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円卓の生存者篇 16『サードセクション―⑤―』


 胸に剣を突き立てられてもミストのHPゲージはゼロにはならなかった。突き立てられた瞬間にゲージの色が黄色に変わる程のダメージを受けて大きくHPが減り、その後も刃が刺さった状態で受ける継続ダメージによって危険域を示す赤色に変化した。


「そこを退けぇっ」


 あまりの光景に足を止めてしまった自分を奮い立たせてもう一度駆け出す。

 走りながら乱入者へ銃口を向けて引き金を引き、アーツを伴わない射撃で乱入者を退けようとするも身を守るためにローブをはためかせるだけで放たれた光弾は虚しく弾け消える。

 それでもと駆け寄りガンブレイズを剣形態に変えて斬り掛かる。

 するとようやくロングソードはミストの体から抜かれ振り下ろしたガンブレイズと激突した。


「回復を!」


 足元に横たわるミストに向けて叫ぶ。

 俺の声が届いたのかはわからないがミストの手に淡い光が灯った。それがHPを回復する効果を持つアーツの光であることは間違いない。自分たちのようなプレイヤーはどのような攻撃を受けたとしても痛みを感じることはない。胸に剣を突き立てられたとしても抱くのは独特な不快感だけで問題なく動けるはずなのだ。

 だというのにミストは掌に灯した光を自身の体に当てることができなかった。

 ガンブレイズを受け止めた状態で足元に灯る光に気付いた乱入者が非情にもミストの手を踏み潰して行動を阻害してきたのだ。

 この踏み付けでもまたミストのHPは減ってしまう。元々赤くなり即座に回復を要する状態だっただけにこの踏みつけは致命傷にもなり得る。


「やめろ!」


 ロングソードと押し合いになっているガンブレイズに左手を添えて倒れているミストから離れるべく全力で押し込んだ。

 一歩また一歩と後ろに下がる乱入者。

 このまま離れることができればミストは助かる。そう思ったのも束の間。鋭く狙い澄まされた乱入者の脚が残り僅かとなったミストのHPを削り取った。

 視認できていたミストのHPゲージがゼロになる。

 驚愕の表情を浮かべたまま静止したミストの体が光に包まれて一瞬にして砕け散った。


「あ、ああ……」


 乱入者と刃を打ち付け合っている俺に愕然とする余裕などない。ここで気を抜けばミストの二の舞になってしまう。それだけは避けたいと思考を巡らせ切れる手札のなかで最も有効的なものを探した。

 表情一つ読み取れない仮面を付けた乱入者を前にガンブレイズに添えた左手で強く拳を作る。


「<ブロウ>」


 声に出した瞬間、鼓舞しに光が宿る。

 回復の光に気付いて即座に対処した乱入者だからこそ、自分の鼓舞しに宿るアーツの光に反応を見せると考えたのだ。

 狙いは的中して一瞬ではあるが乱入者の意識が逸れた。この一瞬を見逃さず、光る拳をガンブレイズの刃の背に当てて殴り付けるようにして押し上げた。

 ロングソードが浮き上がる両手。

 攻撃でも防御でもない格好を見せる乱入者に返す刀で斬り付けた。

 バックステップで距離を取り構え直した自分の元に一通のメッセージが届いた。この状況届けられたメッセージを確認する余裕はない。だが、送られて来たその内容は容易く想像することができた。おそらくは『脱落者が出ました。脱落者“ミスト”。残り参加者05名』と記されていることだろう。

 残り人数が減ったことは危惧すべき事態。これにより“裏切り者”の勝利に王手(チェック)が掛かった可能性が限りなく高まったということだ。


「これ以上はやらせない」


 明確な敵意を剥き出しにガンブレイズを乱入者に向ける。


「協力して戦いましょう」

「負けられない。そうでしょう」


 立ち上がったラーザとえんぺえがそれぞれの武器を手に駆け寄ってくる。

 それぞれの武器の切っ先を向けた先で乱入者は平然とロングソードを携えた格好で立っていた。

 三人の視線が乱入者に集まる。

 圧倒的な数的不利が何の問題でも無いことはこれまでの戦いで明からとなっている。

 だからこそ不思議に思う。

 もし乱入者も自分たちと同じ参加者だとすればパラメータに大きな違いがあるとは思えなかったのだ。参加者のレベルもバラバラで装備にだって明確な差がある。それを是正するためのシステムが働いているからこそ初心者も参加することができている。であればこそたった一人が、むしろ一人だけが異様に強いことはバランス崩壊に繋がってしまう。


「何かカラクリがあるのか?」


 乱入者の様子を窺いつつ、どう攻め込むべきか考える。

 しかし自分の考えが纏まりきらないまま状況が先に動いた。

 ロングソードを携えた乱入者が目を見張る速度でえんぺえに接近していた。


「おおっと」


 慌てて剣を盾にえんぺえが防御する。

 ガンッと大きな音を立ててかち合った剣が大きく跳ね上げられた。


「このタイミングなら隙ができるだろ」


 乱入者が攻撃を仕掛けてえんぺえが防御した直後にガンブレイズを突き出す。

 最高にして絶好のタイミング。避けられることも防がれることもない攻撃だというのに乱入者は驚くべき反応速度を見せて身を屈めたことで貫いたのは灰色のローブだけだった。

 ぐっと手首を捻って刃に触れたものを巻き込む。そうすることで乱入者からローブを剥がすことができた。

 露わになる乱入者の全身像。

 乱入者の身を包んでいるのは鎧でも服でもない独特な素材で作られた防具。問題なのは俺がそれを見たことがないこと。


「まさか、本当に誰も知らない十四人目がいたっていうのか」


 刃に付いたローブを雑に振り払ってもう一度向き合う。

 体を隠すローブを失ったことで乱入者の挙動がはっきりと見極められるようになった。足の動き、腕の振り、体の使い方全て。


「はああっ」


 手にした槍を何度も何度も突き出すラーザを乱入者は使うロングソードで的確に防御していく。


「まだまだぁ」


 ラーザの攻撃に合わせてえんぺえも己の武器である剣を振り続けている。

 勢いづく二人の攻撃に晒されているというのに乱入者に焦った素振りは見受けられない。


「これならどうだ? <カノン>」


 最高のタイミングで身を翻した二人の傍をリキャストタイムを終えた射撃アーツが駆け抜けた。

 ガンッとそれまでには聞くことのなかった衝突音が轟き、光が弾ける。

 背中を曲げて俯いた顔に添えた指の間から乱入者の足元に大小様々な何かの欠片が溢れ落ちた。


「これでもくらえー」


 槍を回して穂先ではなく石突きで乱入者を腹を強く打ち付ける。


「ぐっ」


 苦悶の声を漏らしつつ体をくの字に曲げた乱入者が崩れるように地面に片手を付くと、起き上がることもなく目の前の相手を牽制するようにロングソードを振り抜いてゆっくりと顔を上げた。


「あんたは――」

「イグルー…さん?」


 見覚えがある顔だ。しかしすぐに名前を思い出すことができない。それもそのはず。この人物は大した会話をする前に、数ある参加者のなかで一番最初に退場したはずの人物だったのだから。

 信じられないものを見るような眼差しで言葉を詰まらせているラーザ。

 三者三様の視線を受けてなお平然とした顔つきで立つ乱入者――イグルーは不気味な笑みを浮かべている。


「あんたが“裏切り者”だったってことか」

「どうでしょう」


 俺が知る数少ないイグルーの印象とは異なる表情を浮かべている彼を見る。


「でも、あなたが脱落したとメッセージが届けられていたはずです」

「そ、そうよ」


 ニヤニヤと笑みを浮かべているイグルーにえんぺえが疑問を投げかけて、ラーザがそれに同意を見せていた。


「それはセカンドセクションの時でしたよね?」


 二人に、そして当人であるイグルーに向けて問う。

 それぞれの返答を待たずに言葉を続けた。


「セカンドセクションにだけ存在したこと。それは各々に与えられた役職とそれに付随した特殊能力」


 自身が抱いた疑問の答え合わせをするように真っ直ぐイグルーを見て告げる。


「俺がセーフティエリアを作り出せたようにあんたも何かしらの能力が与えられたはずだ。それが俺の予想通りだったとしたら、随分とオーバースペックな能力に思えるけどな」

「ほう。では君はそれが何だと思っているのですか?」

「あんたが現われた現状、そして過去の実情を併せて考えるなら答えは一つ。そうだな、あえて名付けるのなら自身の脱落を偽装する能力でしょうか」

「偽装、ですか」


 俺が告げた言葉を受けてえんぺえとラーザが納得したような顔になった。


「正解とも不正解とも言ってはいないのですがね」


 苦笑して肩を竦めるイグルー。


「だとしても、全くの的外れということでもないはずです」

「なるほど。君は確信しているのですね」

「でなければ、最初に送られて来たメッセージの不審点に説明が付きません。もしかすると十四人目がいるのかもとずっと考えていましたけど、あなたが現われた以上は答えは一つだけだ」


 はっきりと言い切った。


「そこまで言い切るのならば、これ以上の会話は必要ないでしょう」


 俺とイグルー、二人の視線がぶつかり合う。


「君が言うように私が“裏切り者”ならば君達を倒せば私の勝利に近付き、そして君達が勝つためには私を倒さなければならない」


 重く長いロングソードの刃がこちらを向く。


「白状したってことでいいですね」

「そうですね。今更隠す意味もないでしょう」


 三人の顔を微笑を浮かべたイグルーが見回す。


「私が“裏切り者”です」


 誰かが息を呑んだ音がした。


「あんたはここで俺たちが倒す」

「やってみろ」


 イグルーが三日月のように口を歪めて笑みを浮かべて告げた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【24】ランク【3】


HP【10140】(+320)

MP【9050】(+770)

ATK【296】(+1810)

DEF【258】(+1880)

INT【282】(+900)

MND【209】(+1110)

AGI【336】(+1130)


【火耐性】(+10)

【水耐性】(+50)

【土耐性】(+50)

【氷耐性】(+150)

【雷耐性】(+100)

【毒耐性】(+100)

【麻痺耐性】(+200)

【暗闇耐性】(+150)

【裂傷耐性】(+40)


専用武器


剣銃――ガンブレイズ【Rank1】【Lv1】(ATK+600 INT+600)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲――ガントレット【Lv67】(ATK+460 DEF+460 MND+420)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭――【イヴァターレ・ネックウォーマ】(MP+270 INT+210 MND+210 氷耐性+30 毒耐性+70 麻痺耐性+70 暗闇耐性+50)【打撃耐性】【衝撃耐性】

胴――【イヴァターレ・ジャケット】(HP+210 DEF+410 MND+380 雷耐性+30 氷耐性+60)【反動軽減】

腕――【イヴァターレ・グローブ】(ATK+330 DEF+240 AGI+160 火耐性+10 氷耐性+10 雷耐性+30 毒耐性+30)【命中率上昇】【会心率上昇】

脚――【イヴァターレ・ボトム】(HP+110 ATK+210 DEF+320 AGI+410 氷耐性+30 裂傷耐性+40)【命中率上昇】【会心率上昇】

足――【イヴァターレ・グリーブ】(ATK+110 DEF+370 AGI+460 氷耐性+20 雷耐性+40 麻痺耐性+30)【気絶無効】【落下ダメージ軽減】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【10/10】

↳【大命のリング】(HP+500)

↳【魔力のお守り】(MP+500)

↳【強力の腕輪】(ATK+100)

↳【知恵の腕輪】(INT+100)

↳【精神の腕輪】(MND+100)

↳【健脚の腕輪】(AGI+100)

↳【地の護石】(地耐性+50)

↳【水の護石】(水耐性+50)

↳【暗視の護符】(暗闇耐性+100)

↳【麻痺の護符】(麻痺耐性+100)


所持スキル


≪剣銃≫【Lv101】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――威力、攻撃範囲が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――威力、射程が強化された砲撃を放つ。

↳<アクセルブースト>――次に発動する物理攻撃アーツの威力を増加させる。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技。

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技。

≪魔導手甲≫【Lv1】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。

↳<ブロウ>――威力を高めた拳で殴り付ける。

≪錬成強化≫【Lv100】――武器レベル“100”までの武器を錬成強化することができる。

≪錬成突破≫【Lv1】――規定のレベルに到達した武器をRank“1”に錬成突破することができる。

≪竜化≫【Lv2】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にHPが少量回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にMPが少量回復する。

≪全状態異常耐性≫【Lv40】――状態異常になる確率をかなり下げる。

≪全能力強化≫【Lv95】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【1】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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