれた大旗を掲げている。
千葉家の当主を自称し、下総の支配を完全なものにしたい千葉孝胤は400程の兵を率いている千葉兄弟を討つように突撃を命じる。
一方真里谷軍は、突撃を開始した千葉軍と異なり、一旦兵を纏め陣立てを始める。
目の前の敵は僅かであり、陣を敷いてはいるが、豊嶋の兵は今、古河公方と戦っており、多数ある陣幕はこの合戦に参加している国人衆達の陣、そしてそこには兵糧や金、予備の武具などがあるはずであり、敵を蹴散らした後、豊嶋軍の背を突く前に、あわよくばそれらの物を手に入れようと千葉軍の足軽雑兵は我先にと突き進む。
豊嶋軍の中央に居た千葉兄弟と国人衆の兵が踵を返し背を見せ逃げ出すと、千葉軍は更に勢いづき、獰猛な笑みを浮かべながら豊嶋軍の陣へと襲い掛かる。
ドドーンッ!!!!!!!
腹の底に響く轟音が戦場に轟き、直後、先頭を走っていた千葉軍の兵達が倒れ込む。
ドドーンッ!!!!!!!
突然の轟音に驚き足を止めた兵達が、二度目の轟音で更に先頭の兵が血飛沫を撒き散らしながら倒れ込む。
直後、乱立していた陣幕が倒されると、満を持して待ち構えていた豊嶋軍5000が現れた。
「目の前の敵は、朝から駆け続け疲労困憊の者達であるぞ!! 一気に蹴散らし手柄を挙げよ!!!!」
「「「「おおっ~~~!!!!」」」
鉄砲隊と大鉄砲隊による斉射で怯み、腰の引けた千葉軍に、俺の号令の元、本陣を守る1000の兵を残し2000の兵が襲い掛かり、残り2000の兵は陣立てをしている最中の真里谷軍に攻めかかる。
兵を左右の雑木林に伏せている為、俺の率いている兵は5000程だが、千葉軍の兵達の目には突然目の前に大軍が現れたと見えたようで、逃げ出そうとする兵と、後方で前進をしようとする兵がぶつかり、混乱状態となる。
「あの不規則に張られた陣幕は兵を隠す為であったか…。 だが敵は見た所4000~5000、数では我らの方が勝っている。 孝胤殿に伝令を送れ、敵は4~5000程、それを2つに分けており実質向かって来ている兵は2000程度、落ち着いて対処すれば恐るるに足らぬとな」
真里谷信興は、家臣に命じ千葉孝胤の元に伝令を走らせた後、兵達に向かって檄を飛ばす。
「真里谷の者どもよ!! 我らに向かって来る敵は2000程度ぞ!! 我らは4000、数で勝っておる! 豊嶋の兵を押し包め討ち取れ!!!」
陣立ての最中ではあったものの、突撃をした千葉軍によって豊嶋軍の陣容と兵数を大まかに確認出来た事で、真里谷軍の将たちは比較的冷静に対応を始める。
真里谷軍の先陣が豊嶋軍とぶつかり、豊嶋軍の勢いが弱まると、その隙に急ぎ2陣、3陣と陣容を整えて豊嶋軍に攻めかかる。
混乱し、兵が次々と討ち取られていく千葉軍とは対照的に、真里谷軍は豊嶋軍を押し始める。
豊嶋軍と千葉・真里谷軍、共に片方が崩れれば一気に形勢が決まる状態だ。
「押せ!! 押し崩せ~!!!! 目の前の敵を押し崩せば我らの勝利ぞ!!」
声をからし真里谷信勝と将たちが兵を叱咤する。
その時、後方から一騎の騎馬が向かって来る。
向かって来る騎馬に対し、真里谷信興の馬周り数人が馬首を返し立ち塞がった。
誤字脱字、稚拙な文章ではございますがお読み頂ければ幸いでございます。
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