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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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特務魔法術師の弟子 ⑧

「・・・ふおお! 町の中に小さいお城がある!」

 柄にもなく興奮してしまった。

 初代様が砦を築いた頃にはド田舎の鄙びた街道だったという幅100メートルの目抜き通りに面して、現代日本に残る史跡のように、粗い削りの石積みで建てられた古き時代の軍事拠点が在った。

 一辺が100メートルは有るだろう四角形の四隅に物見塔を備えた、どこからどう見ても小さなお城で、物見塔にはウォーレス家の紋章が描かれた旗が風に翻っている。

 お堀は無く、城門に有ったような跳ね橋も無い。

 表側の外壁に窓は無いけど、壁面に等間隔で空いた狭間の位置から察するに、建物の内部は3階建てになっているようだ。


 時の経過を感じさせる観音開きの門扉は外側へ開かれていて、長槍を持った門番兵が二人と、使用人らしき揃いのお仕着せを着た出迎えの人たちが立っている。

 これ、500年前の砦なんだよね!?

 めちゃめちゃ現役で使われていて、とても大切に手入れされている建物なのが分かる。

「・・・ここがルナリアのおうち?」

「ルナリアと共にある限り、お前の家でもあるな」

「お帰りなさいませ。・・・こちらが、あの?」

 私を小脇に抱えて馬上から飛び降りたフレイア様の前に、黒服の老紳士が立った。

 あの? あの、って、どの?


「ああ。そうだ、ワールター。こいつを身綺麗にしてやってくれ」

 ヒョイと手渡された私を執事さんがナチュラルに受け取った。

 伸びた猫みたいに執事さんに抱えられたまま、ぐりぐりと撫でられる。

 現代日本では都市伝説の執事さんのお名前は、ワールターさんというらしい。


「フレイア様?」

 目で問うワールターさんに、フレイア様が真っ直ぐな目を向ける。

 互いに無言なのに会話が成立しているように見えるのは、私の気のせいでは無さそう。

 どういう扱いか? って問いかな、などと2人の遣り取りを見上げていたら視線を感じた気がして、顔を振り向けてワールターさんの後ろを見たら、にんまりと笑っている目と私の目が合った。


「・・・えっ? うっ!!」

 話題の焦点であるらしい私は、ワールターさんの背後に控えるメイドさんたちのギラギラした視線の集中砲火に晒されていて、ヘビに睨まれたカエルの如く硬直する。

 何人か、森で暗殺部隊の指揮官が捕まったときに見掛けたお姉さんが、メイド服を着てメイドさんたちの中に混じっているけど、コミュ力の基礎値が低い私に、ワナに掛かった獲物を見る目を向けないで欲しい。


「ウォーレス家の御客人、だそうです」

「畏まりました。―――おい」

「「「「お任せください!」」」」

「・・・ひっ! ヒエッ!?」


 一つ頷いたワールターさんが背後に声を掛けた瞬間、複数のメイドさんたちに両手両足をそれぞれ取られて、私は胴上げスタンバイ中のように持ち上げられた。

 ちょっ!? 股を広げないで!! 穿いてないっ!! 穿いてないからあああっ!!

「あらまあ・・・。かわいい」

 メイドさんの一人の目線が私の股間に固定された。

 うわーっ! 見られた!? 穿いてないのがバレた!!


 わっしょい! わっしょい! と掛け声が掛かりそうな勢いでどこかへ拉致されかけていた私の前へ、反り返った小さな人影が颯爽と立ち塞がる。

「待ちなさい!」

「ああ。ルナリアも頼む」

「「「「お任せください!!」」」」

「ちょっ!? ああああああなたたちっ!! ああああああ!!」


 ルナリアの役立たず!

 間髪入れないフレイア様の追い討ちで、ルナリアも両手足を取られて一緒に拉致された。

 ワールターさんがルナリアに出迎えの挨拶をしたがってたみたいだけど、メイドさんたちを呼び止めようと挙げかけた手を宙に彷徨わせたまま、半口を開けて呆然としていた。


「まあっ! お肌ぷるぷるっ!」

「・・・は、はぁ・・・」

「あ、あなたたちっ! 良い加減にゴボボボボボ」

「ルナリアお嬢様、髪を洗っているときはお口を閉じていないと溺れちゃいますよー?」

「そ、そんなわけっ! ガボゴボボボ」


 ルナリアの扱いは、いつもこんな感じっぽいな。

 メイドさんが手に取った私の髪にお湯を掛けながら、まじまじと見ている。

「フィオレ様の髪は不思議な色合いですね」

「・・・そう?」

「見事な銀髪ですけど、少しだけ赤色? 紫色? が入っていますね?」

「・・・あ。それ、血の色かも」

「えっ! 血!?」

「・・・もともとは少しだけ青みがかってたけど、お肉を捌いてたら血塗れになって」

「血塗れって、髪まで?」

「・・・うん」


 こっくりと頷いたら、キッと目つきを鋭くしたメイドさんが、別のメイドさんに向かって振り向いた。

「お湯の追加よ!」

「はい!」

 タオルの準備に取り掛かろうとしていたメイドさんの一人が、バスルームから駆け出して行った。

 私、まだ洗われるの?

「・・・髪が伸びればそのうち戻るだろうし、もういいんじゃ?」

「ちゃんと洗わなきゃダメです!!」

「・・・アッ。ハイ」

 逆らっちゃダメなヤツだと早々に降参した。

特務魔法術師の弟子⑧です。


変態紳士に贈る鎮魂歌でした!

次回、主人公が真の姿を現す!(ダバダバダッダバダー

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