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闘争の世界 ep.36 『準決勝その①』


 日付が変わり俺たちは今日も昨日と変わらずに戦いの舞台に立っている。

 昨日と違うのは自分の隣にハルとムラマサがいること。

 そして、向かい側にも対戦相手である三人が勢揃いしていた。


「準決勝は三対三ってことか」

「みたいだね。それに向こうも気合い十分って感じみたいだ」

「おっ、確かに。こっからでもやる気ってやつをビンビン感じるぞ」


 舞台の両端に立っているために話をしていてもこちらの声が向こうに届くことはない。それは向こうが話している声も自分たちに届くことはないことの証左だった。

 すぐにでも戦いが始まる相手だ。少しでも情報を集められないかと目を凝らして相手の装備を観察する。

 武器は右から双剣、槍、弓矢だろうか。

 防具に関しては揃いの物を使っているわけではなく個人個人に適した装備を集めて来たという印象だ。


「おーおー、むこうさんもおれらを見てくる見てくる」


 ことさら面白そうに笑うハルが山頂から遠くを見渡すときのように目を細め言ってきた。

 俺が相手の装備を探ろうとしているくらいだ。相手も同じ事をしてきてもおかしくはないだろう。

 ハルに苦笑を向けているとふと頭上にいつもの人数分の名前とHPゲージが浮かび上がった。左側には俺たち。上からムラマサ、ユウ、ハルの順番で表示されている。相手側はまだ名前と本人が一致していないのだが、上から読んでいくとイッキ、キュウキ、岬と記されている。

 試合の準備が刻一刻と進む。

 今までは試合が始まる直前までこの場所に立つことは無かったというのに、何故今回に限っては自分たちは転送させられているのだろうか。

 何か理由があるのではないかとムラマサに視線で問い掛けてみるも返ってきたのは困惑の表情だけ。


「何にしても戦いが始まってしまえばオレたちには関係の無いことさ。そうだろう?」

「まあ、な」

「お、そろそろじゃないか」


 上空を見上げてハルが言った。

 いつの間にか六人のHPゲージに重なるように浮かび上がっているカウントダウンの数字が一つずつ減っていく。


「始まった」


 落ち着いた声でハルが告げる。彼は外していた兜を被り、背中からハルバードを引き抜いている。

 試合の始まりは静かなものだった。

 互いを牽制するように距離を詰めることなく相手の出方を窺っている。


「どうする?」


 ハルが兜によって若干籠もった声で訊ねた。

 鞘に収めたままの白狼に手を乗せて何かを見計らっているような素振りのムラマサは必死に思考を巡らせているように眉間に皺を寄せている。


「向こうが動かないのなら――」

「お、やっと決まったのか。いつも通り作戦は任せるぞ、ムラマサ」

「ああ。だが、作戦はあくまでも作戦に過ぎない。二人とも臨機応変に対応してくれよ」

「分かってるって。ユウも良いよな?」

「もちろん。俺たちがやることはこれまでと何も変わらないさ」

「頼もしいね」

「全力で頼ってくれてもいいんだぜ」

「いつも頼っているともさ」


 閃騎士の剣を抜き放つ。

 いつでも行けると言葉ではなく行動で告げたのだ。


「先手を取られるよりも囲まれてしまうほうが拙い。初手としてオレたちはそれぞれ一対一の戦闘に持ち込むとしよう」

「ああ」

「だったらおれはあの槍を持っている奴かな」

「ユウには弓矢を持っている人を任せるよ」

「ま、だろうな」

「オレが双剣使いを相手する。けど、各個撃破の作戦がどこまで通用するか……」

「駄目なら駄目で次の作戦を考えるだけ、違うか?」

「そうさ。今はできる限りのことをするだけだろ!」

「わかった。頼むぞ、二人とも」

「ああ」

「任せろ!」


 それぞれの武器を持った俺とハルが自身の相手と見定めたプレイヤーに目掛けて駆け出す。いや、駆け出そうとした。しかし俺たちが動き出すよりも速く弓矢を持ったプレイヤーが天高く弓矢の先を向けたのだ。


「<弓技(きゅうぎ)・降る星・流星(りゅうせい)


 上空に向けて放たれた一本の矢が光に包まれ、最大高度に到達した瞬間、無数の矢となって弾けて降り注いだ。


「全員回避!」


 咄嗟にムラマサの指示が飛ぶ。

 俺とハルはその言葉を聞くよりも前に降り注ぐ光の矢の効果範囲から逃れるべく左右に分かれて走り出した。

 誰もいなくなった舞台の一角に光の矢が降り注ぐ。

 走っている最中に振り返り離れてしまったハルとムラマサの様子を窺う。幸いにして降り注いだ矢を受けずには済んだみたいだが、全員がバラバラになってしまった。

 当初からその予定ではあったものの、自分たちの方から別れるのと分断させられるのとでは意味合いが異なる。結果だけを見れば作戦が失敗したとは言い難いが、それでも最初の激突における主導権は向こうに握られてしまったも同然だ。


「<弓技・駆ける星・彗星>」


 孤立した俺に一筋の光が迫り来る。

 防御も回避も間に合わない。

 ならば撃ち落とすしかない。


「<イグナイト>!」


 拳で光の矢を打ち砕く自信は無い。けれど剣で叩き落とす自信ならばある。

 タイミングを合わせて光を宿した閃騎士の剣を振り上げる。

 奇しくも威力が拮抗した斬撃アーツと射的アーツがぶつかりあった結果、矢が中程で真っ二つに両断されて消えた。


「いいさ。元よりアイツは俺が相手する予定だったんだからな!」


 すぐに切り替えると閃騎士の剣の切っ先を下げて駆け出す。

 最接近できれば断然有利になるのは自分の方。それを理解しているのか、弓矢を構えるプレイヤーは繰り返し此方に向けて矢を放ってきた。

 ただし全て普通の射的だ。アーツは使用していない。

 楽観的な考えとしていつか矢が尽きかもしれないと思いながらも、一向にその気配すらないことを考慮すれば、事前に用意してきた矢の数は十分、あるいは矢が尽きない何か特別な性能を持っている弓矢を使っているのかもしれない。

 この時偶然にも視線が上空のHPゲージを捉えた。そこにはこれまで無かった情報が追加されている。それぞれのHPゲージの隣にそれぞれのキャラクターの顔が表示されていたのだ。

 それによれば弓矢を使うプレイヤーの名はキュウキ。双剣を使うのがイッキ、で槍を使うのが岬という名のプレイヤーであるらしい。

 キュウキの防具はどこか生物的な意匠が込められいる真紅の甲殻鎧。弓矢という武器を使っているにしては随分と重装備に見えるが、元より接近戦をすることを想定していないのか、あるいは諦めているのか。硬い装備は取り回しの容易さよりも同じ遠距離武器を使うプレイヤーを相手にした場合に被弾のダメージを軽減することを優先して考えられているようだ。


「近付けさせやしないっ!」


 聞こえてた声は想像していたよりも高く、細い。少なくとも屈強な男性のものではない気がする。

 キュウキは甲殻の鎧によって体格を隠し、表情を隠す能面のようなものを装備している。普通ならば視界が悪くなる面であっても、この世界における防具だというのならば何らかの効果を持っていても不思議はない。

 正確な射撃が続く。

 むしろ正確であるからこそ切り払いができているとも言える。

 止まらない俺の接近にキュウキは構える弓矢を地面と水平に変えて精一杯矢を引いた。


「<弓技・猛る星・恒星>」


 矢羽根から手を放した瞬間に放たれる一射。

 一際強い光を宿した矢は通常の射撃に比べれば速いものの先程のアーツに比べれば遅い。これならば迎撃は簡単だ。立ち止まり閃騎士の剣を最高のタイミングで光る矢に当てた。が、俺の予測は大きく外れ、強く当てたつもりだった閃騎士の剣が光る矢に弾かれてしまった。

 想定外の反動にバランスを崩しながらも、敢えて転ぶことで矢の直撃から逃れる。

 そんな俺を待っていたのはあらぬ方向から繰り出される一対の斬撃。

 分断させられてしまった自分たちとは異なり、自らの意思で別れ、それでもなお連携が取れていたイッキがどこからともなく現われて自慢の武器である双剣で襲いかかって来たのだ。

 閃騎士の剣は光の矢に弾かれてすぐに戻すことはできない。

 俺の体勢は光の矢を避けるために崩されてしまっている。

 ガラ空きの状態の俺には双剣の一撃を避けることなどできるはずがない。出来ることと言えば精々せめて一撃でやられるようなことはないようにと願うことだけ。

 それでも、と。俺は見つめ続けた。自身に迫る斬撃も、その後ろで追撃に備えているキュウキの姿も、全てを。

 だから笑った。

 笑ってみせた。

 俺の目には他でもない。心強い仲間の姿が映っているのだから。


「させないよ」


 ガギンっと大きな音を立てて双剣の斬撃を受け止めた白狼の刃。

 白狼という刀を自在に操ってムラマサはイッキが振り下ろした双剣を器用に絡め取り、手前に引き寄せるのと同時に蹴りを放っていた。

 腹部を蹴られた衝撃で後ずさるイッキ。そのイッキの体が邪魔をして矢を放つことができないキュウキ。

 そんな二人から素早く距離を取るムラマサの隣に立ち上がって並ぶ。


「助かった」

「苦戦していたみたいだね」

「まあな。流石に強いよ、彼らは」

「だったら、ちょうど良い。一緒に戦おうか」

「いいね。でも、ハルは?」

「んー、とりあえずあっちは大丈夫そうだからね。今はこちらに集中しようじゃないか」

「ああ。そうだな」


 白狼を構えるムラマサの隣に立って俺も閃騎士の剣を構えた。

 戦闘の流れが途切れたことで体勢を整えた自分たちと同じように、イッキとキュウキもまた慣れた自分たちの立ち位置に付いた。

 双剣を構え体を低く攻撃に備えるイッキの直ぐ横を後ろから複数の矢が放たれた。

 慣れているのか信頼しているのか、あるいは両方か。一切同様することなく平然とその瞬間を見計らっているイッキ。

 俺はムラマサにアイコンタクトしてから即座に閃騎士の剣の切っ先を飛来する矢に向けた。


「<シーン・ボルト>!」


 閃騎士の剣から放たれる鏃。

 迫る矢を呑み込んで行くそれをイッキは<咬み砕き>という双剣のアーツを発動させて打ち払っていた。

 砕かれたアーツの光が弾けて舞い散る。

 無数の光の粒のなかをムラマサが駆け抜けた。


「<(つらぬき)>」


 自身の刃が届く距離にまで接近した瞬間、ムラマサは突きのアーツを発動させた。


ユウ レベル【21】


武器


【閃騎士の剣】――とある極東の剣を学んだ亡国の騎士が携えたと言われている剣。白銀に輝く刀身は命無き者を葬り去る。


外装防具


【竜玉の鎧】――ドラグライトアーマー。剛性と柔軟性を兼ね揃えた鎧。


内部防具


【成竜の鎧】――成長を遂げた竜が身を守る鱗の如き鎧。成竜の脚は数多の地形に適応する。


習得スキル


≪闘士剣・1≫――<イグナイト>発動が速い中威力の斬撃を放つ。効果は攻撃が命中するまで持続する

≪砲撃・7≫――<シーン・ボルト>弾丸と銃を使わずに放つことができる無属性射撃技。

≪格闘・1≫――<マグナ>発動後一度だけ武器を用いらない攻撃の威力を上げる。

≪竜冠・1≫――<竜冠>自身の背後に竜を象った紋様を出現させる。紋様が出現している間は攻撃力が増加する。効果時間【スキルレベル×3秒】


残スキルポイント【1】


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