表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
445/683

R:ep.06『剣士、二日目をはじめる』

先週はいきなりのお休みして申し訳ありませんでした。

今回からまた更新していきますのでどうぞ宜しくお願いします。



 日が沈み、月が輝き、星々が煌めく夜の時間。

 ユートはどうにか確保した拠点の一室にいた。

 部屋の中には一人用のベッドと小さな机と椅子。窓際にある空の棚にはまだ何も置かれてはいない。ベッドに腰掛けて手元に呼び出した自身のステータス画面を見ながら物思いにふけているのだった。

 不意にコンコンッと部屋のドアを叩く音がする。

 自分の部屋を訪ねてくる人物の心当たりは一人しかない。事実ノックの直ぐ後に、



「少し良いですか?」



 というフォラスの声が聞こえてきた。



「はい。大丈夫ですよ。鍵も開いているので入ってきてください」

「では失礼します」



 了承の意が込められた返事をするユートに断りを入れてフォラスがドアを開けて部屋にやってきた。

 この時の二人の服装は簡素な部屋着というわけでもなく、それまでと変わらない服を着ている。その理由もまた単純で、着替える部屋着や寝間着を持っていないからというだけに過ぎないのだ。



「フォラスさん。どうしたんですか?」

「明日のことを相談しておこうと思いまして」



 フォラスと別れたのはついさっきのこと。

 硬い黒パンと薄味の野菜スープという安価な夕食を共に取りおえるとそのまま各々自室に向かったのだ。

 二人のいる拠点の形状は外から見るとただの一軒家のようでもあった。それもリビング無し、一階はダイニングキッチンと風呂などの生活に欠かせない施設とお世辞にも大きいとはいえない物置。二階に隣り合うようにある個室が二つ。それがそれぞれユートとフォラスが使用している部屋となる。



「明日は街の外に出てシャドウ討伐をするんじゃ」

「本当にそれで良いのですか?」

「そうする方が適切なんですよね」

「このゲーム内でのレベル上げとか活動資金を得るためでしたら一番の安全策だとは思います。ただ、シャドウを倒すよりも他のプレイヤーを倒したほうが得られるものは多いですから。実際そうするプレイヤーも少なくはないですし」

「と言っても、まだまだ日にちは残されているんですよね」

「はい。最初の大規模戦闘を目処にしても三十日、中規模戦闘に参加するとしても六日程度の余裕はあります」

「なら取りあえず明日は手堅く出てもいいと思いますよ。色々と足りなく感じてきたらまた方針を相談するということで」



 顎に手を当てながら告げるユートの言葉をフォラスは何度も頷きながら聞いていた。

 異議はないという思いが伝わったのか微かに安心したように表情を緩めるフォラス。



「分かりました。明日はシャドウ討伐にしましょう」

「はい」

「それではわたしは自分の部屋に戻りますね。ユート君もちゃんと体を休めてくださいね。ここでは現実と同じように眠ることができますから」



 通常のゲーム内でも睡眠はある意味でバッドステータス、つまり状態異常という扱いになる。それは戦闘中に受ける麻痺や毒と同等の扱いであり、平時で眠ることに意味はないとされているからだ。

 仮想世界で眠ったとしても現実の体が休めているわけじゃないというのがこのゲーム、延いてはVR機器である【レヴシステム】を発売している企業の公式な見解でもあるからだった。

 なのにここでは眠る必要がある。その意味を正しく理解できていない様子のユートを察したのかフォラスは予め用意してあった一つの画像データを送った。内容はゲームの中での睡眠の意味について。今回のイベント用に用意されている注釈の一つだ。



「そこに書いてあるようにここでは睡眠を取る必要があります」



 現実の時間とプレイヤーが体感する時間に著しい差異が生じるシステムであるために、ゲームを行っているプレイヤーは務めて生活のリズムを自覚しなければならない。それが睡眠であり、食事であり、風呂などの所謂生活習慣とされているものだ。唯一の例外が排泄、つまりトイレだった。現実と同じようにするのならば欠かせないそれだけはとある事情から例外とされていたのだ。その事情というのが製作側がトイレの再現をどこまでするか。限りなく現実を再現したとしてそれがプレイヤーに受け入れられるのか、また全年齢対象であるためにそこを描写する必要があるのかという意見が製作側でも纏まらなかったことの一つでもあった。これに付随して風呂に関しても必ず湯浴み着の着用が義務づけされ、それを脱ぐことはできないようにされていた。

 また、排泄はログインしているプレイヤーの現実の体にも多少の影響をもたらす場合があるという問題が開発段階で見つかった。再現度が高い影響か、あるいは仮想といえど自らの身体を動かしているという感覚がある以上仕方の無いことなのかは分からないが、公共の施設であろうとなかろうとこの問題は無視できるはずもなく、こうしてオミットされたというわけだ。



「睡眠は体力の全快と状態異常の回復の効果がある、ですか」



 画像に目を通しながら呟いたそれにフォラスが、



「但し拠点か安全な場所での睡眠に限るとなっていますけどね。戦闘中に眠らされたりしても回復はしないみたいです」

「まあ、それは当然だと思いますよ」

「ですね」



 笑い合い穏やかな時間が流れる。

 それから直ぐ後にフォラスは自室に戻り、一人残されたユートはベッドに横になった。

 目を瞑り、体から力を抜いた瞬間、ユートは抗えない眠気に襲われた。決して不快とまでは言わないが、自然な眠りとは言えないそれに身を任せた。

 程なくして徐々に意識が覚醒していく。当人の感覚で言えば僅か数秒。しかし、窓の外は既に明るく、全プレイヤーに共通している時間を示した壁の古時計も朝の六時を示している。



「寝た気がしない……」



 現実のように起きてすっきりとはいかず、どちからといえばうたた寝をしていていきなり起こされた時の感覚に似ているように思えた。

 本来必要とされていない睡眠を再現するには未だ完璧とまでは技術は進歩していないらしい。

 そのようなことを考えていると自室のドアがノックされた。



「ユート君。起きていますか?」



 昨夜と同じようにフォラスが訊ねてきたのだ。



「あ、はい。起きてます」

「でしたら朝食を食べましょう。といっても昨日と同じ物しかないないんですけど」

「いえ、大丈夫です。直ぐ行きますので先に降りていてください」

「わかりました」



 カツカツカツと足音が遠のいていく。

 準備といっても装備はまだ新調されておらず、買い揃えたのもアクセサリが数点だけ。専用武器であるガンブレイズはそれが収まっているホルダーごと窓際の棚の上に置かれているがそれも即座に装備し直すことが出来る。

 意味は無いと分かりつつもテーブルの上に置かれた鏡で身形を整えるとユートは自室を出て一階のリビングに向かった。



「おはようございます、ユート君」

「はい。おはようございます」



 既に席に着いているフォラスに朝の挨拶をして、ユートは向かいの椅子に座った。

 テーブルの上にある朝食は昨日購入してこの家に備わっていた冷蔵庫に入れて置いたもの。スープに湯気が立っていることを慮るとどうやらフォラスが暖めてくれたらしい。



「ありがとうございます」

「ん? ああ、これですね。構いませんよ。自分の分のついでみたいなものですから」



 千切るのにすら苦労する黒パンを一口ずつ食べていく。時折スープに浸したりして食べていくと程なくして目の前の朝食は平らげられた。



「さて、目的のシャドウですけど、どの辺りを探すんですか?」

「探す、といっても戦闘可能な区域になれば簡単に見つかるものだと聞いていますよ。それこそ普段のゲームの初心者エリアに出てくるモンスターの如く」

「だとすれば街から出れば簡単に見つかるかもしれませんね」

「とはいえ他の陣営のプレイヤーに出くわさないようにだけは気をつけた方が良いと思いますけど」

「成る程。でしたらこの辺りですかね」



 コンソールに地図を出して指差した場所は街から離れた巨大な道路の脇。専用の3Dマップに切り替えるとそこには複数の建造物が並んでいた。

 パッと見た印象は高速道路にあるドライブイン。廃墟となって暫く経っているような風貌のそれが道路を挟んで数件濫立しているのだ。現実では明らかに失敗しそうな建て方も、ゲームの戦場としては面白そうな感じを受ける。



「そうですね。何人かは他のプレイヤーいるかもしれませんけどまだ此方陣営の街の近くですし、相手側はいなさそうですね」

「では?」

「今日はそこに行きましょう」



 短い相談を終えた二人は拠点を後にして目的の場所へと向かった。

 朝も早い時間ではあるが、街には自分達と同じようにこれから戦いに赴く人、街の中を探索しようとしている人などで溢れている。



「目的の場所の近くまでは転移石で移動しましょう」



 戦場となる場所の近くには転移石が設置されている場合がある。但し使えるのはそれに対応している陣営のものだけ。いきなり相手側のエリアの中に転移することはできないようだ。

 三つの列になって転移の順番を待っているプレイヤーがいる。使う転移石で行ける場所に違いはない。どれを使っても同じだ。そして現時点で行けるのは街の近くの解放されているエリアだけ。行動範囲を広げるのならばどの陣営にも属していないエリアに自陣の転移石を設置するか、相手陣営の街の傍のエリア以外に置かれている転移石を破壊して自陣の転移石を設置する必要がある。

 今回二人が向かおうとしているエリアは自陣の街の傍に該当し、わざわざ転移石を設置する必要はない。



「お、次ですね」



 流れるように列は進み、ついにユートとフォラスの順番がやってきた。

 設置されている転移石は小さなストーンサークルのような見た目をしている。二人はその前に立ち、出現したマップの行きたい場所をタップする。すると程なくして自分達の体を淡い光が包み瞬時に目的の場所へと誘った。





ユート

レベル【14】ランク【2】

所持スキル

≪ガンブレイズ≫

≪錬成≫

≪竜精の刻印≫

≪自動回復・HP≫

≪自動回復・MP≫

≪状態異常耐性・全≫

≪HP強化≫

≪MP強化≫

≪ATK強化≫

≪DEF強化≫

≪INT強化≫

≪MIND強化≫

≪DEX強化≫

≪AGI強化≫

≪SPEED強化≫

残スキルポイント【6】



――――――――――



【作者からのお願い】


製作の励みになりますですので本作をちょっとでも良いと思って下さったのなら評価・ブックマークをお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ