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秘鍵が封じるモノ ♯.17『爆発させて突破』

お待たせしました。今週分の更新です。

 パペットモンスターとの戦闘が本格的に再開したとき、最初の一撃を放ったのはハルだった。

 強化された戦斧を叩きつけて引き起こす爆発を伴う一撃によって目の前のパペットモンスターの一群は二分された。

 次に左右に分かれたパペットモンスターへとムラマサたちが向かっていく。

 俺はアラドと共に攻撃を放ったハルの横を通り抜け前へと出た。


 正面に捉えたパペットモンスターを押し退けたのは俺ではなくアラド。

 その目的は一つ。与えたダメージを蓄積するため。延いては必殺技(エスペシャル・アーツ)の威力を高めるためだ。

 竜化が変化し、俺は消費したMPの総量という点は変わらず自動消費だけが無くなったのと同じように、アラドにもまた変化があったらしい。

 アラドから直接聞いた話ではこれまでは戦っていた相手単体に与えたダメージによって増加していた威力が、今では一つの戦闘内で減らした相手のHPの総量に比例するようになっていると。

 極論、ボスモンスターには一度も攻撃することなく、同時に出現した他のモンスターのHPを削ることで威力を高め、ボスはその高めた威力の一撃で倒すことも可能なのだとも。


 回復役を担う仲間とアラドの後ろを走っているだけの俺を除いたギルドメンバーたちの攻撃のおかげで開かれたパペット・キングへと至る道。


「先に行く!」


 俺たちの班の回復役を任されたセッカと彼女を護衛するハルにそう告げて、俺とアラドは走る速度を一段上げた。

 王の意匠を持つパペット・キングはその身の巨大さもさることながら纏っているマントが有する防御力も際立っている。

 背中の尾を地面に強く叩きつけた反動で高く飛び上がったアラドはその勢いを殺すこと無く鋭い爪を振り下ろしたのだ。


 俺が知る限り竜化したアラドの能力値は高い。

 軽く振り下ろしたつもりの爪撃も巨大な獣のモンスターが繰り出すそれとは比較にもならず、また、本気でアラドは放ったそれは文字通り竜の一撃と呼ぶに足り得た。

 しかし、実際にパペット・キングが受けたダメージは少ない。頭上に浮かぶHPバーを見る限り減少した数値はごく僅か。

 その理由がパペット・キングが纏っているマントであることは明らかで王の身を守るため、盾の如く独りでに動いたマントがアラドの一撃を防いでみたのだ。


 前衛をアラドが担当するのならば俺は後衛を。

 いつもならばそう判断するのだろうが、アラドの一撃をいとも容易く防いで見せたパペット・キングを鑑みるに、銃形態では埒が明かないだろうことは容易に予測できた。

 それ故に今回は俺もアラドに並び前に出る。

 剣形態のガン・ブレイズを振るいパペット・キングの本体を攻撃しようとしたのだが、残念なことにそれはマントによって防がれてしまった。


 ならばと発動させた速度特化の斬撃アーツ、その竜化版<アクセル・スラスト・バースト>を発動させる。

 全身に掛かる急加速に身を任せ、放った一撃だったがこれもまたマントによって防がれてしまう。

 ガン・ブレイズを通し返ってきた感触は硬い金属を打った時のもの。

 それでもやはりアーツを使った一撃は何も使用していない一撃に比べれば与えられるダメージが多いのか、マントに見て解る亀裂が生じていた。


「攻撃を続けていればいつかは貫ける…ってわけじゃ無さそうだな」


 一瞬の期待を打ち砕いたのはマントに入った亀裂が自動修復される様を目の当たりにしたこと。

 それでもあの防御を突破しない限り有効なダメージを与えることは出来ないだろうと俺もアラドも一心不乱に攻撃を続けた。

 とはいえMPが無くなれば竜化が解かれてしまう俺は先程のように無計画にアーツを使うことは出来ない。

 アラドは竜化したことで殆どのアーツを使えなくなっているために放つ攻撃は所謂通常攻撃だけになっている。無論その一撃一撃の威力が簡単なアーツの一撃に比例しているのだから問題ないと言えば問題ないのだろうが。


「チッ、キリがねェ」


 竜の頭をしたアラドの不満を露わにした声が漏れた。


「それでも他のパペットモンスターを相手にするよりはマシだろ?」

「まァな」


 空中を縦横無尽に跳び回るアラドがため息交じりに答える。


「ってか反撃ないのも不気味なんだよな」


 そう。今に至るまでパペット・キングはマントを使い俺とアラドの攻撃を防御するばかりで攻撃しては来なかったのだ。

 杖を持つからには何らかの魔法を使ってくるのだろう。最低でもその杖を使い物理的な攻撃を放ってくるだろうと考えていた。しかし、俺の予想は外れパペット・キングはこちらの攻撃を受け続けるだけ。

 こちらの攻撃が効かないのはマントが防御するからだとしても、それが俺たちに攻撃を仕掛けて来ないことの理由にはならない。


 時折杖を掲げたかと思うと、それは俺たちに対する攻撃では無く、ムラマサたちの手によって減少したパペットモンスターを復活させるためのもの。

 結局は攻撃をしてこないことには変わらない。


「なあ! 俺たちはどうすれば良い?」


 戦斧を掲げたハルが近づいてくるパペットモンスターを薙ぎ払いながら問いかけてくる。


「セッカの護衛は!」

「手を抜くつもりは無いさ。けど二人だけじゃ埒が明かないんじゃないか?」


 痛い所を突かれたと息を呑み、一度攻撃の手を止めハルとセッカがいる場所へと向かう。

 パペット・キングを取り囲むように戦っているムラマサたちとは違い、ハルがいるのはパペット・キングの正面に近い。

 それは勿論俺とアラドが前に出て戦っているからであり、俺たちを回復するためにセッカが控えているからこその位置取りではあるが、それでも至近距離と呼ぶ場所からは離れている。

 近接武器を用いる俺はより強い一撃を与えるためにパペット・キングに近づいており、それから離れるとなれば多少の移動は当然とも言えた。


「……ん。大丈夫?」

「ああ。大したダメージは受けてないからな。それよりハルはどうしたいんだ?」


 前置きはすっ飛ばしていきなり本題。戦闘中ならば当たり前だ。


「俺もパペット・キングと戦うつもりだ」

「でも、護衛は――」

「そのことならセッカに話してあるさ」

「……私はもともと戦闘職」


 RPGならばメイスを使う僧侶というのは珍しくはない。

 だが、セッカの場合は回復魔法を使いたいが故に小型のハンマーを僧侶が使うようなメイスへと作り替えたのだ。

 現時点のスキルレベルは分からないが、元々は《ハンマー》のスキルの方がレベルが高かったというわけだ。


「……自衛くらいなら、できる」


 セッカが自信たっぷりに告げてきた。


「というわけだ」


 護衛の役割を放り出したとしてもパペット・キングを倒さないことには戦闘が終わることはない。それを理解しているからこそハルもパペット・キングと戦うと言いだしたのだろう。


「ユウもセッカのことは十分理解しているんだろ」

「そうだな。それに信頼もしてるさ」

「なら!」

「ああ。手を貸してくれ」


 念のため近くのパペットモンスターを吹き飛ばしてから俺はハルと一緒に走り出した。

 戦斧を構えるハルは常に装備している全身鎧も相まって竜化している俺と並んでも遜色一つありはしない。

 跳び回っているアラドが呼吸を整えるために着地したのに合わせて、今度は俺とハルがパペット・キングへと向かった。


「確認したいんだけど、あのマントは勝手に防御するんだよな」

「おまけにすっごく硬いぞ」

「どんな風に?」

「剣も弾くくらいだし、鉄みたいな感触も返ってきたからな。おそらくは金属だろうけど」

「だったら一回試したい事があるんだ」


 そう言って突撃槍(ランス)のように構えた戦斧を携えてハルが前に出た。

 そして戦斧の石突きを地面に突き立て、棒高跳びのようにパペット・キングの胸の位置まで飛び上がったのだ。


「喰らえっ! <灼岩爆斧(しゃくがんばくふ)>!」


 赤化した穂先を叩きつける。

 俺たちが攻撃した時のようにパペット・キングが纏うマントが自動防御してハルのアーツを防いだ…ように見えた。

 激しい爆発が起こりパペット・キングの前にいるハルまでもがその爆炎の中に巻き込んでいく。

 この爆発と爆炎が現実の炎とは違うのは一瞬にして細かな火花となり霧散してしまうこと、そして爆炎に飲み込まれたはずのハルが全くの無傷であること。


「続けて! <剛震爆斧(ごうしんばくふ)>」


 パペット・キングのマントは完璧な防御能力があるわけではない。それは俺のアーツやアラドの攻撃でマントに亀裂が生じているから間違いない。

 だからハルが使ったアーツによってマントに傷が付いても何もおかしな話ではないのだ。

 爆発を受けたパペット・キングのマントが受けた傷は亀裂ではなく表面の赤化と溶解。そして続けざまに使用した攻撃は溶解したマントに戦斧を突き立てたことで発動する。

 生じたのは断続的な揺れ。

 パペット・キングのマントの上だけに発生した小規模かつ強威力の地震だ。


「ユウ! 爆発のあと直ぐに攻撃してくれ!」


 揺れが収まったその刹那。ハルが言っていたように爆発が起こった。

 内側から弾けたような傷跡が残るマントはゆっくりと自己修復を始めている。だが、それは俺とアラドが付けた傷の時よりも遙かに遅いスピードでしかない。


「撃ち抜く! <インパクト・ブラスト・バースト>」


 爆発や揺れの中に飛び込む度胸はない。

 いくらゲームとは言っても危険に飛び込むのは時と場合を選ぶべき。

 故に俺はガン・ブレイズを剣形態から銃形態へと変えるとそのまま威力特化の銃撃アーツを発動させた。

 通常の射撃は通用しないかも知れない。そう思ったのは嘘じゃ無い。だからこそアーツを使う必要があるのだとも。

 だがそれでは直ぐにMPが底をついてしまうだろう。

 だからパペット・キングとは銃形態では戦えないと判断した。

 しかし、本体にダメージを与える千載一遇のチャンス。その時有効なのが銃撃アーツだとするのならば迷う必要など微塵も無い。


 赤い閃光が爆発の中を走る。

 一瞬の静寂の後、それまでとは違う轟音が響き渡った。

 ガクンッと減るパペット・キングのHP。

 これまで通じなかった俺たちの攻撃が効いた瞬間だった。


「やっぱりな」


 ニヤリと笑った、かに見えたハルは俺の攻撃によってマントから弾き飛ばされた戦斧を拾い上げながら言う。


「二人の攻撃があまり効いていないように見えたからひょっとしたらと思ったんだよ」


 すっと着地した俺は首を傾げどういうことだと問いかけた。


「ユウもアラドも属性攻撃を全くと言って良いほど使わないだろ」

「あ、ああ。俺は攻撃に使えるレベルじゃないし、そもそも俺はアーツの中に属性技を持ってないしな。アラドに関しては、そうだな竜化する前もあまり使ったのを見たこと無いな」

「で、だ。そこで俺の出番ってわけさ」

「そういえばハルは爆発属性を使うんだったな」

「まあな。爆発は火と地の複合属性とも言われてるんだ。そしてユウの話だとパペット・キングのマントは金属製だと想像できた」

「つまり火に弱いと?」

「かも知れないと思っただけだがな。まあ、その賭けには勝ったみたいだ」


 未だゆっくりとした修復を行っているからだろうか。

 ムラマサたちが減らしたパペットモンスターが復活する気配は無い。


「それならこの方法を続けるぞ」

「ああ。俺が燃やして防御をこじ開けて――」

「俺とコイツが一気に攻撃すンだな」


 時間を掛ければムラマサたちもパペット・キングとの戦闘に参戦してくれるだろうけど、それを無理に狙う事も無いはず。

 黒煙を立ち込ませるパペット・キングがようやくとでも言うべくして動き出した。

 燃えたマントは溶けるように落ち、その代わりに杖の先が王冠のように広がる。


 ついにパペット・キング自身の攻撃が始まる。



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