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闘争の世界 ep.23 『予選最終戦~その②~』

すいません。予約投稿時間の設定間違えてました。


「<シーン・ボルト>!!」


 迫る炎の腕に打ち合わせるように放つ稲妻の軌跡を描く鏃。

 爆発が舞台の中央で巻き起こる。

 燃えあがった炎は一瞬にして消滅して、その向こうからルガルが大剣を突き出してきた。

 俺が炎の腕を迎撃することを予想していたかのような迅速かつ的確な追撃だ。


「――くっ」


 回避などとても間に合いそうもない。

 閃騎士の剣を迫る大剣の切っ先に打ち合わせて突きの勢いを相殺すべく後ろに跳んだ。

 体勢を崩してしまい背中から床に倒れ込む。

 大剣が掲げられ俺目掛けて振り下ろされた。


「まだ!」


 地面を転がるようにして攻撃を避ける。

 不格好ながらも精一杯の行動だった。

 ある程度距離ができた頃を見計らい素早く立ち上がる。

 閃騎士の剣を構えてルガルを睨み付けた。


「いいねえ。まだまだ愉しめそうだっ!」


 獰猛な笑みを浮かべるルガルが連続して大剣を振るう。

 その一つ一つに閃騎士の剣を打ち合わせて迎撃しながら、俺は突破口を探し続けていた。


「さすがにここまで残っているだけあるな」

「そりゃどうも」

「ああ。褒めてやったんだ、俺に付いて来いよ」


 ぐんっとルガルが振るう大剣の速度が増した。

 それだけじゃない。一撃の重さが格段に増加したのだ。

 それまで打ち合えていたはずなのに、今では俺が振るう閃騎士の剣だけが大きく弾き返されてしまっていた。

 ムラマサやハルの様子を窺う余裕はない。

 二人は無事に戦えていることを信じて俺は目の前のルガルにだけ集中することにした。


「おっ」


 集中した俺がより的確に攻撃を捌き始めたと気付いたルガルは一層の喜色を浮かべた。


「だが、守ってばっかりじゃ埒が明かねえぞ」

「わかってるさ」

「攻めてこいよ」


 口では俺の攻撃を誘いながらもルガルは自身の攻撃の手を止めない。

 けれど、少しずつではあるがルガルの攻撃の速度に慣れていくことができた。防御だけで手一杯だった俺も徐々に反撃の糸口を掴み始めたのだ。

 自分が実感するよりも早くこの微妙な変化に気付いたルガルは振るう大剣のリズムを変えた。

 当初力任せに振るっているように思えたそれも、一定のリズムがあった。例えば斬るという行為一つとっても縦、横、斜め、そして突きを等間隔で繰り出してきた。だからほぼ無意識に近い感覚でそれと打ち合うことができていたのだ。

 俺の体に染み込まされたも同然のルガルが繰り出す攻撃のリズム。それがルガル自身の手によって変えられた。

 慣れたと錯覚してしまった俺はルガルの変調に対応できない、はずだった。

 剣を打ち合うルガルが眉を顰めた。

 攻撃のリズムを変えたことで俺に劣勢を強いるはずが、俺は今のリズムの方が上手く打ち合えている。

 元のリズムに戻そうものなら不用意に慣らしてしまったことが裏目に出てしまう。

 突然、原因不明の状況に陥ってしまったルガルが不意に剣筋を鈍らせた。


「そこだ! <イグナイト>!」


 閃騎士の剣に光が宿る。

 ルガルが振るう大剣を払い、続け様に斬り付ける。以前使っていた<ラサレイト>と違うのは攻撃を払ったとしてもアーツの効力を失わないこと。明確に攻撃を当てたと認識しない限り、アーツの光は刀身に宿り続けるのだ。

 ルガルの腹部に一筋の切り傷が刻まれる。

 彼の頭上に浮かぶHPゲージがガクンッと削られた。


「驚いた。中々の威力じゃないか」


 瞬時に消えた傷痕を擦りながらルガルが嬉しそうに言った。


「余裕そうだな」

「余裕だからな」


 ルガルの態度に嘘はないのだろう。

 大剣を軽々と肩に背負い笑みを浮かべるルガル。俺はそれを前にして戦慄を覚えずにはいられなかった。


「仕切り直しだ。<イフリート・ブロウ>!」

「――っ!? <シーン・ボルト>!」


 僅か数分前に起こった激突が再び繰り返された。

 二人の間に起こる爆発が俺たちを大きく離れさせる。

 閃騎士の剣を地面に突き立てて吹き飛ばされないように堪えているというのに、ルガルは自分の脚だけでその場から動かずに踏み止まっているではないか。

 純粋な地力の違いを目の当たりにしながらも俺は衝撃と爆風が止んだその瞬間を狙い一気に駆け出した。

 先手を取られ続ければ後手に回らざる得ないのは必至、ならばこのタイミングで俺が先手を取る。

 大剣を構えるルガルに向けて閃騎士の剣を突き出した。


「おっ」


 俺の攻撃を予測していたとしても、実際にそれを防ぐことができるかどうかは別。

 幸いにして立ち込める煙の残滓が俺の姿を隠すヴェールの役割を果たしていた。


「<イグナイト>!」


 普通に攻撃していたのではすぐに反撃されると考えた俺は敢えて立ち会いの初撃にアーツを選んだ。ライトエフェクトが灯ってから攻撃までを迅速に行うことでそれの予知を遅らせるように工夫しながら。

 狙い通りにルガルは完璧な体勢で防御することはできなかった。

 強引に身を反らして大剣を体の前に構える。

 確かに閃騎士の剣による斬撃から身を守ることはできたが、アーツというブーストが掛かった攻撃を受けては直後に反撃に転じることはできやしない。

 初の好機だと断じた俺はそのままアーツを発動させることなく連撃を繰り出した。

 細かく正確に狙いを付ける必要などは無い。

 当りさえすれば良い。そんな雑な攻撃だったからこそ、ルガルは俺の攻撃に合わせることに必死にならざるを得なかった。


「鬱陶しいなっ」


 ルガルが痺れを切らしたと大剣を大きく振り抜く。

 しかしそれすら俺には見えていた。

 回避しても届いてしまうほど近くに立ち、防御するにしても大剣の重量は危険。ならばどうするか。一瞬の思考の果て、俺が選んだのは前に出ること。


「<マグナ>」


 拳に光が宿る。

 気を張り、攻撃を捌き続けて、その果てに痺れを切らして振り払った。

 状況は別として格闘ゲームで言う壁際に追い詰められているかのような心境に近いルガルは俺が発動した格闘のアーツに一瞬だけ気を取られてしまった。

 大剣の軌道がブレる。

 大剣を振るう速度が微かに遅くなる。


「<シーン・ボルト>」


 その一瞬の遅れを狙い俺は至近距離から砲撃のアーツを打ち込んだ。


「ぐおっ」


 籠もった悲鳴を上げて動きを止めたルガル。

 振り抜いたはずの大剣はあらぬ方向にその切っ先を向けている。


「せやッ」


 光が宿る拳を空いたルガルの胸に叩き込んだ。

 バンッと弾ける光。

 HPを減らしながら後ずさるルガルに追撃を行おうとして、できなかった。

 まるで罠を張った獣のような視線が俺を射竦めたのだ。

 脚を止め、手を止めて生まれた一時の間。

 ルガルが呼吸を整え、大剣を持つ手に入っていた余計な力を抜いているように見える。


「やるじゃないか。半分ほど減らされたみたいだな」

「倒しきれると良かったんだけどね」

「ははは。それは欲張りってもんだ。けどな、ここまで俺のHPを減らせたことは誇ってもいいぞ。だが、ここからは俺の独壇場だ」


 自然体で大剣を持つルガルが俺を見た。


「<ハイ・レゾナンス>」


 常時発動していると言っていた身体強化のアーツを何故再び発動したのか。

 そんな風に疑問を抱いている俺を顔を突然の衝撃が襲う。


「ぐぅっ」


 斬られたのではない、殴られた。

 思いっきり殴り飛ばされた俺がよろめくとすぐ近くにルガルの拳があった。

 続け様に殴られる。

 まるで戦い慣れていない素人が戦い慣れたプロの一方的な攻撃の雨に晒されているかのよう。

 武器を用いた攻撃でも、アーツを発動させた一撃でもないからこそ一発で減らされるHPの量は少ないが、それでもこれだけの回数ともなれば甚大なダメージとなる。

 どうにかアーツ攻撃で削ったルガルのHPとアーツもなくただ繰り返して殴るだけで与えられたダメージ量が並んだ。

 身を守るように腕でガードするもその上からお構いなしに殴ってくる。

 防御の判定がされているのか、受けるダメージは減りはしたものの、いつまでこの状況が続くかはわからない。

 活路を見出すべく振るわれる拳を受ける自分の腕の隙間からタイミングを探す。

 何故、ルガルはわざわざ「独壇場だ」などと言ったのか。

 何故、再び自身を強化するアーツを使ったのか。

 理由は分からない。けれどそれがアーツによる強化である以上、必ず効果の切れ間は存在する。

 そもそもからして常時発動できる強化アーツというものの方が異常なのだ。仮にそれが存在しているのならばそこには確実なデメリットも含まれている。それがどのようなものかなど知る由もないが、このゲームのバランスを崩すほどの性能が与えられているわけでもないはず。

 攻撃に晒されているにも関わらず俺の思考はクリアになっていく。

 むしろ防御に専念しているからこそ考える余裕が生まれたとも言える。

 我慢比べにも近しい状況で、先に音を上げるのは俺のHPか、ルガルの使う強化アーツか。


「沈めぇ!」


 ルガルが渾身の拳を振り下ろして来た。

 刹那、彼の体を覆う光が微かに弱まった。強化アーツの効果時間が切れたのだ。

 ルガルとてそれに気付いていないわけではないだろう。想像していたよりも俺がしぶとく攻撃を堪えていたからこそルガルの計算に誤差が生じたのだ。


「<竜冠(りゅうかん)>!!」


 アーツの名前を宣言た俺の背中に竜の紋様が浮かび上がる。

 効果時間は僅か三秒。その限られた時間で俺はまずルガルの拳を正確に殴り飛ばした。

 攻撃が中断されてルガルの拳が浮かぶ。


「<イグナイト>」


 ガラ空きになる体に渾身の一撃を叩き込んだ。

 大きく吹き飛ばされるルガル。

 斬撃アーツを放った直後、俺の戦果に浮かぶ竜の紋様が消滅した。

 それでも威力の上乗せは成功したようで、ルガルのHPゲージは大きく削られていた。それでも連続した攻撃を受けた俺と殆ど変わらないが。

 それほどまでに一方的に殴られていたのかと今更になって気付く。

 事前に用意されていた回復アイテムを使うタイミングはここだと、素早くメニュー画面からアイテムを使用した。

 HPの回復が少ない。

 どうやら自分が想定していたよりも回復アイテムの効果は小さいようだ。

 続けてもう一つも使う。

 俺に分け与えられた二つの回復ポーションを使ったところで最大値の半分にも満たない。元々残っていたHPを思えば回復したのはせいぜい二割程度のようだ。


「あいつも回復しただろうな」


 吹き飛ばされたルガルが体を起こす。

 想像した通り、僅かではあるがルガルのHPゲージも回復していた。


「これだけなら殆ど変わらないじゃねえか」


 吐き捨てるように言ったルガルに俺は「そうだな」と同意を示した。

 一瞬にして空気が緩む。

 大声を上げて笑い合い、それぞれが準備を終えるのを待つ。


「凄いな。ハイ・レゾナンスだっけ? 目で追うのでギリギリだったぞ」

「お前の竜冠ってのも大したもんだな。発動時間は短いが威力がダンチじゃねえか」


 互いを称え合っている俺たちは理解していた。回復アイテムも使い、それぞれ奥の手であるアーツも使った。だからこそ、次が最後の激突になるであろうことを。


「行くぞ」

「行くぜ」


 ほぼ同時に俺たちは駆け出した。

 いつ、自身を強化するアーツを発動させるのか。互いにそれを窺いつつも最初はこれまでと同様に剣による激突だ。

 次いで拳を打ち合い、再び剣で斬り付ける。

 回避や防御などもはや意味を成さない。

 相手の攻撃を正確に迎撃することを基本として俺たちは本命の一撃を叩き込む隙を互いに探り続けていた。


「せやッ!」

「オラァ!」


 同時に体の軸をずらして、同時に剣を突き出す。

 長さも重さも何もかもが異なるルガルの大剣と俺が持つ閃騎士の剣だが、奇しくもその切っ先は同時に互いを捉える。

 <竜冠>に比べて長時間、能力を底上げするはずの<ハイ・レゾナンス>というアーツを何故使わないのか。その理由に一つ思い当たるものがあった。ルガルがそれを使っていた時、一度として攻撃アーツを使わなかったのだ。それが使わないのではなく、使えないのだとしたら。<竜冠>と同時に攻撃アーツを使える俺が相手では威力を上げた小技だけでは詰め切れないと判断したのか、それならばいつでも攻撃アーツを使えると、それでトドメを刺せる瞬間を狙っている方がより大きなプレッシャーを与えられると考えたのか。


「まったく、正解だよ!」


 意味が分からないというようにルガルが眉間に皺を寄せた。

 必殺の刃が首に突きつけられているという状況、そこから脱するにはルガル自ら刃を捨ててくれる方が早い。たとえ自身の能力を底上げするといっても初見ですら目で追えていたのだ。どうにかその動きに合わせることくらい出来る。というよりもやってみせるさ。

 反対に<竜冠>の効果時間が短いことに気付いているルガルはそれを発動した後の攻撃を受けきってからの反撃を目論んでいる。

 必殺の一撃が必殺でなかった場合、危険に晒されるのはそれを繰り出した方。

 そうして互いに奥の手を使うことを封じながらも至近距離で攻防を繰り返しているのだった。

 このままどちらかのHPが切れるまで続くのか。

 漠然とそんな風に考えていた俺にあらぬ方向からの巨大な爆発が轟いた。

 俺がルガルの<イフリート・ブロウ>を相殺した時とは比べようもないほどの巨大な炎が、竜巻のように立ち上がり、黒煙すらも巻き上げている。


「アレア!?」


 ルガルがその名を呼ぶも返事はない。

 彼女が使っていた十時の刃を持つ槍が落ちて二つに折れるとそのまま消えていった。


「ハルがやったみたいだな」


 喜ぶ俺の耳に次いで凜とした鈴の音が聞こえてきた。

 それはムラマサが纏う武具に備わる飾りの鈴。爆炎が逆巻くのとは反対の方向でムラマサが優雅に刀を鞘に収めていた。


「メリナまで……」


 期せずして間を置かず倒された仲間を見届けて、ルガルは一度冷静になるべく目を閉じた。その間もずっと攻防の手は止めないのだから流石だと思う。

 カッと目を開きルガルが告げる。


「決めるぞ」


 ダメージを負っている状況で三対一になることは致命的。

 仮に俺を倒したとしてもその後にハルとムラマサを連続して倒せるかはわからない。それならば俺との立ち会いに全力を込める。そんな意思がその言葉からは感じ取れた。


「ああ。これで決める!」


 ルガルがそれを使うかはわからない。

 けれど俺が決着を望むのならばそれは必要。

 互いの剣に剣を打ち付けて、僅かな距離を作り出す。

 呼吸を整え、最大の一撃を放つ。


「<イフリート・ブロウ>!!」


 ルガルが選んだのは炎の腕。

 拳を作るのではなく大きく開き握り潰そうと迫る炎を前に俺は、


「<竜冠>! <シーン・ボルト>!!」


 竜の紋様を背負い、渾身の鏃を撃ち出した。

 白色の稲妻が迸り、放たれた鏃は炎の腕を貫いて、ルガルを穿つ。

 ルガルのHPゲージが弾けて消えた。




ユウ レベル【21】


武器


閃騎士の剣――とある極東の剣を学んだ亡国の騎士が携えたと言われている剣。白銀に輝く刀身は命無き者を葬り去る。


外装防具


【竜玉の鎧】――ドラグライトアーマー。剛性と柔軟性を兼ね揃えた鎧。


内部防具


成竜の鎧――成長を遂げた竜が身を守る鱗の如き鎧。成竜の脚は数多の地形に適応する。


習得スキル


≪闘士剣・1≫――<イグナイト>発動が速い中威力の斬撃を放つ。効果は攻撃が命中するまで持続する

≪砲撃・7≫――<シーン・ボルト>弾丸と銃を使わずに放つことができる無属性射撃技。

≪格闘・1≫――<マグナ>発動後一度だけ武器を用いらない攻撃の威力を上げる。

≪竜冠・1≫――<竜冠>自身の背後に竜を象った紋様を出現させる。紋様が出現している間は攻撃力が増加する。効果時間【スキルレベル×3秒】


残スキルポイント【1】


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