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第二章三十五話 「クラティック・ウォンスター」




<side クラティック>


 ――クラティック・ウォンスターが本屋をやっている理由を、知っているだろうか。

 彼女が人と話すのが苦手だから、静かな場所が好きだから、勉強や運動などがあまり関係のない仕事に入りたかったから、などと言った理由がある。


 だが――今、聞いているのは、そういう理由ではない。

 なぜ、彼女は人と話すのが苦手なのか。

 なぜ、彼女は静かな場所が好きなのか。

 なぜ、彼女は勉強や運動などがあまり関係のない仕事に入りたかったのか。


 ――今、聞いているのは、それらだ。もっと根本的で、原因で、元凶で、クラティックが本屋になりたいと思った、その理由の理由。

 人の感情や心情、思考や思惑、潜入観や概念などには、必ずそうなった理由、というものがある。

 クラティックは一体、過去に何があって、どんな体験をして、どんな経験を積んで、本屋になりたいと、そう思ったのだろうか。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――クラティックは、富豪か貧困かで言うと、富豪寄りの家庭に生まれてきただろう。


 父のアーティスティル・ウォンスターは立派な魔法研究会社の社長を務め、母のデザイルファン・ウォンスターは絵画や人形などの芸術的の人気作家であった。

 妹が二人、クティック・ウォンスターとラティック・ウォンスターはまさに対極と言った感じだ。

 勉強が得意で真面目なクティックと、運動が得意で怠惰なラティックという、二人合わせて文武両道な妹だった。

 ――その中でクラティックは、両方の才能があった。


 事情があったため、クラティックは小卒であり、学校にはほとんど行っていない。

 しかし幼い頃に難しい問題を解いたり、上級生向けの問題を解いたりした。それで家族から褒められるのが、一番嬉しかった。

 運動に関しても、幼稚園の頃の鬼ごっこは鬼に捕まることはほとんどなく、そこら辺の大人よりも足が速かった。それで家族から褒められるのが、やはり一番嬉しかった。


 ――ここまでの話を聞けば、クラティックがかなりの幸せな人生を送ってきたのだと、そう思うはずだ。そして実際、それは間違っていない。

 クラティック自身も本当に幼い頃は幸せだったと思うし、今の本屋職業生活もいろいろと苦戦しながらも、楽しく過ごしているはずだ。


 だが、だからこそ、ここで一つ、疑問が浮かぶだろう。

 ――そんなに才能があるなら、富豪寄りな家庭なら、本屋以外の職業に就けば良かったのではないか、と。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――とある春。クラティックが七歳、小学校の入学式。

 今朝、両親と可愛い妹たちに心配されながらも見送られたクラティックは今、小学校の入り口の門の前で、仁王立ちしている。

 そして、クラティックは大きく息を吸い――


「初めまして小学校! クラティック・ウォンスターです! これからよろしくお願いします!!」


 ――と、見事なお辞儀を見せながら、大声で叫んだのだった。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――明らかに場違いで、明らかに違和感で、明らかにおかしいのに、クラティックはなぜかその後、自慢げに門の前で再び、仁王立ちをしている。


 どうだ初日から礼儀を見せてやったぞ、的なことが書いてありそうな自信満々な表情をしているクラティック。反面、周りの生徒は何がなんやらと、明らかに困っている様子である。


「……?」


 すると、周りの生徒が困っている表情をしていることにか、もしくは拍手喝采でも起きる予定だと思っていたのか、クラティックは周りを見渡して不満げな表情をしている。

 それに比例するように、周りの生徒も困った顔を増していく。


 ちなみにだが、前述した通りクラティックは門の前で仁王立ちしている。

 だから学校に入りたくても、彼女の前か近くを通るか声をかけて退いてもらうかしか、選択肢がない故、誰も門に近づくことができない状態だ。


 刻一刻と入学式開始の時間が迫り、入学式初日から大多数が遅刻になるのではないかと、何人かの生徒が思い浮かべていそうな中――


「ちょっとそこ退きなさいよ、あんた」

「お姉様の言う通り、そこを退きなさいと命令します、あなた」

「お姉様方々の言う通り、そこを退いてくれると嬉しいです、あなた様」


 ――そんな三者三様の声が、クラティックに話しかけてきた。

 クラティックはおおっ、とどこか期待を浮かべた表情をしながら、声のした方を向く。

 するとそこには――赤髪、青髪、緑髪の、三色の髪の色をそれぞれした少女たちがいた。


「おおっ、おおっ! やっと私に話しかけてきてくれる人がいたか勇者たちよ!」

「茶番は面倒だわ。それよりも退きなさいって言ってるでしょ」

「お姉様の言う通り、茶番は面倒と告知し、再びそこを退きなさいと命令します、あなた」

「お姉様方々の言う通り、茶番は面倒なのでしない方が嬉しいです、あなた様。後そこを退いてくれると嬉しいです、あなた様。」

「すごい特徴的な喋り方!?」


 やっと自分に話しかけてくれる人が現れた、という期待が込められた言葉を発する彼女だが、その評価は一瞬にて覆された。

 何せ、返ってくるのがその反応なのだ。クラティックの叫びも仕方ないものであろう。


「何よ。なんか文句あんの?」

「お姉様の言う通り、文句があるのかと質問します、あなた」

「お姉様方々の言う通り、文句があるのならできるだけ言わないでいてくださる方が嬉しいです、あなた様」

「いやそういうわけじゃ……あれ、お姉様ってことはもしかして姉妹?」

「そうよ。てかあんた、今気づいたのね」

「お姉様の言う通り、今、その事実に気づいたのかと質問します、あなた」

「お姉様方々の言う通り、今、気づいたのですかと問い」

「一人一人の発言が長い、遅い! 省略とかできないのかこの姉妹!?」


 その超長超遅(ちょうちょうちょうち)とでも名づけたい会話にクラティックは唾を飛ばしながら文句を言うが、少女たちはどこ吹く風。

 クラティックにあっちに行けという手振り身振りをしながら、彼女たちは再び口を開き言葉を放つ。


「そんなもんどうでもいいのよ、あんた。はいほらさっさと退いた退いた。こっちは急いでんの」

「お姉様の言う通り、あなたの文句は全てがどうでもいいと告知し、瞬時に退くことをお勧めします、あなた」

「お姉様方々の言う通り、文句は聞いたら気分が落ちるので別の誰かに放ってくれると嬉しいです、あなた様。そして自分自身たちは急いでいるので、速くそこを退いてくれると嬉しいです、あなた様」

「あーもう、わかったわかったから!」


 クラティックは半分ほどどうでも良くなりながら、門の前を退く。


「はぁ……」


 その後、なんだか何も考える気がせず、つまり面倒臭かったと結論づけたクラティックは、見事に整列しながら進んでいく三人を見て、ため息を吐き、思う。


 ――これはなかなか、楽しい学校生活になりそうだ、と。

 その後に起こる悲劇を彼女はまだ知らないし、予想もしていない。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――その後。

 クラティックは校庭に立って、新教室の表を配っている先生たちに大声で挨拶。

 指定された教室へと向かう間に出会った生徒たちにも、全員に挨拶。

 もちろん名前も覚え、そして教室に着き、バーンと大きな音を鳴らしながら扉を開き――


「初めまして同級生の皆さん! 私の名前はクラティック・ウォンスター! 一年間よろしくお願いします!」


 ――と、再び綺麗なお辞儀を見せながら、大声で挨拶したのだった。


「――――」


 その彼女の挨拶に対し、教室の諸々は当然のこと、困惑の表情を浮かべるか、突如の出来事に硬直するかのどちらかだ。

 一応先程のことから、顔を上げてしまったら皆が困惑の表情を浮かべると、クラティックは学んでいる。もちろん学ぶべきところはそこではないが。


 そしてまた、校門のときと同じように刻一刻と、時間が進んでいく中――クラティックの背中を叩くものが現れた。


「おおっ!?」


 それに対し、再び期待に目を輝かせながら後ろを向く。


「ってまたあんたかい、めんどく三姉妹の姉!」

「なんかとっても不快な総称つけられた気がするんだけど、気のせいかしら?」

「なんで私よりも先に行ったはずなのに私よりも遅れてんの?」

「妹たちを先に送ってったからに決まってるでしょうが」


 そこにいたのは、先程も校門でクラティックに話しかけてきた三姉妹のうちのおそらく長女であろう、赤髪の少女。

 結局のところ、自分に話しかけてくれる人はこいつしかいないのか、とクラティックはわかりやすく落ち込んだ風に俯いて――ふと、違和感に気づいた。


「……あれ?」

「……何よ?」

「特徴的な喋り方じゃないっ!? 嘘、別人!?」

「はぁ? さっきもこんな感じだったと思うけど」

「そんなわけあるかい! そもそもあんたあの喋り方が本体でしょ!?」

「そんなことあってたまるか!」


 その違和感とは、校門で出会ったときとは違う喋り方、だ。

 ――妹二人が特徴的故に釣られて姉もそのような喋り方だと勘違いしただけで、確かに普通だったかも、とクラティックは少し思ったり考えたりしたが――


「絶対変わってるから! とっとと白状しろ!」

「本当に鬱陶しいわね……というより早く退いてくんない? あたくしは早く自分の席に座りたいの」

「一人称と喋り方合ってなさすぎじゃない!?」

「んなもんどうでもいいでしょ!? いいから退いてって!」

「むぅ……」


 ――それを素直に認めるのも悔しいので、クラティックは引かず退かず言い合いを続ける。

 だがさすがにもう無理か、と思い嫌々退き、そして――そう言えば、と思ってことを質問する。


「そ、退けばいいのよ退けば。んじゃあたくしはこれで……」

「あ、ちょっとちょっと」

「何よ」

「名前教えてよ」

「……へ?」

「だから、名前。なんて言うの?」


 クラティックの行為に、赤髪の少女は満足そうに両手を腰に当てていたが――それが、クラティックがした次の質問により、固まった。

 そう、クラティックは彼女の名前を、まだ聞いていないのだ。


「……むぅ、早く教えてくんない?」

「――――」

「……ねぇ、だから早く」

「アイノ・ロイゼフォーチよ」


 そして、クラティックが質問してから束の間を硬直していた赤髪の少女に、クラティックは急げ急げと早まらせる。

 すると、クラティックの言葉を遮って、赤髪の少女――アイノ・ロイゼフォーチは、クラティックの方をしっかりと向き、目線を合わせ、そう名乗った。

 それに対し、クラティックは――


「……そっか。私はクラティック・ウォンスターね。アイノ、覚えとくから」

「別にどうでもいいわ。後あんたの名前は知ってるわよ。散々叫んでたし」

「……てへ」


 ――小学校で初めてできた友達、ということで、表情は普通を保っているが、内心はとても嬉しかったのだ。

              △▼△▼△▼△▼△


 ――その後、担任の先生が来て自己紹介をした。

 そのまま教室から出て名前番号順で並び、体育館へと行き、入学式が始まり、大半が校長先生の長い話で終わる。

 そして教室に戻り、何枚かお便りの紙を貰い、アイノと少しだけ話し、帰路につき、家へと帰ってきたクラティック。


 初日からかなりの怒涛の展開が続き、明らかに疲れてた表情で帰ってきたクラティックを迎えたのは――


「お姉ちゃん、おかえり!」

「あ、ラティック……ただいま」


 ――クラティックの妹の一人、ラティックであった。


 まだ五歳な彼女は昼寝でもしていたのか、床の上に寝転んでいて、上半身だけ上げてクラティックの方を見ている。

 運動が得意故、人一倍は体力がある彼女だが――最低限の動きで生活を済ませたいのだと、ラティックのその様子から見て取れる。

 本当に怠惰だな、と思いながらも、自分におかえりを言ってくれたことに愛らしさが湧き――


「ん〜、さっきまで寝てたのかこんにゃろ」

「わふっ……だって眠かったんだもん、しょうがないでしょ」


 ――その態度に文句を言いながらも、クラティックはラティックを優しく抱きしめる。だけでなく、その柔らかい頬を、摘んでこねる。

 それに対し、特に文句を言うこともなくされるがままなラティックに、クラティックはさらに悪戯がしたくなったが――


「……何やってるんですか、二人共」


 ――突如、後ろから聞こえてきた声により、クラティックがさらなる悪戯をすることはなくなった。

 相手が年下にも関わらず、ギクリ、とクラティックは体を少し震わせながら、後ろを見ると――


「……ただいま、クティック」

「はい、とりあえずおかえりなさい」


 ――そこには、クラティックのもう一人の妹である、クティックがいた。


 ラティックと同じ五歳であるが彼女とは違い、勉強が得意故に真面目な彼女。

 そんな彼女は、基本的にはこう言ったおふざけにも少し厳しいところがあるため、クラティックはとりあえず話の論点をずらそうと、ただいまを言う。

 クティックも、それに一応、おかえりなさいと返してはくれたが――


「で。もう一度聞きますけど、何やってるんですか、二人共」


 ――それはそれ、これはこれというように、クラティックとラティックのやり取りを問い詰めんと、話の論点を戻す。


 この後は基本、楽しむのもいいですけど怪我はしないでくださいねと短い説教をされ、そこで反省の意を見せなかったら、こちょこちょの刑に会わせられる。

 こちょこちょの刑に会いたくなければ、素直に反省の意を見せればいいだけの話だが――そんなことをすれば、妹に従順な姉という評判がついてしまうのだ。

 故に――


「……あの、何してるんですか?」

「これが今の状況を打開する唯一の方法」


 ――クラティックは、クティックの動きを封じんと、クティックの体を抱きしめた。

 クティックの呆れを通り越して少し軽蔑的になっている視線を貰っているような気がするが、そんなことは所詮些細なこと。

 クラティックは姉という威厳を保つためなら、なんだってするのだ。


「だから、クティックは回れ右しておやつを取ってくるのです」

「何がだからなのかわかりませんけど、私が姉様の言うことを聞くと思いますか?」

「様つけるぐらいなら聞いてほしいけど」


 その後、クティックはため息を吐きながらも、しっかりと回れ右をする。

 そのまま部屋の中央ら辺の大きな机の上にある、飴やら煎餅(せんべい)やらの駄菓子が乗せられた皿を持ち、今度は回れ左をして――


「隙あり!」

「ひゃわ!?」


 ――床で寝転んでいるラティックに脹脛(ふくらはぎ)ら辺をくすぐられ、盛大に転倒した。

 すると、クティックが持っている駄菓子たちも、その反動で散っていくわけで。


「ぼげふっ!?」

「あ、姉様……」

「やーいやーい、クティック転んでやーんの」

「誰のせいだと思ってるんですか!?」


 宙を回った大量の駄菓子たちが見事、クラティックに全て命中し、それを見て慌てたクティックを、ラティックが笑いながら馬鹿にする。


 そんな微笑ましい光景――今思えば、それがクラティックの人生の中でなんの蟠り(わだかまり)もなく本当に楽しめた、最後の平和な光景だったのかもしれない。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――破、れた。破れた、破れた、破れてしまった。


 中央を境目に真っ二つにするように、破れた。上下を均等に分けるように、破れた。四角い形をいくつも作るように、破れた。

 もはやなんの形かもわからないぐらい、破れた。人間の裸眼では見ることが不可能なほど、破れた。


 ――否。その全てのどれもが、否。

 破れたのではなく――破()れたのだから。


「はぁ……とてもすっきりしましたわ」


 その破れ散ったクラティックの試験用紙を見て、満足そうに声を上げたのは、金髪の美少女だ。

 まるでお嬢様のような水色と金色が混ざったドレスを着て、まるで宝石のような銀色の瞳をして、まるで最高級の楽器のような高音を出して――まるでこの中で一番偉いというような、傲慢な態度で。


「そもそもあなた、生意気なんですのよ。この教室の中にはわたくしという一人の高貴な人物がいるというのに、自分が一番偉いみたいに目立って。今までも何回か、あなたが目立つ場面がありましたわよね。そのときはこの後取り戻すからいいと、ほっとんど我慢していましたが……もう、我慢の限界ですわ。位も階級も家も育ちも環境も状況も親も家族も言葉遣いも姿形も清潔さも髪の輝きも瞳の綺麗さも肌の滑らかさも虫歯の有無も親からの愛も頭脳も運動神経も何もかもが違うというのに、なんでそんな素晴らしいわたくしを退けて、偉そうに目立つんですの? 理解ができませんわ、本当に」


 試験用紙を破いたことへの謝罪もせず、彼女はクラティックを責め立てるように、次から次へと言葉を捲し立てる。


「で、謝罪はないんですの? わたくしの許可を得ず、同意も得ず、賛成も得ず、権利も持たず、義務もなく、義理もないのにわたくしより偉そうに目立ったことへの謝罪は。ないんですの?」


 謝罪をするべきなのは向こうの方なのに、自分は何も悪くないと、クラティックが全部悪いのだと言うように、彼女はどんどんどんどん言葉を捲し立てる。


「しゃ、ざ、い、は? ないんで、す、の?」


 ――今回、試験が行われた。それは小学校生活一ヶ月が経ったということで、今までの内容をおさらいしましょうという名目の試験だ。

 そしてクラティックは国語算数両方とも満点で、先程からクラティックにあれこれ言っているこの少女もまた、満点だった。

 しかし――クラティックには、クラスの中で名前が一番綺麗に書けていたということで、国語算数両方とも十点、点数を足されたのだ。


 それが地雷踏みとなったのか、彼女の自尊心を傷つけたのか、もしくは今までのこのような場面の積み重ねで、この少女がとうとう痺れを切らしたのか。

 ――クラティックの背に蹴りを一つ入れ、それで前の机にぶつかり痛がるクラティックを他所に、筆箱の中のいくつかの物をごみ箱へと投げ捨て、挙げ句の果てに試験用紙を破いたのだ。

 そして今、クラティックはその少女から、いろいろと罵詈雑言を浴びさせられている状態。


「……逆にここまで何も言われないとなると、なんだかこっちが気まずくなりますわね」


 そんな少女の言葉を聞きながら、クラティックは今の状況の残酷さについて、考える。


 ――なぜ、周りはこの状況を見ても、何も言わずに黙っているか。そんなのは、単純明白な簡単な理由である。

 クラティックを助けたところで、なんの得もないから。


 このクラスの女子の大半――というよりほとんどは、この少女の味方だ。

 ならば、そのクラスのほとんどの女子たちに抗ってまで、クラティックを助ける人がいるだろうか。――否、いるわけがない。


「……ほら、さっさと何か喋ってくださいまし。わたくしが全面的に悪い、みたいになるのは勘弁ですわよ」


 いるわけがない、というのは――少しだけ、優しく言った言葉だ。

 周りの状況を、本当に率直にそのまま言うならば――むしろクラティックの姿を見て、面白がっているものがほとんどだ。


 周りの声なんて何も聞きたくないクラティックの耳に、数多の笑っている声が、聞こえる。

 ――めんどくさいことは起こさないでよ、と気怠げに言っている教師の声が。

 ――クラティックの姿を見て、無様だの惨めだの哀れだの言いながら嘲笑いの笑みを溢している、何人かの少女たちの声が。

 ――クラティックの姿を見て、もっとやれだのまだまだこれからだの言いながら悪い方向に乗っている、何人かの少年たちの声が。

 この中で聞こえない声と言えば、入学当初に出会ったアイノの声ぐらいであるが――彼女は今の状況を、どう思っているのだろうか。


「……いい加減に何か一言喋らないと、頭蓋骨踏みつけますわよ?」


 小学校に入学して、初めて友達だと思えた相手。

 喋り方は特徴的だったような気がしたけどやっぱりそれは勘違いかも、でも見た目は可愛くて、でもでも一人称と喋り方が合っていなくてそこがまた面白おかしくて、そして三姉妹で集まるとさらに面白おかしくなって、この一ヶ月間もクラティックとよく話して、よく言葉を交わして、よくお互い笑い合って、よくお互い励まし合った彼女は、今、この状況を――


「はぁ……これだから平民は。――この第一巨大王国ノヴァディース出身の大貴族の娘、ランフィルノート・レゼリフォン・アルトゥニーの言葉を散々無視するなんて、底が知れますわ」

「が、あっ!?」


 ――と、考えようとしたところで、頭にものすごい痛みと何か熱さを感じ、クラティックの意識は落ちた。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――その後、クラティックは自分の部屋で目が覚めた。

 目覚めた瞬間、クラティックが起きるまで待っていたのか、布団の隣にいた妹二人が、泣きながらクラティックに抱きついてきた。

 それに申し訳なく思いながらも――


「……そっか」


 ――クラティックはそう呟く。妹二人から、その後の事情を聞いたのだ。


 曰く、突如として戸が強く叩かれ、床に寝転んでいたラティックがさすがに何かを感じ取ったのか、何事か、と玄関に行き扉を開けると、クラティックをお姫様抱っこし、さらには私物や鞄を背負って運んできたアイノが、そこにはいたそうだ。

 それでアイノは、事情はいろいろあって話せないけど、クラティックをしっかりと休ませてあげてほしいと、そう言って去っていった、と。


 故に、クティックとラティックの二人は、学校で一体何があったのか、事情を知らないわけだが――


「……大丈夫、だよ。特になんにもなかった」

「姉様……」「お姉ちゃん……」


 ――この妹二人を自分の事情に巻き込むなど、クラティックはできなかった故、事情についてなんて、話せなかった。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――翌日。クラティックは妹二人と夜遅く帰ってきた両親に心配されながらも、学校へと登校して行った。


 アイノに、感謝を言わなければならない。

 どういう気持ちで、どういう心理状況で、どういう思惑で、どういうことで、アイノはクラティックを運んできてくれたのかも、聞かなければならない。


 故に、とりあえずクラティックは学校に行かなければならないのだ。

 ということで一日目。学校に行き、階段を登り、教室に入ると。


「あら、また来たんですの、平民」


 そうランフィルノートに言われ、鳩尾(みぞおち)を強く蹴られ、倒れたクラティックの頭が教室の扉に当たり、彼女の意識はそこで途絶えた。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――保健室での目覚め後。クラティックはさっさと家に帰り、そのままずっと家に引き篭もっていた。

 妹二人の心配する声や、両親からの励ましの声や夕飯置いとくねという気遣いなどが聞こえたが、クラティックはそれを全て無視して、ひたすらずっと泣いていた。


「――――」


 ――自分はもう、あの場にいても孤独な存在でしかないのだろうか。

 ランフィルノートに暴力をされても、同級生は誰一人としてクラティックを助けようということをしないどころか、クラティックの姿を見て、馬鹿にして嘲笑って、見下していた。


「――――」


 ――自分はもう、あの場にいても面倒な存在でしかないのだろうか。

 朝、教室に来た瞬間、ランフィルノートに蹴られ気絶したというのに、保健室の先生は気怠そうにさっさと帰れと言い、クラティックを心配するものは誰一人としていなかった。


「――――」


 ――自分はもう、あの場にいても不快な存在でしかないのだろうか。

 クラティックがどんなに暴力をされても、どんなに遠ざけられても、どんなに酷い目にあっても、誰もクラティックの味方なんてしてくれない。

 それどころか、敵側になって嘲笑ってくるほどだ。

 


「――――」


 もう、嫌だ。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――翌日。

 昨日はそう言ったものの、だからこそ、ランフィルノートに初めて暴力を受けたあの日に黙っていたアイノが、クラティックのことをどう思っているのか、聞きたい。

 味方になる価値も、得も、義務も、義理も、ないのだ。

 なのにわざわざ学校からクラティックの家まで来て、私物や鞄―ランフィルノートに捨てられたはずの私物もなぜか全て鞄の中にあった―を持ってきた真意を、聞きたい。


 住所はおそらく担任の先生から聞いて、学校が終わった後に寄り道程度で来たのだろうが――それでも、それでも、それ、でも、聞きたい。

 鞄を持ってきてくれたことに対する感謝も、伝えなければならない。

 面倒をかけさせてしまったことに対する謝罪も、伝えなければならない。


 だから、冷め切って少しだけ傷んでいたような気もする夕食を完食し、服装も揶揄われないようにしっかりと選んで着こなし、何か物を奪われたり取られたりしたらたまらないため最低限の装備で、家を出た。


 その後、走る。早く会いたいから。早く聞きたいから。早く伝えたいから。それと時間も結構、走らなければ間に合わなそうだから、走る。

 そして門を通り、入り口に入り、階段を登り、教室の扉を開け、周りを見て―――


「……え、あの子まだ学校来てんの?」「え、ほんとに?」「なんで来てるんだろ」「目障りだよね」「ランフィルノート様に無礼してるんでしょ、目障りというより不快だって」「ていうかよく来れるね」「あんなに変な姿何回も見せてんのに」「……あー、昨日のださいやつか」「なんそれ」「興味ないから覚えてない」「あれだよ、蹴られてなんか、血ぃ出してなかったっけ?」「うえ」「うわ、私そういうの無理なんだけど」「気持ち悪ーい」「生々しいって言うんでしょこういうの」「てかなんで来たんだろ」「謝りに来たのかなランフィルノート様に」「いや遅い」「許してくれないでしょ」「許しを乞え〜」「時間が時間じゃん」「確かに、もうすぐで遅刻だし」「走って来たのかな? なんか汗びっしょり」「うわぁほんとだ」「えーあんま近づかないでほしいかも」「汗臭そうだよね……」「ちょっと苦手かもそういうの」「てかさ、それに比べたらランフィルノート様って清潔だよね」「そりゃそう」「確かに汗臭いとか思ったことないかも」「肌綺麗だしね」「水が滴るいい女」「逆に汗が光って見えるよね」「輝かしい」「それに頭いいしね」「運動神経もいいし」「完璧やな」「宿題出し忘れたこともないんでしょ」「試験の前の復習用紙全部やってきたんだね……すごい」「天才!」「天使!」「天智!」「てんじょーてんか!」「てんかむそー!」「なにそれ」「知らん」「ランフィルノート様!」「ラン「フィルノート様!」」「ラ「ンフィ「ルノート様!」」」「ラ「ン「フィ「ル「ノー「ト「様!!」」」」」」」「ラン「「フィル」ノー」ト「様!!!」」「「「「ラ「「ンフィ「ル「「ノート様!!!」」」」」」」」」


 ――そんな多数の声を聞き、いつの間にか、逃げるように廊下を疾走していた。

 最初は、教室に入ってきたクラティックを、責めたり軽蔑したり揶揄ったり悪口を言ったり嫌味を言ったり、と。

 クラティックの心をしっかりと、そして大きく抉ぐるようなものばかりであったが――次第に、それはなぜかランフィルノートへの讃頌へと変わっていった。


 それは、特段クラティックの心を傷つけるようなものでは、なかった。

 それは、それ自体は、特段クラティックの心を傷つけるようなものでは、なかった。

 でも、だからこそ、傷ついていなかったからこそ、それ以外の考えを思い浮かべることが、できてしまった。


 ――人間の好意の一番下に存在する位は、“無関心”。興味を持たない、関係を持たない、その相手がどうなっていようが、知ったことではない。

 だったら。もしも。あのとき。クラティックがランフィルノートに試験用紙を破られ、頭を蹴られて気絶した、あのとき――


「っ……」


 ――アイノが黙っていた理由が、クラティックにはなんの興味もないから、だったら?

 ――アイノがクラティックや私物や鞄などを運んできた理由が、別に興味はないが、でも他に運ぼうとする人がいなかったので仕方なくやったのだとしたら?


「っ、っ、……」


 今までたくさん笑い合って、言葉を交わし合って、話し合って、励まし合って、教え合って、向かい合って、見つめ合って、過ごし合ったアイノがいるのは事実。

 でも――あのとき、アイノが黙っていたのも、また事実。


「っ、っ、ぁ……」


 ――どの事実を考えればいいというのだ。

 ――どの事実を信じればいいというのだ。

 ――どの事実に向き合えばいいというのだ。


 クラティックはまだ小学一年生なのに、なぜここまでいろいろと考えなければいけないのだ。

 クラティックが何をした。何をやった。何をしてしまった。何をやってしまった。何をすることができた。

 一体、今までの何気ない日々で、そんなにたくさんのやってはならないことをしてしまったというのか。

 全体、それのせいでクラティックはこんなに嫌な思いをしなければならないのか。


「っ、ぁ、ぁ……!」


 ――クラティックには、味方がいないのだろうか。頼れる人が、信じられる人が、いないのだろうか。


 家族に取り合ったところで、どうにもならないのは目に見えてしまう。

 担任の先生も保健室の先生も、取り付く島もなかったから、校長に話してもおそらく無意味。


 例え父が魔法会社の社長だとしても、例え母が芸術的な人気作家だとしても。

 ――ランフィルノートは、大貴族の出身だ。

 魔法なんて世界にありふれているものの社長というのは、将来有望な大貴族の娘よりも、価値が高いものだろうか。

 絵や人形がとてつもない仕上がりだとしても、それは将来有望な大貴族の娘よりも、価値が高いものだろうか。


 ――否だ。否だ。否でしかない。


「っ、ぁぁ……!」


 本当に、嫌だ。


「っ、ぁぁ……!」


 嫌で嫌で嫌で、嫌でしかない。


「っ、ぁ、ぁ……!」


 嫌で、嫌で、嫌、で、い、や、で――


「……ぁ?」


 ――何が、嫌なんだ?


「――――」


 考えろ。クラティックは今、何が嫌なんだ?


 大勢に責めたり軽蔑されたり揶揄われたり悪口を言われたり嫌味を言われたりしたことが、嫌なのか?

 否。そんなことよりも、アイノに嫌われていたら、アイノに無関心対象とされていたら、の方が嫌だ。


「――――」


 ならば、それか?アイノに嫌われているのが、アイノに無関心対象とされているのが、嫌なのか?

 否。それは嫌、というよりも、不安だ。


「――――」


 ならば、なんだ。どうにもできないこの状況が嫌なのか?否、それはさすがに範囲が大きすぎる。


 家族に話してもどうにもならないことが嫌なのか?否、家族はいてくれるだけで少しでもない支えになるから、家族にどうにかしてもらう、という考えがそもそも嫌とかそういう話ではない。論外だ。


 とすると、クラスメイトたちが嫌?否、それならさっきも言った通り、アイノにどうのこうのの想像をされている方が嫌だ。


「――――」


 クラティックが求めているのは、おそらくはもっと概念的な部分なはず。

 例えば、学校、宿題、勉強、運動、試験、人間関係――否、それもまだ具体的だ。

 もっともっと抽象的、はっきりとしないが実在している概念。


「――――」


 だとしたら、もっともっと、深層の部分だろうか。

 世界、宇宙、海、大地、空、存在、生死、命など――


「――――」


 ――。

 ――生死?


「……ぁ、あ、はは」


 そうだ、なぜ思いつかなかったクラティック。


「生き、てる、こ、とが……」


 嫌、なのだ。生きていることが、嫌なのだ。


「あ、はは、あはは……」


 生きていることが嫌、というより死にたい、の方が正解に近いだろうか。まあそんなものはどうでもいい。

 ――今、死ねば、これからは何も考えなくていいのでは、なかろうか。


「あはは、あは、は、は……」


 ――クラティックは狂ったような笑みを浮かべながら、周りを見渡す。

 どうやら、目的も目標も決めず走って走って走り続けて、屋上へと到達したらしい。

 上を向けば太陽の光と、雲がない青い空が。横を向けば学校のすぐ近くに広がる王国の家々が。下を向けばなんの変哲もない、白い床が。


 なぜここで止まったのか。階段を駆け上がった記憶はないが、それほどまでに必死だったのか。

 そんなものはわからないが――とりあえず、今のクラティックには好都合だ。


「はは、ははは……」


 死ねばいい。そしたら、考えることも不安を持つことも嫌に思うことも、人間関係も家族関係も何もかも捨てられて、楽になる。

 なぜこの選択肢を最初から思いつかなかったのか、そんな自分を恨むほど、クラティックは死という選択肢を、信じていた。


「ああ……」


 そしてクラティックは、屋上の端まで歩く。死の残り時間を数えるかのように、ゆっくりとゆっくりと、歩く。

 これまた都合のいいことに、屋上は背の低い塀で囲まれている。

 屋上に来る人がそもそも少ない故か、それともまだ作り途中故かわからないが、クラティックはその事実に歓喜の笑みを浮かべる。


「ああ、やっと……」


 天が、クラティックに味方をしてくれているような感じだ。

 いつの間にか屋上に着いていて。屋上の塀は低くて、簡単に越えられるもので。死という選択肢を、見つけられて。そして、塀まで着いたクラティックは――


「これで、やっと、楽に」

「なれるわけないでしょ!!」


 ――塀を掴もうとした直後、その怒号とともにやってきた何かにより抱きつかれ、死ぬことはできなかった。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――。


「あ、え? なんで……」

「なんでとかじゃないわよ! とりあえず生きてることを喜びなさい、あんたは」


 クラティックは、誰だか知らないが、さっきやっと辿り着いた自分の考えを否定する意見に、さらなる否定を返そうと、その声のした方向を見て――


「……ぁ、ぇ?」


 ――見慣れた赤髪の少女の姿を、見た。


「何よ、あたくしじゃ不満があるって言うの?」

「ぁ、え、いや……」


 ――合っていない一人称と喋り方を、聞いた。赤髪の少女で、この声で、合っていない一人称と喋り方で。

 そんなの、間違いなく――


「アイ、ノ?」

「そうだけど」


 ――クラティックの、小学校で初めてできた友達、アイノ・ロイゼフォーチだった。


「な、んで、止めて……」

「そこは助けたって言いなさいよ」

「た、助け……?」


 ――なぜ彼女は、クラティックの死のうとした行為を止めた?

 ――なぜ彼女は、ここにいる?

 ――なぜ彼女は、クラティックに抱きついている?

 ――なぜ彼女は、助けた、などと言った?


「な、んで、た、助け、て……」

「なんでって……」


 クラティックの最大の疑問は、それだ。なぜ彼女は、クラティックを助けたのだ?

 アイノがクラティックを助ける価値も得も義務も義理も、ない。

 むしろ、ランフィルノートやその味方からどうのこうのと責められ、不利益を生む方が確率は高い。

 なのに、彼女はなぜ――


「友達を助けることの、何がおかしいのよ?」

「―――」


 ――。

 ――――。

 ――――――。

 ――――――――友達。


「てか、死んで楽になんてなれるわけないでしょ? 死んだら終わりよ終わり、そこで人生が終了。あたくしは、お母様からずっとそう言われて育ってきたの。だから死、しかも友達の死なんて、見たら止めるわよ」

「――――」


 固まっているクラティックを他所に、アイノは常識と言わんばかりに、教育と言わんばかりに、言葉を紡ぎ続ける。

 だが、クラティックのその内容は半分どころか全部何一つ入ってこない。だって、だってだって――


「……友、達……」

「そう、あんたは友達。……言っちゃなんだけど、あたくし、結構あんたのこと好きなのよね、うん。だから、まあ、その、ね、と、友達以上、こ、こ、恋人以下みたいな……」

「……友達、以上?」


 ――友達と、言われたからだ。

 クラティックの脳は、未だに今の状況に追いついていない。

 だが、人間の脳は、遅くても長くても、いずれかはその状況の、自分から見れる聞ける感じれる全てを把握する。だから――


「ぁ、ぅ……」


 ――涙が、出てきたのだ。

 昨日(過去)、もう嫌だと何もかもを拒絶し、泣き続けた悲し涙ではなく。

 今日(現在)、信じていた人に、自分も友達だと思っていた人に友達だと認めてもらった、嬉し涙。


「ア、イノ、ちゃん……」

「何……ってなんで泣いてるの!? あ、え、その、あたくしと友達嫌だった……?」

「そんなわけない!」

「ほわっ!?」


 急にクラティックが泣き出してあわあわと焦っているアイノを、クラティックは無理矢理押し返し、押し倒す。

 そして、なぜか頬が赤くなっているアイノを至近距離で見つめて、言う。


「アイノちゃん、大好き!」


 直後、アイノの頬がもっと、赤くなった。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――クラティック・ウォンスターは小卒だ。


 その後、生気を取り戻したクラティックだが、だからと言ってクラスメイトの態度が変わるわけではない。

 そしてまた、生気を取り戻したクラティックだが、学校での記憶による恐怖が完全に消えるわけでもない。

 故に、クラティックは家族に事情を話し、担任の先生に退学届けを出し、小学校を退学した。転校もせず、退学をした。


 一応、勉強や運動などは、家庭教育により一通りは覚えた。

 アイノからこれ読んどきなさい言われた何冊かの本を読んだり、魔法研究会者を務めているが故、頭のいい父親に勉強を教わったりして、だ。

 だがやはり、家庭教育というのは難しい。

 勉強運動両方の才能があったクラティックは、覚えは速かったが開花はせず、平均の学力や運動神経を持つ人となった。

 ――勉強や運動などがあまり関係のない仕事に入ったのは、そのためだ。


 ちなみに余談だが、妹二人はそれぞれ、クラティックが通っていた学校とは違う学校へと通った。

 故に、二人はおそらく、今もどこかで立派な職についていると思うが――まあ、それは余談だ。


 本を読んで、家族と雑談をしたり食事を食べたりして、たまにアイノや妹たちと遊んで過ごしていたからこそ、賑やかな場所よりも静かな場所が好きなのだ。

 ――静かな場所が好きになったのは、そのためだ。


 後は、人と話すのが苦手になった理由、ということについてだが――これを深く言うのは野暮だろう。

 勉強や運動などがあまり関係のない仕事、そして人と話すことが少なく静かな場所での仕事――それとアイノから貰った本をたくさん読んでいた故、本屋になった。


 だが、だからこそ、人と話すのが苦手で、でも友達という存在自体は好きなクラティックは――


「私と、友達になってくれませんか?」


 ――メリアのその提案には、どこか魅力を感じたのだった。





 やっと書き終わった三人の名前回。疲れた。


 これ予約投稿だから、合わせて六日やんかって思うかもだけど、実際は一ヶ月近くこの三人の名前回で過ぎてるからね?


 はい、読んでくれてありがとうございました! また読んでね〜。



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