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R:ep.08『剣士、街の傍で…』



「これでラストっと」



 一通り地面に落ちている無数のケースを拾い集め終えたのを見計らいぐぐっと背伸びをする。

 人力で行う田植えのようにずっと身を屈め続けていたために腰が痛くなりそうな気さえしてきたのだ。自分体が仮想なのだとしてもこうして背筋を伸ばせば幾分か心地良い。



「こっちは全部拾い終えたと思いますよ」



 自分と反対側にいたフォラスが駆け寄ってくる。

 その手に何も持っていないのはユートと同じで、そのストレージに数多くのケースを仕舞っているのも同じだ。



「俺も目に付く範囲のケースは拾い終えたと思いますが、正直見えない場所にある所のケースまでは無理でした」

「それは私も一緒ですよ。取り残しはいくつかあると思いますが、これ以上ここにいると別のシャドウが出現する可能性もありますし、諦めましょう」

「そうですね」



 ぐるっと辺りを見渡してシャドウの影が無いことを確認してから頷いた。



「それにしてもかなりの数になりましたね」



 ストレージに収まっているケースの数を数えながらフォラスがしみじみと続ける。



「どうします? ここで開けて見ますか?」

「うーん、止めておきます。さっと見るだけだとしてもそれなりに時間が掛かりそうですし」

「確かに。だとすれば、一度拠点に戻った方が良いかもしれませんね」

「ですね。戻りましょう」



 来た道を辿り街を目指す。

 歩き続ける途中で消耗していたHPとMPは回復していた。とはいえこの場での次の戦闘に挑む気は起きずできるだけ大きな道を選んで進むのだった。

 それから暫くした後。

 街とシャドウと戦っていた場所の中間地点くらいの場所で二人は不意に足を止めた。



「あそこ、誰かいますよね」



 視線だけで場所を示しながらフォラスがいった。



「みたいですね。あれで隠れてるつもりなんでしょうか?」



 呆れたといわんばかりにユートが呟く。

 隠れていると思わしき人物達は近くの物陰に身を潜めているようだが、それぞれ持っている武器の端や装備の端などが顔を覗かせている。



「どういった目的なんでしょうか。同じ陣営のプレイヤーなんですよね」

「そう……思います……けど」

「けど?」



 【ブルーイースト】の街の近くの道だということもあり敵陣営【レッドウエスト】に属するプレイヤーが入り込んでいるとは考え難い。そのために待ち構えているであろうプレイヤーは仲間だと想像できるのだが。



「明らかにこちらを狙っているように見えます」



 ユートが一瞬にして険しい表情を浮かべた。それに釣られたようにフォラスも警戒心を強めていく。



「戦闘になると思いますか?」



 厳しい口調でフォラスが問い掛ける。



「おそらく」

「だったら此方から攻撃を仕掛けてみます?」

「いえ。俺の考えすぎだった場合、拙いですからね。何食わぬ顔で通り過ぎましょう」

「わかったわ」



 声を潜めた相談を終えると二人は再び歩き出した。

 道は変えず真っ直ぐに街を目指す。

 ちょうど中程まで進んだ頃合いだ。物陰で何かが動く気配がした。木々が揺らぎ微かな音を立てたのだ。

 次いで風が吹く。まるでその揺らぎの音を自然が隠そうとしているかのように。



「来るか――」



 そっと手を腰のガンブレイズへと伸ばす。

 グリップは握らずに手を添えるだけに留めたのはこちらに戦闘の意思はないと思わせるため。

 ザッザッザッと規則的な足音が聞こえる。自分の足音がここまで大きく聞こえてきたのは久々だ。



「――待ってくれ!」



 ユート達に声を掛けたのは隠れているプレイヤーではなく、街の方から駆け出してきた別の人物。

 着ている服装は今回の初期服に設定されているもの。手にしているのもどこにでもありそうなありふれた片手剣だった。



「そ、そこの、二人。お願いだっ! ボクを助けてくれっ!」



 必至な形相を浮かべて命からがら逃げ出してきたと言われても納得してしまいそうな雰囲気だ。ここが現実ならば全身に無数の傷がついているのかもしれない。そう思わせてくる切羽詰まった様子が見受けられた。

 しかし、街の中では戦闘行為は行えず、ここと街の間という限られた道程では強力なシャドウや他のプレイヤーに襲われたなどということ信じられない。

 つまり拭えない違和感が目の前のプレイヤーには窺えるのだ。



「頼むっ」



 足を止め戸惑っている二人に懇願してくる。



「何から助ければ良いんだ?」



 目の前を塞がれ進むにはその横を当人を無視して通り過ぎなければならない。その場合自分達に不利に働く怖れが二つ。一つは自分達が助けを求めているプレイヤーを無視していったと噂されること。このゲームはNPCがいないという現状プレイヤーから反感を持たれる行動は避けるべきだろう。そしてもう一つ。それがこの助けを求めているプレイヤーその人に襲われる可能性。そのどちらが高いか、考えるまでもなく後者だろうとユートは考えていた。

 だからこそ声を掛けた。

 すると目の前のプレイヤーは自分の後ろを指差して、



「お、追われているんだ…だから……」



 まるで演技をしているようだと感じる。

 ダメージを負っているのだとしても、この位置ならば逃げるべきは街の外ではなく内側のはずなのだ。



「だから、何に追われているのか教えてくれ」



 殊の外冷静な物言いになってしまった。

 それが目の前のプレイヤーとの対比になり奇妙な対峙が生じていた。



「そ、それは、何かよく分からない何かに襲われて――」

「何処で?」

「この先だっ」



 指差したのはやはり街の方向。そしてそこは平穏に包まれている。



「何もいないみたいだけど?」

「で、でも、確かにボクは襲われたんだっ。だからっ――」



 これ以上は心配要らないと暗に告げたというのにこのプレイヤーは頑なになって助けを求めてくる。

 無言のまま両者の睨み合いが続く。



「ユート君行きましょう」

「ああ。そうですね」

「ま、待って――」



 停止していた状況を動かそうとするフォラスの言葉に目の前のプレイヤーは僅かに顔を顰めた。



「うおおおっ」



 背後から複数の男の声がする。

 咄嗟に振り返ると先程の物陰に隠れていたプレイヤーがそれぞれの武器を構えて襲いかかってきていたのだ。



「フォラスさん!」

「はいっ」



 素早く武器を抜き構える。その際、フォラスが牽制の意も込めて助けを求めてきていたプレイヤーに矢を放っている。

 アーツを発動させていないのは、未だそのプレイヤーの立ち位置がはっきりしていないから。九分九厘襲いかかって来たプレイヤーの仲間だと決まっているように見えようとも残り一厘のそうではない可能性が残されているのならばそれは無視できない。

 だが、件のプレイヤーは素早い掌返しで矢を避けると片手剣の先をユート達へと向けて来た。



「ど、どういうつもりなんですかっ!」



 声を荒らげるプレイヤー。しかしその表情はこれまでとは違い醜い笑みを浮かべているのがわかる。



「ヒャハハハ。ターレットの奴。しっかり見抜かれてやんの」



 耳障りな声を出しながら笑う男が両手にナイフを持ち攻撃を仕掛けてくる。

 ユートはその男に対して素早く射撃して向か撃つ。撃ち出した魔力弾が腹部に命中して男は「うぐっ」と苦悶の声を漏らして立ち止まる。すると笑われたターレットと呼ばれたプレイヤーが更なる大声で笑い返していた。



「おいっ、ターレット! 笑うんじゃねぇよ!」

「うっせぇ。スクイブだってやられてんじゃねえか」

「黙れっ――この、黙って俺らに殺られやがれってんだ」



 罵倒し合う二人のプレイヤーを尻目にまた違うプレイヤーが攻撃を仕掛けてくる。

 その手にある武器はハンマー。相手を撲殺するためだけではないだろう、所々に鋭い棘が備わっており、自分達を外れ地面を打ち付けた先では大きく抉られた跡が残されていた。



「アネス、気を付けろ。コイツら、慣れてる」

「クソがッ。経験者かよ」

「どうする?」

「構わねえ。こっちの方が数が多いんだ。負けるわけがねえ。デブラも手を抜くんじゃねえぞ!」



 メイスのプレイヤーと相談しているのはピストルを持った別のプレイヤー。前の二人同様に柄の悪さが見受けられる。



「だー、クソッ、外した――って、んだよ?」

「君達仲間なんじゃないの?」



 呆れたように訊ねるフォラスにまた別のランスを構えたプレイヤーが襲い掛かっていた。



「ハッ。知るかよ。奴らは奴ら俺は俺。関係ねえんだよ」

「なるほど。どうりで杜撰な連携だと思ったよ」

「うっせぇ!」



 矢を的確に放ちランスのプレイヤーを寄せ付けない動きを見せるフォラスに何時まで経っても当たらない攻撃に痺れを切らしたようにランスを強引に振り回す。



「オイ邪魔だ。ゼロ・デイ。引っ込んでろ!」



 ランスを持つプレイヤー――ゼロ・デイを押し退けてターレットとスクイブが前に出た。しかし連携もなにもない乱雑な攻撃は当たることはなかった。



「喰らえ!」



 ユートには細剣と曲刀を持ったプレイヤーが二人同時に襲いかかっている。

 それまでの連中とは違い、この二人はまだ強力する素振りが見受けられた。



「七人か。パーティが二つ集まったっていうよりも個人個人が集まったって感じか」



 冷静にユートは襲いかかって来た者達を見定める。

 片手剣を持つ『ターレット』という名のプレイヤー。そしてナイフを二本持ったプレイヤー『スクイブ』。そしてメイスを持った『アネス』にピストルを持った『デブラ』。ランスを持っているのが『ゼロ・デイ』で、細剣を持つ『フューリー』と曲刀を使う『ライデン』。

 見事にバラバラな得物を使うプレイヤーが集まったものだと関心してしまう。



「一つ聞かせてくれないか?」



 ふとフォラスが質問を投げかけた。



「私達が襲われる謂われはないと思うのだけど」



 同じ陣営に属するプレイヤー。練習以外で戦う意味は無いに等しい。



「ハンッ。知らねえのかよ。誰だろうと倒した相手が持っている物はドロップするんだぜ」

「つまり、君達は私達が持っているものが欲しいってことか。生憎そんなに良い物は持っていないんだけど」

「知ってんだよ。オマエラさっき随分とシャドウを狩ってただろ。となればドロップしたモンもそれなりにあるはずだ。ソレを寄越しやがれ」



 律儀にも答えたのはスクイブというプレイヤーだった。

 他のプレイヤーはニヤニヤと笑ったまま。二対七という圧倒的な数の有利に自分達が負けるかもしれないとは微塵も思っていないらしい。



「断ると言ったら?」

「バカかオマエ。この数だぞ。素直に置いて行けば死ななくて済んだのによォ」



 嘲笑するように告げたターレット。



「やってみろよ」



 それにユートは余裕を崩さずに言い放つ。

 こうして本格的に戦闘が始まったのだ。



ユート

レベル【15】ランク【2】

所持スキル

≪ガンブレイズ≫

≪錬成≫

≪竜精の刻印≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪状態異常耐性・全≫

≪HP強化≫

≪MP強化≫

≪ATK強化≫

≪DEF強化≫

≪INT強化≫

≪MIND強化≫

≪DEX強化≫

≪AGI強化≫

≪SPEED強化≫

残スキルポイント【9】



――――――――――



【作者からのお願い】

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