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フローラの秘密 2

本日二回目の更新。

「あ! フローラ様! こんにちはっ!」

「!」

「フローラ様、私、フローラ様と一緒に作法とダンスを習う事になりました、よろしくお願いしますね!」

「……プリム……」


王様のお話が終わって執務室を出ると、斜め向かいに、フローラ様が壁によりかかるようにして立っていた。

私はフローラ様に声をかけ、笑顔で駆け寄る。

声をかけられたフローラ様はぴくりと体を揺らし、駆け寄る私を見て、何故か目を見開いて私を凝視している。


「? フローラ様? どうかなさいました?」

「どうかって……プリム、お父様のお話を聞いたのでしょう? ……私の事、気味悪くありませんの……? 私、人の心が読めるんですのよ? 貴女の事だって、考えまではわからなくても、感情は読み取ってしまうのに……それを知っても、私の側にいられるんですの……?」


私が首を傾げて尋ねると、フローラ様はそう尋ね返した。

段々顔は俯き、声は小さくなっていく。

そんなフローラ様を前にして、私は足を止め、ぱちぱちと目を瞬いた。

え……フローラ様、何、言ってるんだろう?

今更、私がフローラを気味悪がったり、側にいるのが嫌になるなんて事、あるわけないのに。


「……えっと……う~ん。……人の心が読めるって、便利なようで、不便ですよね。良いことならまだしも、嫌な事までわかっちゃうんですし。フローラ様、大丈夫ですか? 辛い時は、溜め込まずに言って下さいね。私、愚痴くらいならいくらでも聞きますから!」

「……え……? ……そ、そうではなくて! 貴女は平気なの? 感情を読まれるのよ?」

「ああ……。ええと、感情って、喜怒哀楽、でしたっけ? それなら、私にも読めますよ?」

「えっ!?」

「フローラ様は今、哀しんでます。怖くて怯えて、苦しんでます。そうでしょう? それくらいの事は、誰だって読めます。その人の表情や態度やしぐさから。……だから、そんな事気にして、大切な友達から離れるなんて、あり得ません」

「……そ……そんなの、詭弁だわ。第一、それと私の力とは、全然違うものじゃない……っ」

「あは、バレちゃいました? ……でも、フローラ様。大丈夫です。そんな事で、私はフローラ様の友達をやめませんよ」

「そ、そんな事って……! も、もういいですわ! 貴女に嫌われるって怖がってた私が馬鹿みたい!」


どうしたら伝わるだろうかと、笑顔で、わざといつもより少しだけ軽い調子で話しつつ、"友達"の部分を少し強調する。

するとフローラ様はそう言ってぷいっと顔を背け、背を向けてしまった。

そしてそのまま、歩き出す。


「あ、フローラ様っ。早速明日から私も一緒に学ぶみたいですから、よろしくお願いします。また明日!」


私は去っていくフローラ様の背に向かってそう言って、手を振った。

……これで、伝わったよね?

私がフローラ様を嫌うなんてあり得ない。

そんな事を怖がるなんて、本当に馬鹿ですよ、フローラ様?

そんな思いを胸に、去っていくフローラ様を見つめていると、フローラ様は更に数歩進んだ先で立ち止まり、顔だけでこちらを振り向く。


「……ありがとう、プリム。……また明日」


瞳を潤ませ頬を赤くしたフローラ様は、微かに聞こえる程度の声でそう言って、再び歩き出し、今度こそ去って行った。

……うん、ちゃんと伝わったみたい。


「さぁ、それじゃあ帰ろう、お父さん、フレイ君!」

「ああ。……しかし……舞踏会に出席するとなると、ドレスが必要だな。当然、フレイも護衛として一緒に行くから、フレイのも用意しないとなぁ」

「え? ……あっ!? 嘘、どうしよう!? ドレスとかって高いよね!? お父さん、お金大丈夫!? 厳しいなら私、川でお魚でも何でも、釣ってくるよ!? それで少しは食費浮く!?」

「なっ……!?」

「ああ、それなら、俺も手伝う。その辺に生えてる草とかでも食べられるのあるし、それと合わせれば問題なく食べていけるぞ」

「え、本当!? わぁ、フレイ君って頼りになるね! ね、お父さん……って、あれ、お父さん……?」

「あ。……旦那様、真っ白になってるな」

「えぇ、何で? お父さん? お父さ~ん!」

「旦那様、旦那様! 帰りましょう、旦那様!」


私とフレイ君はお父さんに向かって何度も呼び掛けたけれど、お父さんはその後しばらく、呆然としたまま、微動だにしなかった。

お父さん、何で突然あんなふうに固まっちゃったのかなぁ?

未だに家は貧乏だと思い込んでいるプリム。

幼い娘に事あるごとに家計を心配され、フォルツの胸は情けなさで一杯です(笑)

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