R:ep.29『剣士、三度相見える③』
今回もかなりショート。
開き直ってこの分割は続きます。
すいません。
嫌な感触だ。
手のひらから伝わってくるそれにユートは表情を歪ませた。
血は流れない。
痛みもない。
けれど、それは仮想世界だから。痛みが言い表せない不快感にすり替わって能に直接伝わってくる。
「ぐっううう」
手のひらを貫くアモルファスが持つ剥き出しの刀身。
「う、うおおおおおおおおおお」
現実ならば激しい痛みでこんなこと出来るはずもなかっただろう。
ユートは刀身に手を貫かれたまま強引に掴んで無理矢理その体を引き寄せた。手から伝わってくる更なる嫌な感触を拭うためにユートは叫んでいた。
前のめりに倒れ込んでくるアモルファスの腹に銃形態に変えたガンブレイズの銃口を突きつける。そのまま引き金を引いて連続して弾丸を撃ち出した。
繰り返し閃光が迸る。
アモルファスの頭上に浮かぶHPゲージが僅かながら減り続けた。
「このままっ、<琰砲>!」
自分が受けるダメージは無視して射撃アーツを発動させる。
一段と強くなった真紅の光がアモルファスの体を抜けて遙か後方へと伸びていった。
「どうだっ」
光の圧力に押し込まれ離れて行くアモルファス。
手に突き刺さっていた剥き出しの刀身が一気に引き抜かれた。
「くっ」
思わず貫かれていた左手を掴みその場で膝を折る。
傷跡は残らずに直ぐに消えていったが、暫くの間手のひらにある違和感は残り続けた。
「ユートさん」
「大丈夫ですか?」
「俺のことはいいから攻撃してください!」
心配して駆け寄ってくるフォラスとタークの二人はユートに制止されてその場に立ち止まる。そして思い直したようにそれぞれの武器を構えて後ろに下がったアモルファスにその切っ先を向けているのだった。
大きく仰け反るアモルファスがのらりと重力を感じさせない動きで体を起こす。
だらりと腕を垂らした格好で佇むアモルファスに二人の攻撃が降り注ぐ。
無数の矢といくつかの暗器。
形の違う武器による遠距離攻撃を受けてなお平然としているアモルファスが突如見たこともない速度で駆け出していた。
「当たらない!?」
「これ以上近付けるわけには――」
攻撃が命中しないことに戸惑い手を止めてしまったタークに対してフォラスは懸命に矢を放ち続ける。しかしそれは虚しくも地面を打ち付けるだけで意味を成していない。
「来ないで――っ!?」
強く弓を引いて矢を放ちながらフォラスが叫んだ。
上半身を低く地面すれすれにまで近付けて走る。
降り注ぐ攻撃を避けて駆けよってくるアモルファスに対してユートは二人を庇うように前に出た。
「くそっ、速い。駄目だ、狙いが――」
銃形態のまま狙い撃とうとして銃口を向けるも駆けるアモルファスの速度に照準が定まらない。攻撃する機会を逃したまま徐々に距離が詰められていることに焦燥感が掻き立てられていく。
地を這う黒い影と化したアモルファスが鼻先にまで迫る。
全身を覆い被すように伸びたアモルファスの体。予備動作もなく攻撃を仕掛けてきたアモルファスの持つ武器をユートは銃形態のままのガンブレイズで受け止めた。
「――っ、重っ……」
ガキンッと音を立てて激突する。
押し潰されないように両足で大地を踏み締めて堪えるも、次第に劣勢へと追い詰められてしまう。
違和感の残る左手でガンブレイズの銃身を支えているがあまり効果はなく膝を付いて押さえ付けられてしまった。
それでもと堪えているユートの視界の端でアモルファスの何も持っていなかった方の腕に新たな武器が握られているのが見えた。
「――っ!!」
息を呑み身構えるユート。
横一文字に振り抜かれるアモルファスの一撃は殺意の高い斧槍の穂先を備えた武器によるもの。斧槍は剥き出しの刀身と同じく余計な装飾がないシンプルな武器だ。
ガンブレイズで攻撃を受け止めている状態では二度目の攻撃を防御することはできず、押し込まれている状態では回避することもできない。
身構えている腕ごと一気に切り裂かれてしまった。
「うわっ、ああああああああっっっ」
与えられるダメージは膨大。
ユートのHPゲージがもの凄い速度で減っていく。
悲鳴を上げるユートを見てフォラスとタークの二人は一瞬にして顔を青ざめていた。




