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第二章二十一話 「行動」




作戦内容1<ルーディナ・デウエクス用>

・地下の奴隷監禁所には何があるかわからないので、『閃光の勇者』ルーディナ・デウエクスのみで行くこと。

・可能ならば奴隷全員を救出、及び現状説明をすること。

・国王処刑裁判にて出場する代表、複数人の取り巻きを決めること。

・その代表、複数人の取り巻きの服装を、高価そうなものに整えること。


              △▼△▼△▼△▼△


 ――モモン・プロロームと名乗った、金と桃が混ざったような髪をした妖艶な体つきの美人に、自分の鎧についているマントを着せながら、ルーディナは作戦内容について思い出していた。

 作戦内容は簡略化すると――奴隷全員を救出し、国王の罪を明言するため、代表と取り巻きを決めるというものだ。


「……よし」

「ぁ、ぇと、ぁ……」


 そしてルーディナは、代表をモモンにすると、既に決めていた。

 彼女は見た目も可愛いし美しいので、これが国王の性奴隷です的なことでも言えば、周りからは真実と思われやすいであろう。


 ――それにルーディナは、モモンのことを気に入っている。

 モモンの絶望を完全ではないが理解できなくもないし、見た目も可愛く美しい。

 そしてルーディナがマントを着させ、それに対するお礼をすぐ言えない、といった恥じらしさがあるところも――実に、可愛い。


「ん、大丈夫だよお礼は。私がしたくてやってるんだから。ね?」

「ぁ……はい」

「お、よく返事ができました〜。偉いね偉いね〜」

「ん……」


 未だに他人と話すことに慣れていないのか、モモンはお礼の一つも咄嗟にできず、返事一つで精一杯――まあ、そう言ったところが可愛いのだが。

 モモンの返事一つ、それも声を振り絞って出したものだろうとルーディナは理解し、赤ん坊を甘やかすような声色と、プラスアルファで頭を撫でる。

 すると――甘える子猫のようにその手を求め、しかしどこか羞恥も感じるのか若干頬を染めながら、モモンはルーディナに甘える。


「かっわぁいい!!」

「はぅ!?」


 ご存知の通り、ルーディナは可愛い人物が大好きな性格である。

 メリア然り、ザシャーノン然り、ついでにレンプレイソン然り、自分の身の回りにいる美少女、美女たちは全て、自分のものにしたいと企むほどだ。

 レンプレイソンには全くと言っていいほど手を出せなかったが、今後また会うとき――いつになるかはわからないが、そのときは逃すつもりはない。


 それと同様で、可愛くルーディナに甘えるモモンを見ると、こうグッとくるものがあり、ついつい抱きしめてしまうのも仕方がない話なのだ。


「モモンちゃん、本当に可愛いなぁ……」

「ぁ……ん……」

「ん〜?」


 あまりの可愛さに抱きついてしまったが、モモンはルーディナの抱擁に、大して嫌悪感を感じていなさそう――どころか、やはり甘えてくる。

 その仕草も甘えてくる声色も、ルーディナは自分の妹みたいに感じ――そこで、ふと疑問が出てきた。


「……モモンちゃんって何歳なの?」

「ぇ……じゅぅ、きゅぅ……」

「十九歳?」

「ぅん……」

「……モモンお姉様?」


 妹みたいに感じたが故、ルーディナよりも年下かと勝手に思っていたが――まさかの、モモンお姉様であった。

 ルーディナは十六歳、そしてモモンは十九歳――三歳差の、甘えん坊なお姉様である。


「とりあえず、これからモモ姉って呼んでいい?」

「――――」

「……モモでいい?」

「ん」

「おっふ、可愛い……」


 とりあえずモモンの呼び方が決まり、ついでにモモンにも寒く感じないように、肌が露出しないように、マントを着させた。となると、次は――


「――この子供たちと、他の奴隷たち、か」


 ――モモンの同じ檻の中にいる四人の子供たちと、それ以外の檻――ルーディナがちょっと見ただけでも二十個以上はある檻の中にいる、奴隷たちの救出。

 ついでに全員がやはり裸なので、服を着させなければならないが――ルーディナのマント以外、着させるものはここにはない。


「……どうしよ」


 ――さて、どうしたものか。

 服はない。しかし皆、裸。

 救出せねばならない。しかし、いろいろと面倒臭い道のりがあったこの監禁所を、奴隷たちが抜け出せるとは思えない。

 モモンを代表にし、他の取り巻きも決めねばならない。しかし、モモンは今の通り返事をするだけで精一杯だし、取り巻きは誰にすればいいのか決まらない。


 服がなく、抜け出せるか不明で、代表も取り巻きも少し不安。ならば――


「それ全部を、達成できるように……よし」


 ――全部を達成できる、一石二鳥ならぬ一石三鳥――その作戦を、考えるべき。

 そしてさすがは『閃光の勇者』の閃光通り、頭の回転が速いルーディナ。――作戦を、思いついた。


「ね、モモ」

「ん……」

「私が帰ってくるまでに、皆んなのこと安心させてられる?」

「……ん?」


 ルーディナが、この監禁所から直球で地上に登れる道を作れば、奴隷全員の救出が可能になる。

 そしてルーディナがいないその間、モモンが皆んなをまとめていれば、モモンのリーダーシップ能力が上がる。

 それにルーディナが帰ってきたとき、モモンの周りで他の誰かも手伝っていたり、モモンの指示にすぐ動いたりと、そう言った優秀なものを集めれば、取り巻きの確保も可能。


「できる?」

「……ん!」

「……ありがとね」


 そのルーディナの作戦に、モモンは快く、そしてやる気満々で答えてくれた。ならば、奴隷たちについては、モモンに任せればなんとかなる。

 故に――


「じゃ、モモン、頼んだよ?」

「ん!」

「よし……道、作りますかぁ」


 ――残りの作業は、安全かつ登りやすい地上への道を作ること。

 設計図の作成、横幅縦幅の計算、時間速度距離の問題、X座標やらY座標やらなど――ルーディナの、得意分野ばっかりの仕事だ。


「うーんと……まあここら辺でいいかな」


 と、そう言いながらルーディナが訪れた場所は、奴隷監禁所の一番奥の、何もない壁である。

 地上への階段などを作るには、何も障害のない壁や、弄られていない場所などが最適なのだ。

 この壁に上の地上に何があるか、ルーディナにはわからない――ことはないのだ。


地図(マップ)


 ――勇者のみの特殊能力、地図(マップ)。これは一体どういうものか――簡単に説明すると、生物なしでの地形がわかる、というものである。

 それはもちろん、今いる位置と平行にある場面もわかるし、今いる場所からの地上も地下も天空も海上も、わかる。


「……うん、大丈夫そう」


 それで、ルーディナの頭の中に浮かび上がってきた地上の画像は――ただの、なんの変哲もない森林。

 ここは、第一巨大王国ノヴァディースから少し離れているため、おそらくその近くにある森林なのだろう。

 王国が近い故、周りの森林や池などは整備がきちんとされている。ならば、なんの問題もない。


「よし、次は……作成(クリエイト)


 そしてここからは、地形を意のままに変えられる勇者のみの特殊能力――作成(クリエイト)での、慎重かつ集中してやらねばならない作業である。


 ――制限時間(タイムリミット)、残り三日。




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