コーニッツ・ムーア制圧戦 ⑨
「・・・なに? お師様」
「おう。爺様が魔石の使い方を教えて欲しいそうだ」
「フレイア! 言い方!」
私を見下ろして言うお師様の横からマルキオ様が嚙みついている。
言い方って、今、お師様、何かおかしなこと言ったっけ?
「爺様は爺様だろうが」
ニヤリと笑うお師様と必死な感じのマルキオ様の顔を見比べる。
魔石の使い方って、魔石の魔力で直接魔法を発動するヤツのことで良いんだよね?
「・・・私が、マルキオ様に?」
「お、ああ、・・・うむ。今の魔法術式を儂にも教えてくれんか」
わざわざ跪いて私の目線に合わせてくださったマルキオ様に頷く。
「・・・はい。私で良ければ」
「う、うむ。・・・そ、それと、おじ、お、お」
「・・・お?」
お、って、何だろう?
挙動不審になったマルキオ様の顔色が、みるみるうちに真っ赤に染まった。
「お、お爺様と呼んでくれても構わんからのっ」
「・・・えっ? でも、そんな恐れ多いことを」
なんで? 私がマルキオ様をお爺様って呼ぶの? お師様のお父様だから?
お師様の手が、ポンと私の頭に乗せられる。
「構わん。爺様と呼んでやってくれ」
「・・・はい。お爺様」
「お、おおおお、おう」
「じ・い・さ・ま」
マルキオ様の反応にニヤニヤしながら、お師様が私に念押ししてきた。
これ、言わなきゃダメっぽいね?
「・・・爺・・・様?」
「お爺様で!」
マルキオ様から即座に訂正が入った。
お師様は、面白そうにマルキオ様を見てニヤついている。
私じゃなくって、マルキオ様を揶揄っていることは分かった。
だとしたら、ここはマルキオ様のご要望に沿うのが正解だろうね。
「・・・はい。お爺様」
「おう!」
「・・・お師様、お爺様。ルナリアを手伝ってきます」
「ああ。分かった」
「頑張ってこい! フィオレ!」
「・・・はい」
私のデモンストレーションは、もう終わったんだけど、すごく力が入った声援をマルキオ様———、お爺様から頂いたので、ルナリアのフォローを頑張ることにする。
「・・・ルナリア」
「お帰り、フィオレ。わたし、あんなマルキオ様は初めて見たわ」
「・・・そうなの?」
「お爺様って呼ぶことになったの?」
「・・・そうみたい」
「わたしとお揃いね」
「・・・そうだね?」
私は腑に落ちないんだけど、まあ、いっか。
嬉しそうに笑うルナリアの背中を見送って、問題なく藁筵を斬り倒す姿を確認する。
なんだかんだ練習している内にカッターの扱いに慣れたみたいで、ルナリアの発動も早くなってきたね。
それはそうと、この時点でオーディエンスがザワついているのは、何なんだろうね?
「・・・ルナリア。甲冑の方は硬くて滑るから、工夫が要る」
「水を足すヤツね?」
「・・・うん。水を含むと土が重たくなるから、風が解けないように気を付けて」
「解けないように・・・か。どうすればいいの?」
「・・・遠心力ってわかる?」
「えんしんりょく?」
分かんないか。・・・どうするかな?
遠心力とバランスを体験で学ぶとしたら・・・。ヨシ。
私はルナリアと向かい合って両手を繋いだ。
「・・・いい? ルナリアが土で、私が風だとする」
「うん。———、きゃっ」
体重を掛けてルナリアの手を引っ張って、振り回す。
体勢を崩して飛んで行こうとするルナリアの体重とバランスを取って、その場で遊園地にあるティーカップみたいに、手を取り合った二人でぐるぐると回る。
オーディエンスは、私たちが何を始めたのかと不思議そうにザワついている。
「ちょっ、フィオレっ?」
「・・・今、私たちが別々の方向へ飛んで行こうとする力が釣り合ってるのが分かる?」
「う、うんっ」
「この、外側へ飛んで行こうとする力が、遠心力」
「これが遠心力・・・、あら? あらら?」
「・・・おっと」
止まろうとしたら、目が回ったらしいルナリアの足が縺れた。
戦争フェーズ⑨です。
ラン、ランララ、ランランラ
オババ「なんという友愛ぢゃ!」
オーム「グルルルアアアアアアア!(パクッ)」
次回、ルナリアが翔ぶ!




