特務魔法術師の弟子 ⑬
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
シュタっと手が挙がる。
「叔母様! わたしからも、お願い!」
「お前は黙っていろ」
「うっ!」
じろりと睨まれて、ルナリアが仰け反った。
「フィオレ。魔法術師として、お前に一つ質問しよう」
「・・・なに?」
「術式の行使に、一番大切な物が何か分かるか?」
魔法を使うときに一番大事なもの・・・?
体内の魔力? 呪文の詠唱? 使う場面? 魔力の制御?
選択肢は色々と有るんだと思う。
でも、私の体感で言うなら、答えは一つしか無い。
「・・・・・想像、だと思う」
「ヨシ」
頷いたフレイア様は、嬉しそうに微笑んでいた。
「決まりか?」
「決まりだ」
端的な問いに端的な答えが返って、ハロルド様の表情も緩む。
主君たちの決定に異議を挟まず、ワールターさんは頷いた。
「では、そのように手配いたします」
「手間を掛けるが、うちの執事は親父殿に貼り付けて置かんと、親父殿が働かんのでな」
「承知しておりますとも」
面白そうに目元を緩めたワールターさんが、音も無く扉を開け閉めして退室して行った。
ワールターさんの後ろ姿を見送った私は、フレイア様へ顔を戻した。
「・・・合格?」
「ああ。お前には“白焔”を身に付けて貰う」
「・・・はくえん? ・・・おおっ、あの強い魔法!」
聞き覚えがある単語を聞いて、私のテンションが最高潮にまで急上昇した。
「叔母様! わたしも! わたしも!」
「やれるものなら、やって見せろ」
ぴょんこぴょんこと手を挙げるルナリアに、フレイア様が挑発の笑みを向ける。
「やるわ! フィオレ! 一緒に頑張るわよ!」
「・・・うん!」
ガッチリと握手した私たちに、ハロルド様が柔らかい眼差しを向けた。
「フィオレ。君は、これから、客人待遇で、この館で暮らすといい」
「・・・客人? お世話になるなら、普通に仕事もする」
そういや、館に着いたときにも言ってたね。
タダ飯食らいは気が咎めるから、子供でもお手伝いぐらいはするよ?
「気にすることはない。ピーシス家はウォーレス家の傍系だが、見ての通り、家族同然だ」
「ピーシスはウォーレスの剣、だしな」
うん? 話の繋がりが見えないね。
ハロルド様とフレイア様が発した聞き覚えが無い単語にも、首を傾げる。
「・・・あの。ぴーしす家、とは?」
「フレイア?」
ピシッと笑顔のまま固まったハロルド様が、隣に顔を向けた。
記憶を探って目を泳がせたフレイア様が首を傾げる。
「おお。そういえば、私は名乗っていなかった・・・な?」
「・・・うん。周りの人がフレイア様って呼ぶから、私もそう呼んでた」
「そうか」
そうか、で終わり!? この人は! 大雑把すぎるだろ!
悪びれないフレイア様は柔らかい目で私を見る。
「私の名前は、ピーシス子爵家、現当主、フレイアだ。今は任務の関係で領地へ戻ってはいるが、王都の王家直属魔法術師団に所属し、特務魔法術師に任ぜられている」
フレイア様の弟子なら、ウォーレス家にとっても家族同然、ってことかな?
それよりも、聞き流せない単語が有ったような。
「・・・特務魔法術師?」
「王家、あるいは、王国魔法術師団の密命を受けて動く、・・・まあ、何でも屋だな」
「・・・おお、格好いい」
隠密同心? いや、特別捜査官的な実力者だと理解した!
「お前の師の名前だ。覚えておけ」
「・・・はい。・・・なんて呼べばいい? 先生?」
「好きに呼べ」
そう言いつつも、フレイア様の目には何やら期待感が籠っているように見える。
ルナリアは先生と呼んでいるらしいけど、キッチリした先生って感じじゃないんだよね。
何となくだけれど、先生と呼ばれることを望んでいるのでは無い気がするし。
お師匠様って呼ぶのも重苦しいかも?
フレイア様って呼び続けるのも、敬意が足りない気がする。
中間が良いかな?
「・・・ん。・・・じゃあ、お師様、で」
「しっかり励め」
ピクリと軽く片眉を上げたから望んでいた100点満点の答えでは無さそうだったけれど、フレイア様は満足そうに頷いた。
こうして、私は、特務魔法術師“白焔の魔女”―――、フレイア様の弟子になった。
特務魔法術師の弟子⑬です。
ついに、主人公の生活が安定しました!
次回、ハロルド面!




