ep.06 『試作その一』★
お待たせしました。今週の更新です。
試しに詳細を省略した主人公のステータスを載せてみました。
以前ステータスはあとがきの場所にでもと言いましたが本文最後に付けた方が楽なので、今後もステータスを載せるときはこうしようと思います。
「良い失敗作?」
リタが告げたその一言を繰り返す。
「そう!」
「そうって言われてもな。俺にはそれがどういう意味なのかさっぱり分からないんだけど」
戸惑い返した言葉にリタはどういうわけかぽかんとした表情を向けて来た。
「いいユウくん」
「なんですか?」
肩を掴み真正面から見つめてくるリタの目が怪しく光る。俺はこの目の輝きを知っている、ような気がする。それは一年前の自分も度々していたであろう目であり、生産職が新しいものを作り出そうとするときに見せる光だ。
「防具の作り方は知ってるのよね?」
「一応はな。この一年で変わってるならわからないけどさ」
「そうねえ。大きく違ってる所はないはずだけど、確認する?」
「どうやって?」
「私が一度目の前で何か防具を作ってみる、とか?」
「えっ!?」
さも当然というように呟くリタに俺は驚愕の視線を送る。
「何で驚くのよ」
「いや、だってさ、何の目的も無く防具を作ろうだなんて。素材の無駄になるだろ」
「別に構わないわよ。作ったものはここで売るだけだし」
そう言われて見渡した店内には無数の防具。この中の多くが彼女の作品というわけなのだろう。
「そう、だな。リタが良いなら頼めるか? 正直に言って俺はまだ戻って来てから防具どころか武器だって作ってないんだ」
「分かってるって。どうせそんなことだろうと思ってたわよ」
軽く笑い、取り出した素材の多くは布。作業台の上に置かれた色彩鮮やかなそれらに手を伸ばす。そしてストレージからリタ愛用の裁ち鋏を取り出した。
「簡単にできるものになるから、そうね、インナーのシャツくらいかな。それでもいい?」
「構わないさ」
「それじゃ、見ててね」
リタが裁ち鋏を一枚の布に当てる。その次の瞬間には予め布に型紙が当てられていたかのように、決められた大きさ、決められた形に切り出していた。
続いて切り出した二つの布を縫い合わせるために使う針と糸を机に置かれたままになっている針山から抜いて持ち、手早くそれらを縫い合わせていく。その際にミシンを使わないのは彼女のやり方なのだろう。
程なくして出来上がった一枚のシャツは現実の既製品と何一つ変らぬ仕上がりだ。
「どう? 分かった?」
「いや、さっぱり」
手早く完成させたことに満足し、自慢気に問い掛けてきた彼女に俺は素早く首を横に振った。
「どうして!?」
「や、どうしても何も、リタの手が速すぎるし、そもそも普通はこんな風に作るものなのか? 俺が知ってるのとは大分違うぞ」
「そうなの?」
「そうだよ。俺が知ってるのはもっとこう、なんて言うか『ちゃんと作ってる』って感じだったぞ。今リタが見せてくれたように素早く作るだなんて俺には到底――」
出来そうもない。その一言を口にすることが憚られ、俺は口を噤んだ。
「そうねぇ。だったらもうちょっとやりやすい方法にする?」
「あるのか?」
「ないわね」
「ないのかよっ」
「ユウくんも同じ生産職だから分かるでしょ。私たちの技術は一朝一夕にできるものじゃないって」
「まあな」
「ユウくんがする武器の強化や制作が私には無理なようにね」
「だよなあ」
このゲームにおける生産の出来を決める要因は複数ある。
一つは対応したスキルのレベル。もう一つは素材。そしてもう一つはプレイヤーの技術。だがこれは要因としては最も関係性は低いとされている。それは現実に付随する技能によって生産の結果が左右されることを防止するためでもあり、現実でしたことのないことをゲーム内ですることに対して躊躇いを持たせたないためだとも言われている。尤も俺が知るそれは一年前の話で現在も同じかと問われれば甚だ疑問だが。
「だったらどうするんだよ」
「うーん、考え方を変えるしかないわね」
「考え方?」
「例えば、作るのは私、でもそのアイデアを出すのはユウくん、みたいな」
「アイデアと言われてもな。俺はリタより防具に詳しいとは思ってないよな」
「もちろん」
「だったら何が必要なんだ? 知識も技術も俺よりも上なんだから俺の手なんていらないんじゃないか」
「普通の防具を作るのなら、そうね」
「だろ」
「でも、今作るのは普通の防具じゃないでしょ。なんてったって能力値を上げるんじゃなくて下げる為の防具なんだから」
「う…まあ、そういうもんか?」
などと言いながらもリタの言い分は理解できた。
俺が行う武器の生産にも言えることだが、基本的に生産職はよりよいものを作ろうとする。より能力値が高いもの、より良い効果をもたらしてくれるものを試行錯誤を繰り返し作り出すのだ。しかし、今やろうとしていることは全くの反対であると言ってもいい。より能力値を下げ、それでも防具として使えるもの。
相反する二つを両立させる必要があるというわけだ。
「と、いうわけで、アイデア出しを始めましょうか」
リタがパンッと手を叩いたのを合図に俺たちは思考を巡らす。
狙いの性能の防具を作り出すことに関して、素材や作り方から何かとっかかりのようなものを見つけられれば口に出し検証する。だが、この短い時間ではめぼしい成果は上げられていない。
ならばと俺は別のアプローチを取ってみることにした。
「そもそもどうやって能力値を上げてるんだ?」
「へ?」
「いや、素材とかが関係しているってのは分かってるんだけどさ、リタが、というよりも熟練の生産職が作り出しているのは素材云々以上の性能があるものだってあるだろ? それはどうやって作ってるんだ?」
「それは私たちの専売技術みたいなものなんだけどね。まあ、良いわ。その秘密はスキルの併用よ」
「スキルの併用?」
「例えば純粋な能力値を上げたいのなら作るときに付加魔法を使うの」
「魔法!? リタも使えるのか?」
「戦いに使えるレベルじゃないけどね。でも、レベルやランクが上がれば自然とその魔法のスキルレベルも上がるから比例して作成した装備の上昇値も増すってわけね」
思い出すのは戦闘用の武器スキルに関する属性付与だ。
基本的な武器スキルと同時に属性スキルを習得していることで使えるアーツに属性技が増えていく。リタが言っているのはそれの生産スキル版とでも言うべきもの。
俺が知らないということはこのスキルの併用はこのrevision:2になって追加された要素なのだろう。
「上昇するのに付与魔法を使うってことはバフ魔法ってことだよな」
「そうね」
「だったら下降させる為にはデバフ魔法でいいんじゃないのか?」
「うーん、残念ながらそうじゃないのよ。確かにデバフを掛ければ多少は防具のパラメータは落ちるんだけど、今作ろうとしているほどの効果が出るものじゃないの」
「つまり普通のデバフじゃ効果が弱いってことか」
普通のデバフといっても俺はそれを使えない。だからそれほど詳しいわけじゃないが、デバフよりも強い下降効果を持つものはそこまで数が多くない。例えば、
「呪い(カース)なんてものはどうだ?」
呪いというのは状態異常の一つで掛かったプレイヤーの能力値を減少させる効果がある。その効果は様々でパラメータ現状の他にもアーツ使用不可やアイテム使用不可、果てはLUKの能力値だけを大きく減少するものもある。
本来ならば別々の状態異常に数えられるそれが一纏めに呪いという状態異常に含まれ、本来の別々の状態異常に加えると二重に掛かることもあり呪い対策はプレイヤーにとって大事なのだということが囁かれるようになったのは俺がゲームを止める少し前のこと。
ならば今では当然のこととして対処しているはず。
「どうだ? ダメか?」
俺の一言を受け考え込んでいたリタに再び問い掛ける。
「ううん。それなら出来るかも。っていうかどうして私が思いつかなかったのよ。結構基本なことじゃない」
まるで自分を叱咤するかのような彼女の態度に俺は慌てて先程考えていた今の常識について尋ねてみた。当然のことだからこそ気付かなくても無理はないと暗に思いを込めて。
「そ、そうね。今は呪い無効の効果を持つ防具とかアクセサリは基本装備の一つだし、持っていないのは初心者くらいだし、そもそも初心者でも作れる耐呪い装備だってあるくらいだし」
「ま、まあ、そういうわけだから、デバフの付加と一緒に呪いを掛けてみるってのを試してみよう」
「そうね」
と気分を改めてリタが作り出したシャツはなんとも言えない性能に仕上がった。
ある意味成功と言えばいいのだろうが、より良い防具を作り出すことを常としているリタにとっては何か思うところがあるのだろう。
「出来ちゃったわね」
「そう、だな」
完成したシャツが装備したプレイヤーにもたらすのは純粋な能力値のマイナス。その値が少ないのは試作に止めているからに過ぎず、この方法を用いれば俺が望んでいる防具も完成することだろう。
しかし、問題が一つ。
「なあ、デザイン悪すぎないか?」
恐る恐るリタに問い掛ける。
出来上がったシャツはこう言っては悪いが、ファンタジー系のスラム街にいるひとが着るボロ着のように、あるいは文字通り呪われたシャツというようになっていた。確かに性能は望んだとおりに出来るだろうがこれでは普段着ていることは出来そうもない。
「そこはほら、試行錯誤ってやつよ」
「出来るのか? コレだぞ」
「任せなさい。作り方は分かったんだからもう少し試作を続けるから待ってて」
そう言って作業台に向かうリタを眺めること数分。自分の防具を探しに行ったキョウコさんとそれについて行ったリントが先に戻ってくると思っていたが、思ったよりも時間が掛かっているようで先に終わったと告げたのはリタの方だった。
「出来たのか?」
「一応だけどね。まだちょっとした制約は残ってるけど、多分大丈夫だよ」
椅子に座ったまま振り返り俺を見上げてくるリタの顔には何やら悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべている。
「何だよ、その制約って」
「あのねユウくん。猫と犬どっちがいい?」
綺麗な顔で笑う彼女を前に悪寒が走った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
プレイヤーネーム 『ユウ』
種族 『人族』
所属ギルド 『黒い梟』
レベル【1】 ランク【2】
【総合計値】[基礎能力値](装備加算値)《スキル加算値》
HP 【7500/7500】 [500] (+2000) 《+5000》
MP 【2750/2750】 [250] (+500) 《+2000》
ATK 【640】 [80] (+360) 《+200》
DEF 【610】 [70] (+330) 《+200》
INT 【550】 [60] (+290) 《+200》
MIND 【370】 [60] (+110) 《+200》
SPEED【560】 [80] (+280) 《+200》
LUK 【84】 [80] (+2) 《+2》
AGI 【480】 [70] (+210) 《+200》
DEX 【320】 [60] (+60) 《+200》
『装備・武器』
専用武器・1 【ガン・ブレイズ】 精霊器(契約精霊・黒竜フラッフ)
――(装弾数×4)(魔力銃)(ATK+300)(INT+200)(MP+300)(不壊特性)
専用武器・2 【魔道手甲】
――(ATK+50)(DEF+100)(INT+50)
『装備・防具』
頭・【シルバーカフス】
――(INT+30)(MIND+30)
首・【シルバータグネックレス】
――(耐毒・小)(耐麻痺・小)
外着・【ディーブルー・ショートコート】
――(HP+1500)(DEF+120)(耐火属性)(耐水属性)
内着・【ディーブルー・インナー】
――(DEF+50)(MIND+50)(耐雷属性)
腕・【ブラックレザーグローブ(右腕)】
――(DEX+60)(AGI+40)
腰・【ディーブルー・ロングベルト】
――(HP+500)(MP+200)(MIND+10)
脚・【ディーブルー・ミドルパンツ】
――(DEF+50)(SPEED+70)(AGI+70)(耐風属性)
靴・【ディーブルー・ショートブーツ】
――(SPEED+200)(AGI+100)(耐土属性)
『装備・アクセサリ』 装備重量【3/10】
【証の小刀】(装備重量・2)
――(ATK+10)(DEF+10)(INT+10)(MIND+10)(SPEED+10)
【妖精の指輪】(装備重量・1)
――(契約妖精・リリィ)(LUK+2)
『所持スキル一覧』 スキルポイント【0】
≪ガン・ブレイズ≫ レベル・10
≪ガントレット≫ レベル・10
≪マルチ・スタイル≫ レベル・10
≪HP強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《HP+5000》
≪MP強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《MP+2000》
≪ATK強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《ATK+200》
≪DEF強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《DEF+200》
≪INT強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《INT+200》
≪MIND強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《MIND+200》
≪SPEED強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《SPEED+200》
≪AGI強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《AGI+200》
≪DEX強化・Ⅲ≫ レベル・10(MAX)
――《DEX+200》
≪鍛冶・武器≫ レベル・10
≪調薬≫ Lv.10
≪細工・アクセサリ≫ レベル・10
≪調理≫ レベル・7
≪採取≫ レベル・5
――《LUK+1》
≪採掘≫ レベル・5
――《LUK+1》
≪状態異常耐性≫ レベル・10
――対応状態異常耐性(毒)(麻痺)(睡眠)(火傷)(氷結)(沈黙)(気絶)(石化)(魅了)(遅延)
『使用可能アーツ一覧』
<インパクト・スラスト>
<アクセル・スラスト>
<サークル・スラスト>
<インパクト・ブラスト>
<アクセル・ブラスト>
<オート・リロード>
<チャージ・リロード>
<シールド>
<ブロウ>
<パリィ>
<クイック・スタイル>
<ブースト・ブレイバー>【選択中】
<ブースト・フォートレス>
<ブースト・ハート>
<インパクト・スラスト・バースト>
<アクセル・スラスト・バースト>
<サークル・スラスト・バースト>
<インパクト・ブラスト・バースト>
<アクセル・ブラスト・バースト>
『必殺技』
<シフト・ブレイク>
<ブレイキング・バースト>
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今回の話は次回に続きます。




