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ep.10 『偏屈ドワーフと変わり者のエルフ⑨』

来週はお盆週間で作者も忙しく上手く時間が取れないかもしれません。

出来る限り更新したと思っていますが、万が一更新がなかったのならお盆休みを挟んだと思って頂けたら幸いです。



「お疲れ様でした」



 真新しい剣を机の上に置いた俺にラムセイが労いの言葉を掛けてきた。



「だいたい及第点ってところか」



 既に机に並べられている複数の剣や小刀ナイフを厳しい目付きで眺めていたガダンが頷きながら呟いた。

 ガンブレイズの強化、錬成は既に一定の域に達したとして終わっていた。今のいままでやっていたのは自分が持つ《錬成》スキルの熟練度を高めるために出来合いの武器を使った繰り返しの練習だった。



「これだけしてもそんか評価なのか」



 落胆したわけではないものの、思っていたよりも低い感じの評価に思わず言葉が漏れた。



「いえいえ。これだけ出来れば中々の腕になったと思いますよ。師匠も悪いとか駄目だとかは言っていないでしょう。師匠は褒めることが苦手な方ですから」



 肩を落とす俺を慰めているのかと思いきや、後半でのいきなりの指摘を受けてガダンはバツが悪そうにあからさまに視線を逸らす。



「そもそもユートは筋が良いと思いますよ。ほら。この辺りになるとユート特有の魔経路まけいろが刻めるようになっているじゃないですか」

「まあ、そうなんだけど」

「不満か?」

「いや、二人と比べるとどうしてもさ。それに俺の特徴なんてさ、特化した錬成よりは劣る感じがするし」

「おまえさんの武器は一つで二つを使い分けるものだろう。だからこその【MP消費の効率化効果】は適しているんじゃないか」

「そうかな」



 錬成することで専用武器の基本的なパラメータは上昇する。その上げ幅こそバラつきはあるが、それ以外にも効果を得られるようになったのは嬉しかった。しかしそれすらも、こうして何度も錬成を繰り返したことでもっと別の何かのほうが良かったのではないかと思ってしまうのだ。尤もその別の何かなど皆目検討がついてすらいないのだが。



「どちらにしてもだ。あとはおまえさんが自分で繰り返し錬成するなりして試行錯誤するだけだ」

「えっ?」

「現時点でおれがおまえさんに教えられることはなくなったってことだよ」

「まさか、免許皆伝?」

「んなわけあるか! せいぜい長い錬成の道の入り口に立ったくらいだ」



 わざと戯けるようにして口に出した言葉をガダンは即座に否定してきたのでだった。

 肩を竦め、頬を掻き、それから一拍の間を置いて俺は真剣な面持ちで二人の前に立つ。



「色々と教えてくれて、ありがとうございました」



 深々とお辞儀をして礼を述べる。

 教えを請うたものとして、そしてそれを受けたものとして感謝の意を伝えずにはいられなかったのだ。



「ふん。気にするな」

「いえいえ。師匠の代わりにですが、私から一つ貴方に伝えておくことがあります。ユート、師匠が貴方に伝えたこと、《錬成》において貴方が出来るようになったその【特殊効果付与】は貴方だけのものではありません。この世界には貴方よりもより性能の高い同種のもの、反対に粗雑な同種のものが存在します。それはつまり、貴方のそれがこれから如何様にも変化する可能性があるという事を自覚して下さい。

 自らの傲慢さに負け、研鑽を積むことを忘れた時、それは停滞し、いずれは劣化していくことでしょう」

「えっと……」

「つまりはこれからも努力し続けて下さい、ということです」

「はい」



 真剣な面持ちのラムセイに俺もまた真剣な眼差しで返す。



「なぁに! 心配などいらぬさ! 竜に脈付く者はそのようなことにはなりはせぬからな!」



 大声で言い切るリョウダンにラムセイは驚きの、ガダンは呆れたような眼差しを向けていた。



「そうであろう?!」



 身を屈め顔を覗き込んでくるリョウダンに俺は、



「当然だ」



 とはっきり言い切った。

 満面の笑みを浮かべ、どうだと振り返ったリョウダンにガダンが苦笑を見せつつひらひらと手で払っている。



「まあ、その、なんだ。また何かあったらおれのところに来るといいさ。その時にはまた一から鍛えてやるからよ」



 一時の弟子関係でしかないはずのそれがまだ切れていないのだと伝わってきた。



「うん。その時はまたここに来るよ」

「そうして下さい」



 穏やかな笑みを浮かべるラムセイが答えた。


 不意に視界に現れる自分にしか見えないコンソールの画面。そこには今回のクエストが完了したことが記されていた。

 俺が得たもの。

 それは錬成を行った際の追加効果付与。

 システム的に言えばこのクエストをクリアしたから出来るようになったことなのだろう。そして、それはガダン以外の誰かから受けたクエストでも出来るようなることだ。

 けど、それでも、俺はこの経験こそが大事だったのではないかと思う。

 現実に比べてやれば確実に結果が齎されるゲームという場所であったとしても、その道筋を自分で選び行動した果てに手に入れられたことなのだと思うから。







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






「へえ。そんなことがあったのか」



 パラリとガンブレイズから微細な欠片が足下に落ちていく。

 刀身に宿った光は収まり、残ったのは僅かに性能を向上させたガンブレイズがあるだけだ。



「いきなりユートのレベルが上がって、ランクアップまでしてたんだから何事かと思ったぞ。それにこんなとこに引きこもって何をしているのかと思えば、またレベル上げだったとはな」



 などと言いながら俺に強引に用意させたらお茶を飲んでいるのは、旧来からの友達であるハル。

 ここは魔石狩りとランクアップして下がったレベルを上げるために来ているとある町で俺が借りている宿屋の一室だ。



「一応手に入れたいスキルもあったからさ」

「ん? どんなスキルだ?」

「≪輪廻りんね≫ってやつだよ。それが現段階で俺が取れるパラメータ上昇系の最高点みたいだからさ」

「あー」

「ハルも取ったことあるんだろ?」

「前にな。その類のスキルはその都度更新になるからなぁ。今は確か≪久遠くおん≫だったかな」

「おう、やっぱり先があるのね」

「ここまで来るとスキルの名前はあまり当てにならないからなぁ。そもそもどの段階で複合スキルにするかでも違うしさ」

「そうなんだ。全員が同じなのかと思ってた」

「大抵は変わらないと思うぞ。攻略サイトとかにはベストなタイミングはここだってよく書かれているし」

「ふーん」

「で、今はどうなんだよ?」

「えっと、《活性》《循環》ときて《発露》になったから次だったと思う。たださあ、消費するスキルポイントが多くて」

「あれ? そうだっけか? 消費ポイントは一律10だったような」

「嘘だ。だって《輪廻》にするには20ポイント必要なはずだぞ。まあ、貯めたけどさ」

「貯めたんだ」

「うん。貯めた」



 自身のコンソールを見ながら答える。

 ついでだから今習得してしまおうか。



「ほら。20ポイント」

「本当だ。何でだ? ユートだけ消費が多いなんて事ないはずだけど」

「まあ、取るんだけどさ」



 悩むハルを無視して俺は規定のスキルポイントを消費して《輪廻》を習得した。スキル一覧には《輪廻》が加わり、それの代わりにそれまであった《発露》は消滅したのだった。



「お、次が出てきた。《憧憬しょうけい》だってさ。これも消費ポイントが20だよ」

「今、取るのか?」

「あー、残り0になるけどさ、今のところスキルポイントの使い道もないし、そうするかな」



 続け様にスキルポイントを消費する。自分のスキル一覧に《輪廻》が消えて《憧憬》が現れた。



「てかさ、そんな話をするためだけにわざわざ俺に連絡してきたってのか?」

「ばっか、いくら俺でもそれだけでここに来るほど暇じゃないぞ」

「だったら何の用だよ」

「ふっふっふっ。知りたいか?」

「別にいいや」

「って、おい! そう言わずに聞いてくれって」

「なら勿体ぶらずにさっさと言えよ」

「二人で攻略したい場所がある」



 ハルがカップを置いて、代わりにストレージから一枚の地図を取り出した。



「それは?」



 俺が見たこともない場所が描かれた地図。



「無数の魔力を持った美術品が眠る町【幻想郷・シャムロック】。目的はこの町のどこかに秘められているとされる【豊穣ほうじょう】の解放。このクエストの依頼主はーー」



 真っ直ぐに、ハルが俺の目を見てくる。

 好奇と未知が滲むその瞳の持ち主から告げられたその言葉は、



【シャムロック】



「町そのものさ」

 






◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


レベル【10】ランク【3】


HP【9250】

MP【2610】

ATK【D】

DEF【F】

INT【F】

MIND【G】

DEX【E】

AGI【D】

SPEED【C】


所持スキル

≪ガンブレイズ≫

≪錬成≫

≪竜精の刻印≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪全状態異常耐性≫

≪憧憬≫NEWーー全パラメータ上昇。習得しているスキル《輪廻》を代償にすることでのみ習得可能。


残スキルポイント【0】


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




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