第二章二十六話 「仲間」
―――では、前回の最後の光景をダイジェストで送ろう。
「我が名は『星誓』のモモン・プロローム! ルーディナ・デウエクス様率いる、『星姫の後追い』を、ルナ様の代わりに統べしもの! 我が星への誓いは、永遠に尽きることあらず!」
腕を組みながら、その可愛い表情を自慢の色に染め、二つ名と組織名を名乗るモモン。
そしてさらに、ルーディナが渡した、『お試し☆これであなたも神女になれる服装』。
萌え袖というほど腕の袖が長く、左肩の方だけがセクシーにはだけていて、白と金が混ざったまさに神女と言わんばかりの服装ーーこれの秘密機能により、背中からは天使を思わせる、白い翼のレプリカが生えている。
その天使を、聖女を、神女を思わせる姿は、まさに星に誓う、『星誓』だ。
――と、ルーディナの、モモンへの感想会は終わりにしよう。
もちろんのこと、モモンのその台詞、二つ名、組織名、それらを聞いてルーディナは――
「ちょっと何言ってるかわかんない」
――と、突っ込まずにはいられなかった。
△▼△▼△▼△▼△
「――――」
それが、前回までのあらすじ、というやつである。
そして今、モモンに対する、ルーディナの突っ込みのせいか――この場は、沈黙に包まれていた。
モモンは時が止まったように、自慢げな顔と腕組みの状態のまま、固まっている。
そして、ルーディナとモモンを囲む、周りのルーディナを愛するものたちも、時が止まったように固まっている。
自慢げな顔、尊敬を感じているであろう顔、満面の笑みの顔など、さまざまな表情の種類がある故、いろいろとカオスだが。
「……あの、私、なんか失礼なこと言っちゃった?」
「――――」
「おーい? ね、聞いてる?」
「――――」
「モモ〜? モモン〜? モモンちゃん〜?」
「――――」
「……よし、仕方ないか」
その沈黙の空気にルーディナもさすがに耐えられなくなり、目の前で立ち尽くしているモモンにいろいろと呼びかけるが――未だに固まったまま。
声をかけても、あだ名で呼んでも、名前で呼んでも、ちゃんづけで呼んでも、モモンも、ついでに周りのものたちも、誰一人として動かない。
故に、ルーディナは、やむを得ずと思いながら立ち上がり――
「……それ」
――硬直しているモモンの胸の先端を、摘み上げた。
「ぴゃぁっ!?」
「お、戻った戻った。おーいモモ〜? ルナ様だよー、意識ある?」
「ふぁ、ふぁひ!? にゃ、にゃにゃ!? りゅにゃしゃ、い、いみゃにゃにゃにゃ!?」
「いや噛みすぎだから」
と、ルーディナの摘み上げにより、モモンは硬直状態が解除され――今度は、顔を真っ赤にして手足をばたつかせるという、慌てん坊状態へと変わった。
プラスアルファで言っていることのほとんどを噛んでいるという、ものすごい慌てっぷりつき。
その様子に、ルーディナは素直に可愛いとも思ったが――さすがに噛みすぎだとも思い、突っ込みを入れた。
「はい、少し落ち着いて落ち着いて。深呼吸、深呼吸」
「ふぁ、ふぁふぁ……って、そうじゃないです!」
その、慌てん坊ぶりは実に可愛いが、止めてもらわないと話が進まないため、ルーディナは落ち着かせるように深呼吸させるように、言葉を溢す。
そして前者で気づき後者で落ち着いたのか――呼吸も状態も取り戻したモモンは、ルーディナの肩を掴みながら叫びに似た声で、言う。
「ちょっと何言ってるかわかんないって、どういうことですか!?」
「どうも何もそのままの意味だけど」
「組織名決めようってルナ様が言ったから、私は提案したんです!」
「ふーん」
「なんですかぁ、その反応!」
どうやらモモンの先程の自己紹介は、ルーディナの組織名を決める、というものについての提案をしていたものだったらしい。
確かに組織名も言ってはいたが、よくわからない言葉遣いと二つ名の方が印象強く、ルーディナの頭には入ってこなかった。
そして、その組織名の提案に、かなりの自信を持っていたのか――ルーディナの素っ気ない返事を受けたモモンは身に感じる羞恥を耐えるように、腕を組みながら、頬を赤に染め膨らませている。
「可愛いなぁ、相変わらず……」
「話を逸らさないでください」
「ん、ごめんて。……と、いうよりさ」
「はい?」
「星姫の後追いって何?」
と、ルーディナはそのモモンの可愛らしいポーズに見惚れていたわけだが、モモンに注意を入れられてしまった。
それで脱線しかけた話を元に戻し、ルーディナは質問する。それに対し、モモンは――
「ふぇ? どうも何も、そのままの意味ですけど」
あっけらかんと、何を言っているんだこいつ的な意図が籠っていそうな声で、返答をした。
「……由来は?」
「ルナ様は可愛いので姫です。私を救ってくれた星です。私たちはその後に続くものです。星姫の後追いです。……これだけですけど?」
「それだけなの!?」
「これだけですよ?」
ルーディナはその余りにも単純で単調がすぎる理由に、驚愕の反応をする。
ネーミングセンスがない、というわけではないが、コードネームやペンネームなどの匿名を決めるなら、それを永遠と使い続ける覚悟をしてほしいものだ。
「……ルナ様、何か不安なんですか?」
「何もかもが不安だけど……星姫?」
「はい、星姫です」
「モモン、いい? こういう組織名とかコードネームやらペンネームやら……そういう匿名はね、永遠と使い続ける覚悟をしてから決めるものなんだよ?」
「はい、存じております」
「……なんで星姫なの?」
「さっきも言いましたよね?」
「いやもっと、こう具体的なりゆ」
「聞きたいですか!?」
「お、おお……ま、まあ、うん」
どうやら、覚悟は決めているらしい。
だが、どうも納得できなかったので、具体的な理由を求めようとしたが――モモンの興奮したようにルーディナに顔を近づけさせながらの食い気味な答えに、思わず少し引いてしまった。
しかし、具体的な理由に興味がないかと言われれば嘘になるので、一応念のため聞いてみたが――
「まず、星から行きましょう! これは説明するまでもなく、ルナ様が私にとっての星だからです。奴隷の身になって、もはや現実も見たくない、過去も思い出したくない、未来も想像したくないと、そんな絶望を感じていた私に……希望を、与えてくれました。優しい声で、声をかけてくれました。同情を、してくれました。似た者同士と、評してくれました。そしてその後も、私に暗い思いをさせないため、暗い雰囲気を生み出さないため、ずっと、明るく振る舞ってくれました。そして先程も、私たち奴隷という身分にも関わらず、ルナ様の負担が増えるにも関わらず、ルナ様は私たちを配下としてくれた。愛すると断言してくれた。離さないと約束してくれた。そして、今、私たちのために服を持ってきてくれて、一人一人にしっかりと似合うのを選んでくれて、拠点探しを提案してくれて、そして何より、ルナ様は、私たちを奴隷と見たくないから、組織名を決めようとしてくれてます。私たちの身分は、未だに奴隷。どんなことを頼んでも問題なく、どんなものを振る舞っても問題なく、どんな要求をしても問題ありません。それなのに、ルナ様が一番最初に私たちにした要求が、奴隷と見たくないから、呼びたくないから、新たな組織名を決めよう、というものです。私たちは何もしてないのに、特に恩を返せるわけでもないのに……ルナ様は、そんな役立たずな私たちを救ってくれたんです! 生きる価値を与えてくれたんです! 生きる希望を、生きる理由を、生きる愛を、生きる意味を! ルナ様は、ルーディナ・デウエクス様は、与えてくれたんです!! だから、星と呼ぶことには、なんの変哲も不可思議もありません!! いや、もはや世界から定められた法則、秩序、原理!! むしろ、これを否定した方が少数派の偏見的な意見と言えるほど、世界が望んだ、運命の邂逅!! 天使の微笑みが、女神の慈愛が、世界の大器が、ルナ様の優しさに、暖かさに、純潔さに、天才さに、祝福を与えているのです!! ルナ様を、星と呼ぶこと……それは、当然の常識であって、誰も覆すことのできない真実なのです!!!」
「わ、わか、わかったから!! わかったから、もういいから! 馬鹿っ、この馬鹿っ!」
――返ってきたのは、モモンがどれだけルーディナを愛しているか、聞いただけでわかるものすごい長文であった。
その予想を容易く超えるモモンの過大評価に、ルーディナは思わず赤面して、照れ隠しで罵声を浴びさせてしまった。
ルーディナはこう言った直球の愛は、受け“させる”側はいいが受け“られる”側は苦手なのである。
もちろんその愛自体は嬉しいし、喜ばしいし、愛おしいし、無意識に口角が上がるほど幸福感を覚えるのだが――
「……恥ずかしいもん」
「い、意外です。ルナ様は、こういうの聞いたら性的に襲いかかってくるものとばかり……」
「私のことなんだと思ってんの!?」
――どの感情よりも、恥ずかしさが勝つのだ。
嬉しいけど、恥ずかしい。喜ばしいけど、恥ずかしい。愛おしいけど、恥ずかしい。幸福感を覚えるけど、恥ずかしい。
だが、恥ずかしいと言っても――やはり、嬉しいことには変わりない。
「……ふぅ」
「――――」
「……何?」
「いえ、恥ずかしがるルナ様は貴重なので」
「……なんか、負けた気分なんだけど」
なんだか負けた気分になったルーディナは、まだ少し恥ずかしさが残っているのか、敗北感がするが故なのか、強引に話題を変える。
「で、貴重な私とかどうでもいいから、組織名……はいいとしてだけど、あの、さっきの二つ名は何?」
「私はルナ様一筋なので。それを示すための、『星誓』です」
「……?」
「ルナ様には伝わらないですか……ならば、総戦力で伝えるまで! さあ皆さん、おいでなさい!」
「……??」
組織名は『星姫の後追い』、――姫と表されるのは少し恥ずかしいが――これでひとまず決定としておこう。
そして、次にルーディナが疑問に思ったのは、よくわからない言葉遣いと二つ名だ。故にルーディナは質問する。
するとモモンはそれをどう見たのか、いきなり伝えるやら総戦力やらと言い出して――先程から二人のやり取りを眺めているだけの観戦状態になっていた周りのものたちを、呼び出す。
そして彼ら彼女らは出番が来たと言わんばかりの自信満々な表情をし、ルーディナの前、モモンの側へと集まっていく。
「ではルナ様、とくとご覧あれです!」
「あ、はい、どうも」
未だに何がどうなっているのかの理解が追いついていないルーディナの前に、モモンの呼びかけにより、二人の男女――カーヴィスとティアラナが出てくる。
灰色の髪のカーヴィスは、ルーディナが服屋ではなく装備屋で仕入れてきた、中央に十字架のマークが描かれている漆黒の鎧を着ている。
そして外側は暗黒、内側は紅の、魔法陣の模様がたくさん描かれたマントを羽織っており、とてつもない重量感溢れる姿を連想させる。
水色の髪のティアラナは、その長い水色の髪をポニーテールでまとめている。
そして両肩が出ている白色の服、そして下半身の右足側は青色のスカート、左足側は黒色のズボンという、かなり特殊な洒落た格好をしている。
その二人の美貌を、服装を、ルーディナはしっかりと目に収めながら――
「余の名は『灰塵』、カーヴィス・ジオディラー。光に隠れた影が渦巻くこの世の中に、真なる影として、光を齎すものなり。余の永遠なる忠誠は、ルナ様のものである!」
「わたくしの名は、『聖天』ティアラナ・スーフィパーレ。聖なる地へ導きし、天を統べし救世主。ルナ様へ、純愛も、寵愛も、慈愛も、友愛も、親愛も、性愛も、敬愛も、慶愛も、何もかも、捧げるものですわ」
――二人の意味のわからない自己紹介を、今度は目ではなく、耳に収めた。
なぜこの二人は一人称も喋り方も、前のときから変わっているのだろうか。
「……あの、モモ、何こ」
「まだ伝わらないみたいですね! ならば、今度は優秀チルドレンに来てもらいましょう!」
「れ……って、何それ」
もはや理解することすら蚊帳の外なルーディナは、若干明日の方を見ながら、モモンの新たな戦力増加のお知らせを聞く。
優秀チルドレン――言わずもがな、優秀な子供たちであろう。
「――――」
と、そこで、ルーディナに伝わらなかったのが原因か、残念そうな表情をして去っていったカーヴィスとティアラナと交代で、四人の子供がやってきた。
その四人の子供たち、ルーディナはどこかで見覚えがあるなと思い――ルーディナが初めてモモンに会ったとき、彼女と一緒の檻にいた四人の子供たちだと、気がついた。
その四人も絶望に染まっていた頃とは大きく違い、全員が全員、何やら自慢げな表情を浮かべている。
「――――」
まず一人目。赤髪に、ルーディナより少し大きい身長の男の子。
冒険者のような、ボロボロの茶色のマントを羽織り、膝小僧の部分が破れているズボンを履き、無駄に重厚そうな鋼鉄でできた鎧を着ている。
「――――」
そして二人目。青と緑が混ざったような髪に、ルーディナを容易く超える高身長の男の子。
縁が紫色の眼鏡をつけ、学生のような制服を身に纏い、左腕に黒鉄でできた義手のようなものをつけ、偉そうに腕を組んでいる。
「――――」
そしてそして三人目。黄髪に、ルーディナより少し小さい身長の女の子。
腰まで伸びる黄髪はもはや金と言えるのではないかというぐらい輝いていて、その女の子が着ている白色の紳士服のようなものが、その女の子の魅力をさらに輝かせている。
「――――」
最後、四人目。茶髪に、ルーディナや二人目の男の子を最も容易く超えるほどの高身長、そしてガタイのいい男の子。
もはやそれは男の子と評していいのかわからない体格であるが――その顔つきと表情は子供らしく、着ている柔道服のようなものとはとてもマッチしていない。
「――――」
その四人の子供たちを見て、ルーディナはワンチャンあるかもしれないと、可能性に希望を持った。
その、あるかもしれないとは――この純粋そうな子供四人が、モモンたちとは違う自己紹介をしてくれる可能性だ。
この四人――おそらく、年的には十歳から十三歳ほどなはず。
その四人の子供たちが、ルーディナを持ってしても理解が追いつかない謎に追いつける可能性は低いと、ルーディナは思った。
それが故に、ルーディナは最後の可能性に賭け、期待の眼差しで四人を見つめる。
「俺の名は『勇気』のレイド・ラキルティオ! 赤く燃える炎を、茶色に蠢く土を、支配する一人の勇者なり! ルナ様、どうか俺を弟子にしてください!!」
「待て! ルナ様、僕の名は『知恵』のザーファル・グラヴェイル。この世にあり尽くす知恵を、知識を、知力を支配しもの。弟子にするなら、どうか僕に!!」
「自分の身を弁えなさい、あんたら。ルナ様、私は『治癒』のリファス・カプラセル。生きとし生けるもの、死して霊となりしもの、例外なく慈愛の波動で癒すもの。弟子にするなら、私しかいません」
「どけどけ、てめーら。てめーらみたいなヘナチョコを、ルナ様が選ぶわけねーだろーが。ルナ様、俺は『堅牢』、ティーン・スタルケージ。全ての矛を受け止めっ盾として、破壊も地獄も例外なく、滅してみせます。弟子にすっなら、こんなヘナチョコ共よりも、俺しかいねーです」
「はっ、いいかお前ら、こういうのは早い者勝ちっつぅんだよ。俺が弟子入り希望して、その後にノコノコと弟子にするなら弟子にするならって、お前ら手遅れなんだよ」
「何を言ってるか、貴様。ルナ様が、早い者勝ちだけで選ぶ人だと思ってるのか? それはとても愚かな発想だ。僕は、早い者勝ちでも技能でも力でもなく、ルナ様は知力で人を選ぶと思っている。賢いものが近くにいる方が、ルナ様も安心されるだろうからな」
「あんたら二人揃って、馬鹿じゃないの? 早い者勝ちなんて子供の発想だし、賢い人ならルナ様で十分足りるわよ。ここはやっぱり、補助役として治癒術師でしょ? ルナ様は一人でも十分強いし十分賢いけど、治癒魔法は使えないって聞くわ。だったら、私を選ぶのは間違いないわよ」
「てめーらは、そんな程度の低ぇ発想しか出ねーのか? いいか、早い者勝ちなんつーの、今じゃ時代遅れだ。子供の発想がすぎんだよ。賢ぇっつーのもルナ様で足りてっし、強いやつに治癒なんぞいらんだろーが。だったら強さを二倍にして、ついでに盾もできっやつってのが一番いいに決まってっだろ」
「あ? 何言ってんの? ルナ様は強いし賢いから、治癒も守りもいらないんだよ。だから、決めるとしたら早い者勝ちしかないだろ?」
「その考えが愚かだと言ってる。治癒も守りも何もいらないのなら、そんなくだらん方法ではなく、総合力で決めるのではないか? ならば、僕の賢さは強さも力も技も治癒も守りも、全てを超えるほどの圧倒的天才だ。選ぶなら僕しかいない」
「自信過剰が過ぎるわよ。あんた、聞いたことないの? 頭いい人は自分のこと頭いいなんて評さないわ。つまりあんたは馬鹿ってことよ。それと、ルナ様は強いし賢いけど、人間なら誰だって間違えるときぐらいあるわ。だったらそのときの保険として、治癒は必要じゃない?」
「はっ、てめーら揃いに揃って常識がねーな。治癒魔法なんか詠唱してっ間に、相手がさらに畳み掛けてきたらどーすんだよ。そのときの守りが必要だろーが」
「やっぱ、お前ら何も分かってない!」
「わかってないのは貴様だろう? 僕がこの中だと一番正しい!」
「ふん、男ってのは馬鹿ばっかね。私が一番正しいに決まってるでしょ?」
「ああ? てめーら、少しは脳を動かせよ。俺の言ってっことが、一番正しーだろーが」
「いや違う、俺が!」
「僕だ!」
「何言ってんの、私よ!」
「違ぇよ、俺しかねー!」
「「「「ルナ様は誰を選びますか!?」」」」
なんてことだろうか。先程のカーヴィスやティアラナよりも、救えない状況になっている可能性が高かった。
いや確かに、カーヴィスやティアラナよりも、自己紹介は一段階遅れているような、そんな風を感じ取れた。
二つ名も単純なものであったし、言葉遣いも子供らしいし、そういうところでは確かに、カーヴィスやティアラナよりも手遅れではない。
――だが、問題はその後である。
「――――」
弟子がどうだの、自分が正しいがどうだの、ルーディナは特に気にしていない。
だが問題なのは、周りの唖然としている後追い(星姫の後追い、そこから取って後追い)たちや、同じく唖然としているルーディナを蚊帳の外にして、永遠に話し続ける議論だ。
お互いライバル意識が強いのか――相手の否定、相手の拒否、己の肯定、己の賛成。そして挙げ句の果てに、ルーディナに判断を委ねる。
それは、いくら相手が愛しているものだとは言え――ルーディナにとって、迷惑である。可愛らしい、とも取れなくはないが。
「……ええと」
「「「「はい!!」」」」
「……あ、いや、もう、好きにして」
「「「「感謝します!!!」」」」
それでルーディナは今日何回目かわからない突っ込み、もしくは拒否をしようと思ったのだが――なんだか、そんなこともどうでもいいぐらい疲れた。
故にルーディナは、とりあえず子供四人たちには好きにさせた。
「……ね、モモン」
「はい、なんですか?」
「組織名、決めてくれてありがとね。二つ名も、すごくいいと思う。言葉遣いは皆んなに戻してって伝えて」
「い、いえ、そんな……わ、私はただ、ルナ様にカッコつけたかっただけで……でも、ルナ様が気に入ってくれたなら、私は嬉しいです! 言葉遣いの件に関しては、戻してと伝えますね」
「ん、たのんだ」
そしてルーディナはモモンの方を振り向き、短めの感謝と依頼を、棒読みで言う。
そのルーディナの明らかに冷たいがでも少しだけ相手を気遣っている態度に――モモンは何をどう思ったのか、震えて声で、恐れ多そうに言葉を放っていた。
だがとりあえず言葉遣いの件はどうにかしてもらえそうで良かったと、ルーディナは思う。
「あ、拠点どうする」
「拠点ですか? ……ここがいいです!」
「でもここ、モモたちにとっては憎き場所なのでは」
「確かにそうかもですけど……でも、暗い地下の中に潜むって、なんだかとてもカッコ良くないですか? それと、少しこの中を改装、とかもしてみたいです!」
「おお、それはかっこいい。じゃあここでいいか」
「はい、何から何まで、ありがとうございます!」
誰が聞いても気づくような棒読みであるが、モモンは特段気にもせず、ルーディナに感謝を述べ、好意は上がるのみである。
そのまま地べたに寝転ぼうか、とルーディナは思ったが――ルーディナの本能は先程から訴え続けている。――モモンの胸の中に飛び込め、と。
「モモ」
「はい? なん……わっ!?」
そしてルーディナは、棒読みからの無機質な声でモモンの名を呼び、その影響で振り返ってきたモモンの胸の中に、飛び込む。
すると、その場所の居心地がいいのか、どんどん眠気が増してきた。
そのとき、ルーディナに好きにしろと言われて、喜んでいる四人の子供たち。ルーディナに認めてもらうためか伝えるためか、何か言い合っているカーヴィスとティアラナ。――他にも何か騒いでいる後追いたちを見て、ルーディナは思った。
「……ふふ」
皆んながこうもいろいろと変わっているのは、ルーディナに気に入られたい故だからか、と。
長い、長いね、長いよ、長いさ、長いとも、長いかも、長いだろう、長いだろうさ、長いだろうから、長すぎるから、長くて長すぎて長いがすぎるからこそッ! 暴飲ッ! 暴食ッ!
というわけで、なんか長くなりました。
あ、PrincessとかAldebaranとかchildrenとか、いやあんたそれこの世界に存在するんすか的な言葉は、全部魔法名からとってきたやつです。
例えば、水撃光線あるじゃないですか。
それ、ウォーターが水撃という意味、レーザーが光線という意味、ってわかりますよね。
そうこの世界、水撃とこの世界の文字で書いて、普通はすいげきって読むけど、魔法のときだとウォーターって読む、みたいな感じなので、まあそんな感じなんすよ。
で、プリンセスもアルデバランもチルドレンも、そんな感じで姫、後追い、子供で魔法名があるんですよ。
子供増殖とか、後追いを殺すものとか。
そんな感じなので、英語でルビ振れたんだよーって話です。
この世界にストレスとかライバルとか、そう言った英語ないんでね。ストレスは心的負担、ライバルは好敵手だったり。
あーちなみに何人か気づいている方いるかもなんすけど、<side>と<視点>の使い分け。
これが意味してんのは、sideは英語=英語知ってる=日本のこと知ってるっつぅ合図です。
語り手(僕)は言わずもがな、魔界王陣営は世界移動できる故に日本のこと知ってますし、それ影響でクローディナとレイヴィンも知ってる、てな感じです。
とりあえず<視点>ではなく<side>が使われてんなら、それはつまり日本のこと知ってる、って解釈でOK。
はい、超細かい説明でした。
あーあと、モモンのルーディナ溺愛文あるやん。ルーディナのことなんで星姫と呼ぶかの説明のやつね。
あれ872文字なんだけど、この物語じゃその文字数少ない方なんすよ〜。
最終章で2400文字、2900文字、3500文字、10000文字が出てくるから、楽しみに待っててね!
というわけで、今回も読んでくれてありがとうございます!! では、さらばだ。




