151. 課金ショップ(後)
昨日も大変失礼を致しました。
どうにも週末の投稿が安定しませんもので……。申し訳ありませんが当面の間、本作は週5~7投稿と思って頂けますと幸いです。
「わあ……! シズお姉さま凄い!」
福引器を延々と回し続けるシズを、すぐ隣で見つめながら。まるで自分のことのように、手放しで喜んでみせるユーリ。
回し始めてすぐに金色に輝く玉が1つ出たからだ。言うまでもなく、これは最もレアリティが高い『A賞』が当たったことを示すものになる。
更には程なく銀色に輝く玉―――『B賞』も1つ当たる。またそれらの玉と一緒に、銅色に輝く『C賞』も幾つか当たっていた。
ユーリの話によると、ガチャの排出確率は公式サイトに記載されているらしく、A賞が『0.3%』でB賞は『0.7%』、C賞でも『1.5%』しか無いらしい。
なので輝きを帯びる金・銀・銅の3色の玉は、かなり出にくくなっている。特に金色は、110回のガチャ程度ではそう簡単には出ないらしいのだけれど。
「あ、2つ目が出た」
「……! 流石ですわ、シズお姉さま!」
70個目ぐらいで再び金色の玉が排出され、ユーリが更に喜色を加速させる。
カウンターの対面側で見守ってくれている、ショップの店員さんも随分と驚いている様子だから。これだけレアが出るのは珍しいことなんだろう。
《やべえ》
《当たり玉が出すぎなんですけど!?》
《流石は天使ちゃん、神に愛されておられる……!》
《皆様、どうぞ御覧ください。これがリアルラックの格差社会です》
《110回やって銅1個しか出なかった俺を罵ってくれ天使ちゃん!》
《天使ちゃんに「お前の運ざーこざーこ♥」って馬鹿にされたい》
《わかる。超わかる》
同時に『配信』でその様子を見ていた、視聴者の人達も俄に騒がしくなる。
っていうか、馬鹿にされたいって何なの……。
―――110回分のガチャを回し終えて。
最終的に当たったのは『A賞』と『B賞』が2つずつと、『C賞』が5つ。
それから『D賞』を示す水色の玉が8つに『E賞』を示す薄桃色の玉が25個、残りは明らかにハズレと判る白玉が68個だ。
非常に良い結果だけれど……。特に欲しい商品があってガチャを回していたわけでは無いものだから、どう喜んで良いかシズは少しだけ困惑する。
とはいえ、こういうのは『コレが欲しい!』というものがあると、却って当たらなくなるとも聞いたことがあるから。それが本当なら、無心でガチャを行えたことが良い結果を招いたのかもしれなかった。
(確か―――『物欲センサー』って言うんだっけ?)
以前『リリシア・サロン』でラギが、そんなことを話していたのを覚えている。
もちろん、欲を抱いたら当たりにくくなるなんて。そんなのは眉唾物のオカルトだろうとも思うけれど。
「おめでとうございます! 凄いですね、金が複数出たのは初めて見ました!」
「あ、ありがとうございます」
ショップの店員さんから掛けられた率直な賞賛の言葉に、シズが少しだけ照れていると。
カウンターの下側からパンフレットのようなものを2枚取り出して、店員さんはシズのほうへそれを手渡してきた。
「A賞とB賞に関しましては、それぞれ現在の景品ラインナップから当選した数と同じだけ、好きな商品をお選び頂くことができます。
どの景品になさいますかは、事前に決めておられますでしょうか?」
「あ、いえ。すみません、まだです」
「それでは、そちらの用紙に各賞で選べる商品の詳細が記載されておりますので、どうぞ熟慮の上でお決めになって下さい」
選択肢の中から好きな商品を選べる、というのは嬉しい限りだ。
やはり何かユーリやプラムやイズミ、もしくはエリカかコノエの役に立ちそうなアイテムを選択して受け取るのが良いだろう。
もちろん別に、自分の為のアイテムを貰うのでも構わない。
問題は選択肢の中に、現在どういう景品が用意されているのかだ。
「シズお姉さま、1つはコレが良いと思います」
早速シズが『A賞』のパンフレットを眺めていると、ユーリがそう言って1つの景品画像を指し示してきた。
それは着用者の性別によってデザインが変わる衣装のようで、男性が着ると礼服スーツのような見た目に、女性が着るとミニスカートのドレスになるらしい。
ドレスとは言ってもフリルや華やかさはやや控えめになっていて。そのぶん全体がぴしっと整った形状をしており、落ち着いた印象を受けるものになっている。
着心地や運動性も悪くなさそうだし、野外活動や戦闘が普通に行えそうだ。
+----+
錬金術師の衣装
物理防御値:48 / 魔法防御値:60
装備に必要な称号:中級調合師
【特殊性能】:[知恵]+20、[敏捷]+20、
あらゆる錬金術系の生産ライン数+1
『A賞』景品。このアイテムは自由に他者へ貸与できる。
錬金術師として相応の知識と技術を修めた者の衣装。
着用者の性別に応じて見た目が大きく変化する。
準礼装程度の格式を持ち、フォーマルな場にも適する。
着用中は錬金術に必要な能力値が大きく補強され、
また同時に並行して行える各種生産ライン数が追加される。
+----+
アイテム名は『錬金術師の衣装』となっていて、その名前の通り錬金術に必要な[知恵]と[敏捷]を大きく引き上げてくれる特殊性能が付加されている。
また、この服を着用していると、全ての錬金術関係の生産ライン数を1つ多めに扱えるようになるらしい。
調合にもこの効果が適用されるだろうから、これがあれば毎日のように行っている霊薬の生産が、今以上に捗ることになりそうだ。
但し、着用には『中級調合師』の称号が必要という条件があるらしい。
錬金術師として一定の技術を修めていなければ、着ることが許されない衣装だと言うことだろう。
もちろんシズは既に『中級調合師』の称号を有しているため、何の問題もない。
(……もしかして、いま着ている鎧より防御力が高いのでは?)
アイテムの詳細を見ていて、ふとシズはそのことに気づく。
シズが愛用している『初心者用ガームアーマー』は、物理防御値が『46』で、魔法防御値が『18』。魔法防御値こそ低めだけれど、金属鎧なので物理防御値に関しては結構高いほうなのだけれど―――。
一方で『錬金術師の衣装』は、物理防御値が『48』に魔法防御値が『60』。
僅差とはいえ金属鎧に物理防御値で勝っているだけでなく、魔法防御値に関してはトリプルスコアという圧倒的な大差をつけている。
何と言うか―――流石は『ガチャ』の景品だな、と。
そう思わずにはいられない、随分と恵まれた性能の装備品のようだ。
「ユーリ。何か欲しいものがあれば、どれでも選んでいいよ?」
一緒にパンフレットを眺めているユーリに、シズはそう提案する。
2つ当たっているから、もう1つ『A賞』の景品を選ぶことが可能だし。今回は『B賞』も当たっているから、そちらの景品からも自由に選ぶことができる。
自分の為のアイテムは、『錬金術師の衣装』だけで充分だから。折角の機会だしユーリにも何か1つ選んで貰い、プレゼントしてあげたいと思ったのだ。
「うーん……。お姉さまのお気持ちは、とても嬉しいのですが。残念ながら現在のラインナップの中には、〔精霊術師〕や〔薬師〕向けの装備品は無さそうですね」
「そっかあ……」
最近になって実装されたばかりということもあってか、現時点で用意されているガチャの景品ラインナップは各賞ごとに10種類程度しかなく、お世辞にも多いとは言えない。
たまたま〔錬金術師〕向けの防具こそ用意されていたわけだけれど。他の職業に向いた装備品まで、何でも幅広く取り揃えられているわけでは無いのだ。
だからユーリの職業に合う装備が無いのも、仕方のないことではあった。
「どうぞ私よりも、他の皆様を優先してあげて下さいませ」
「ん、今回はそうだね……」
ユーリの言う通り、現状では他の子を優先すべきだろう。
幸い、パーティの前衛を単身務めてくれている、イズミが着用するのに良さそうな衣装があったから。もう1つの『A賞』の景品にはそちらを選択する。
また『B賞』の景品にはそれぞれ、最近ゲームを初めたエリカやコノエにとって便利に使えそうな装備品をチョイスした。
「C賞の景品は『装身具引換チケット』になります。このアイテムを使いますと、任意の装身具を獲得することができますので、どのような物が欲しいか予めお決めになった上でご使用下さい」
そう告げてからショップの店員さんが、シズが『C賞』を当てた回数に等しい、合計5枚チケットを手渡してきた。
+----+
装身具引換チケット
【カテゴリ】:消費アイテム(※収納枠を使用しない)
手に持って念じることで、このチケットと引き換えに
好きな『特殊性能』を持つ任意の『装身具』を獲得できる。
選択可能な種類は以下の通り。
〔装身具の種類〕
首飾り、耳飾り、ブローチ、ベルト、
指輪、腕輪、チョーカー
〔特殊性能|(1つを選択)〕
・『最大HP』+120
・『最大MP』+80
・[任意の能力値1種]+20
生成された装身具は『魔法防御値:20』の性能を持つ。
+----+
アイテムの詳細を見てみたところ、こちらはいつでも好きな装身具と引き換えができるチケットらしい。
全部で5枚だから、ユーリたち5人にプレゼントするのがちょうど良さそうだ。
他に『D賞』と『E賞』、『F賞』の景品も店員さんから受け取る。
ユーリから教えて貰っていた通り、ガチャの景品には『インベントリ拡張石』が18個、『ストレージ拡張石』が16個含まれていた。
端数があるのも気持ち悪いので、それぞれが20個ずつになるようにショップで買い足す。これによりインベントリの収納数が『80枠』まで増えて、また新たにストレージも『20枠』利用できるようになった。
他にも『帰還石』を初めとした、様々な景品が手に入る。
その中の1つを見て―――ユーリが小さく微笑んだように見えた。
-
お読み下さりありがとうございました。




