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ガン・ブレイズ-ARMS・ONLINE-  作者: いつみ
第十八章 
609/683

大変な改変は異変!? 41『終幕』


 一筋の流星が大地を駆ける。

 断続的に繰り返される爆発。降り注ぐ光の矢。現われては消えていく影の棘。それら全てを薙ぎ払いながら駆け巡る流星は余裕を見せていたフェレスを貫いた。


「馬鹿な…」


 信じられないものを見たと言わんばかりに一瞬消えた仮面の奥で驚愕の表情を露わにしたフェレスが胸を貫いているガンブレイズの刀身を掴む。ぐっと力を込めてそれを引き抜くと俺の体ごと強引に押し退けて後ろに投げ飛ばした。


「おっと」


 投げ飛ばす、といってもそれ自体はある種の防御手段に過ぎず、力の流れに逆らわずにバックステップをすることで体勢を崩すことなく構えを取ることができる。

 次撃を狙う姿勢で睨み付ける俺にフェレスは新たな武器を生成してその切っ先をこちらに向けてきた。

 元々携えていた暗い朱色の剣を二回りほど大きくしたような両手剣だ。それを片手で軽く持って呼吸を荒くしながらもどこか不敵な雰囲気を醸し出している。


「やってくれたな」


 なおもフェレスの頭上に浮かぶHPゲージの減少は止まらない。

 これまでに攻撃を命中させたときとは異なる光景に俺は戸惑い、ガンブレイズを構えながらもそこから一歩を踏み出すことができずにいた。

 無言のまま睨み合うこと数瞬。ピシッと亀裂が入る音が聞こえ、次の瞬間フェレスのHPゲージが砕け散った。

 砕けたHPゲージの下から現われたのは別の新しいHPゲージ。違うのはそのデザイン。それまでのHPゲージが一般的な形状をしていたのに比べてフェレスの頭上に見える現在のHPゲージに満ちている色は錆色でどこか壊れかけであるように古い鉄骨や鉄格子のような意匠が随所に見受けられた。


「ん?」


 不意に聞こえてきたのは何かのモーター音のような“ブーン”っといった音。

 同時に俺の体を波紋が包み込む。


「貴様!」


 フェレスが激昂し声を荒らげる。

 思わずに構えを解き自分の体に起きた変化を確かめた。

 大きくは変わっていない。だが、今の俺は間違いなくリーリスと戦った時に起こった変化を宿した状態だ。つまり、


「消えていた力が戻ってきた?」

「ありえない!」


 再度フェレスが叫ぶ。


「その力は俺が吸収したはずだ。お前の中に残っているはずなど――」

「だとしても、これは現実だ」


 体を包んでいた波紋が消える。

 変化した竜化状態ので目の前で狼狽えているフェレスを見据える。


「ならばもう一度奪ってやる。その力は俺のものだ!」


 フェレスが言い終わるよりも先にばっと手を伸ばしてくる。

 しかし何も起こらない。


「何故だ!」


 意味が分からないというように再度フェレスが手を伸ばす。

 それでも変化は起こらず痛い静寂が流れた。


「どうやら、これはアンタの力で起きた変化じゃないみたいだな」

「だったら何だというのだ!」

「さあな」

「!!!!!!!!!!!!」


 誤魔化すつもりなど毛頭もなく素直にわからないと答えたつもりだったのだが、俺の返答を受けてフェレスは声にならない絶叫を上げた。

 自身の変化について予想することはできる。一つは消えたと思っていた力が残っていたということ。しかし根源がオルヴァスが宿していたキューブであるのならば、それはフェレスが言うように元々フェレスが持っていた力であり、回収されて吸収されたはず。ならばもう一つの可能性。それは今の状態こそが正しく<竜化>のスキルレベルが上がったことによる変化で、先の変化と同じなのはただの偶然であること。


「フンっ。少しばかり姿形が変わったところで所詮俺には及ばない!」

「どうかな。試してみろよ」


 強く一歩を踏み出す。

 一瞬で接近して敢えてフェレスが構えている両手剣目掛けてガンブレイズを振り下ろした。


「ぐっ」

「どうした? さっきまでの余裕がなくなっているぞ」

「ぬかせ!」


 まるで近くの障害物を払うようにブンッと両手剣が水平に振るわれる。

 軽く後ろに跳んで刃から逃れると再度強く踏み込んで、


「<ブロウ>」


 アーツのライトエフェクトを宿した拳を突き出した。


「ぐふっ」


 息を吐きながら体をくの字に曲げるフェレス。

 素早く手を引いて残っていた光の残滓を振り払うように軽くスナップする。

 よろめくフェレスに向かってガンブレイズで斬り掛かった。


「がはっ」


 どれだけ斬り付けられても血は流れない代わりに大量の火花が舞い上がった。

 腕を回転させて繰り返し斬り付ける。

 その都度火花が舞い上がり視界を最小の煌めきが瞬いた。


「行くぜ。<セイヴァー>!!」


 一拍の間を開けてガンブレイズの刀身に光が宿る。


「ひっ」


 声を引き攣らせてフェレスが僅かに怯んだその一瞬を正確に突いて躊躇うことなく思い切りガンブレイズを振り下ろした。

 一際大きな火花が散る。

 フェレスが大きくよろめいて後ずさり膝から崩れ落ちた。


「な、何故だ」

「ん?」

「何がお前を強くしたというのだ!?」


 実際多少は変化したとはいえ竜化状態である俺の能力にそこまで大きな変化は起きていないはず。だというのにフェレスを圧倒している。そのことが殊更フェレスにとっては理解することができず、納得もできないことなのだろう。


「アンタ、さっき一瞬怯んだよな」

「なんだと!?」

「さっき俺がアーツを使った時だ。その一瞬、アンタは確かに怯んでただろ」

「そ、それがどうしたというんだ!」


 ゆっくりと距離を詰めながら俺はふっと笑みを漏らした。


「誰かが言ってったっけな。戦いってのは強い方が勝つんじゃない、ノリの良い方が勝つんだってな!」


 立ち上がったフェレスを下から上へ勢いよく斬り飛ばす。

 ゴロゴロと転がるフェレスは既にHPの大半を失っている。


「これで決める。<アクセルブースト>」


 ガンブレイズの刀身に赤い光の刀身が重なる。

 赤い光を前に慌てて立ち上がったフェレスが両手剣を構えた。


「<ブレイジング・エッジ>」


 残っているMPの大半を消費して渾身の必殺技(エスペシャル・アーツ)を放つ。垂直に振り下ろされるガンブレイズの軌跡に沿って描かれる真紅の剣閃がフェレスを襲った。

 タイミングを合わせて打ち付けた両手剣と赤い光の刀身を宿したガンブレイズが凄まじい激突と衝撃を生んだ。


「な、何故だ」


 極大の衝撃を一身に受けながらフェレスが先程と同じ言葉を口に出した。


「何故、お前は俺の前に立ち塞がった? 何故、お前はそれほどの力を持っている?」


 その呟きは対峙している俺ではなく、その身で受けた理不尽に対してだったのかもしれない。


「俺がどれだけの時間を掛けてこの力を取り戻したと! どれだけの犠牲を払って――」

「その犠牲ってやつはアンタが他人に押し付けたものだろう!」


 両手剣とガンブレイズ。二者の鍔迫り合いの最中ピキッという音が響く。


「知ってるか?」

「なんだ?」

「大抵の悪事ってのはさ、どれだけ入念に準備したとしてもふらっと通りすがったような奴に簡単にめちゃくちゃにされてしまうもの何だってな」


 静かに告げる。

 衝撃の影響か一瞬剥き出しになったフェレスの顔は仮面の奥で笑う俺とは対称的に仮面の向こうで醜く表情を歪めていた。


「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!」


 獣のようなフェレスの絶叫が轟く。


「はああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」


 さらにその叫びを掻き消すかのように全身全霊の気合いを込めた叫びを上げる。

 二つの剣閃がぶつかり合い、程なくして遂にその拮抗が崩れた。フェレスの手の中にある両手剣が中程からポッキリと折れてしまったのだ。

 両手剣を斬り裂いた剣閃はフェレスまでをも飲み込んでいく。

 完全に振り下ろされたガンブレイズから赤い光の刀身が消える。

 すっと背筋を伸ばして立ち、剣閃が消えた先を見つめていると、微かに光の中にフェレスのシルエットが浮かび上がり、次いで巻き起こった大爆発の中へと消えた。


「……ふぃ」


 溜め込んでいた息を吐き出す。

 竜化が解ける。

 吹き込んだ風が残る火花を吹き飛ばし、立ちこめる煙もまた彼方へと流されていく。

 一人残った俺の手元にコンソールが出現して戦いの終わりを告げるリザルト画面が表示された。

 ちらりと目を落とすとこの戦闘、そしてクエストをクリアしたことで得られた経験値が積み重なりレベルが上がっているのがわかった。が、不思議とそれを操作する気にはなれず暫くの間呆然とその場で立ち尽くし続けていた。

 結局俺はクエストが終わったことによって最後に訪れた町へと送る転移の光が包み込むその時までそこから一歩も動けなかったのだ。






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「斯くしてお前は誰も知らない場所で誰にも称賛されることなく世界を救ったというわけか」


 翌日。高坏円(たかつきまどか)事務所の一室で円が俺の報告を受けて第一声、そのようなことを告げた。


「まあ、そう言われればそうなんですけどね。この手のクエストってのは大概がそういうものじゃないんですか?」

「ふむ。確かにどんなに大事に思えるようなクエストでも全てのプレイヤーに影響を及ぼすようなことにはならないだろう。でなければ色々と辻褄が合わないことが出てきてしまうからね」

「とりあえず、今回の依頼のテストプレイは問題なく終了したってことで良いですよね?」

「ああ」


 報告書という名の俺のレポートをチェックし終えた円はそれを別の外部メモリへと保存している。


「それにしてもだ。私の本音を言えば本公開されている段階でテストプレイもなにもないと思うのだが、悠斗はどう思うかね?」

「公開前はもっと別のちゃんとしたテストプレイヤーがやっているから俺たちみたいなのには一プレイヤーとしての感想が欲しいってことなんじゃないですか?」

「では、君の感想はどうなんだい?」

「その報告書にある通りですよ」

「君の口から直接聞きたいのさ」

「あー、でしたら。もう少し、こう、入れ込めるようなNPCがいたら良いなとは思いました。折角本筋に絡んでくるNPCがいるのに、あまり感情移入することができないくらいの関わりしかなかったですし」

「しかし仮に感情移入してしまった場合、クリアできなかったからもう一度とはならないのではないかい?」

「ストーリーもののクエストなんですから失敗した場合は一からやり直しになりますよね?」

「おそらくは」

「だったら成否に問わず繰り返しプレイするって人は少ないと思います」

「そいういうものかね?」

「少なくとも俺はそうですね」

「成る程。では仮にクリアできなかった場合、どのようなことになると思う?」

「どんなことって、何も影響は起こらないのが普通なんじゃないですか」

「そうだ。そのことがこの手のクエストに対する必死さを阻害している要因だとも言われているのさ」

「誰にですか」

「運営の一部の人達にさ」


 何気なく呟いた円の一言に俺は驚いたように顔を見つめた。


「そこでオンラインプレイからストーリーパートを分けることが検討されているらしい」

「マジですか」

「ああ。実際にどうなるかはわからないが。これも随分と長く運営されているからね。ストーリーパートだけでもかなりのデータ量にはなっているはずだ。それを軽減するための方針の一つだったかな。ストーリーパートを買い切りのゲームデータとしてセーブデータは既存のそれと共通にして売り出す可能性もあるらしいね」

「どこの情報ですか、それ」

「出所は秘密さ」

「…はぁ」


 曖昧に返事をしてこれ以上は詳しく教えてくれないだろうと諦めて視線を天井に向けて浅くソファにもたれ掛かった。


「とはいえ、それはまだもう少し先の話さ」


 自身のパソコンから引き抜いた外部メモリをポケットに仕舞い円が出かける用意を始めた。


「何処に行くんですか?」

「これを届けてくるのさ」

「ここに取りに来るはずでは?」

「そう何度も足を運んでもらうのも悪いだろう。ちょうど私も外に用事があったからね。事のついでというわけさ」


 カバンを肩に掛けた円が俺の前に立った。


「留守番は任せたぞ。悠斗個人で判断できない案件が来た場合は――」

「わかっています。いつも通りに」

「うむ。ならば良い」


 満足げに頷く円を見ると何故かとても機嫌の良い笑みを浮かべている。

 そして、どこからともなく一枚の封書を取り出した。


「それは?」

「これは悠斗に任せたい次の案件だ」

「えっと、まあ、手は空いているから別に構いませんけど。どういう案件なんですか?」

「読めば解る。いつも通り、ではないな。今回は正真正銘のテストプレイの依頼だ」

「はい?」

「先方曰く、バグの検証なんかは終わらせているから実装される前にちゃんとプレイできるかどうかの最終確認をしたいとのことだ。普通に遊ぶ感覚でやってくれればいいらしい」


 封書を直接円から受け取った。


「日時は明後日の午前十三時00分。どのくらいの時間が必要になるかは参加者次第ということだ」


 封を開けて中に入っている書類を見る。


「では、色々と任せたぞ」

「はい」


 事務所から出て行った円を見送る。

 幸いなのか、この事務所の運営を心配するべきなのか。この日、俺が書類を読み込み帰宅するまで、客人は一人として訪れることはなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【24】ランク【3】


HP【10140】(+320)

MP【9050】(+770)

ATK【296】(+1810)

DEF【258】(+1880)

INT【282】(+900)

MND【209】(+1110)

AGI【336】(+1130)


【火耐性】(+10)

【水耐性】(+50)

【土耐性】(+50)

【氷耐性】(+150)

【雷耐性】(+100)

【毒耐性】(+100)

【麻痺耐性】(+200)

【暗闇耐性】(+150)

【裂傷耐性】(+40)


専用武器


剣銃――ガンブレイズ【Rank1】【Lv1】(ATK+600 INT+600)

↳アビリティ――【魔力銃】【不壊特性】

魔導手甲――ガントレット【Lv67】(ATK+460 DEF+460 MND+420)

↳アビリティ――【フォースシールド】【アンカーショット】


防具


頭――【イヴァターレ・ネックウォーマ】(MP+270 INT+210 MND+210 氷耐性+30 毒耐性+70 麻痺耐性+70 暗闇耐性+50)【打撃耐性】【衝撃耐性】

胴――【イヴァターレ・ジャケット】(HP+210 DEF+410 MND+380 雷耐性+30 氷耐性+60)【反動軽減】

腕――【イヴァターレ・グローブ】(ATK+330 DEF+240 AGI+160 火耐性+10 氷耐性+10 雷耐性+30 毒耐性+30)【命中率上昇】【会心率上昇】

脚――【イヴァターレ・ボトム】(HP+110 ATK+210 DEF+320 AGI+410 氷耐性+30 裂傷耐性+40)【命中率上昇】【会心率上昇】

足――【イヴァターレ・グリーブ】(ATK+110 DEF+370 AGI+460 氷耐性+20 雷耐性+40 麻痺耐性+30)【気絶無効】【落下ダメージ軽減】

一式装備追加効果【5/5】――【物理ダメージ上昇】【魔法ダメージ上昇】


アクセサリ【10/10】

↳【大命のリング】(HP+500)

↳【魔力のお守り】(MP+500)

↳【強力の腕輪】(ATK+100)

↳【知恵の腕輪】(INT+100)

↳【精神の腕輪】(MND+100)

↳【健脚の腕輪】(AGI+100)

↳【地の護石】(地耐性+50)

↳【水の護石】(水耐性+50)

↳【暗視の護符】(暗闇耐性+100)

↳【麻痺の護符】(麻痺耐性+100)


所持スキル


≪剣銃≫【Lv101】――武器種“剣銃”のアーツを使用できる。

↳<セイヴァー>――威力、攻撃範囲が強化された斬撃を放つ。

↳<カノン>――威力、射程が強化された砲撃を放つ。

↳<アクセルブースト>――次に発動する物理攻撃アーツの威力を増加させる。

↳<ブレイジング・エッジ>――剣形態で極大の斬撃を放つ必殺技。

↳<ブレイジング・ノヴァ>――銃形態で極大の砲撃を放つ必殺技。

≪魔導手甲≫【Lv1】――武器種“魔導手甲”のアーツを使用できる。

↳<ブロウ>――威力を高めた拳で殴り付ける。

≪錬成強化≫【Lv100】――武器レベル“100”までの武器を錬成強化することができる。

≪錬成突破≫【Lv1】――規定のレベルに到達した武器をRank“1”に錬成突破することができる。

≪竜化≫【Lv2】――竜の力をその身に宿す。

≪友精の刻印≫【Lv―】――妖精猫との友情の証。

≪自動回復・HP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にHPが少量回復する。

≪自動回復・MP≫【Lv20】――常時発動。一秒毎にMPが少量回復する。

≪全状態異常耐性≫【Lv40】――状態異常になる確率をかなり下げる。

≪全能力強化≫【Lv95】――全ての能力値が上昇する。


残スキルポイント【1】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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