白焔を継ぐ者 ④
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
道案内の役目を果たした私は、ルナリアと一緒にベースキャンプへ行くようにハロルド様から指示された。
ベースキャンプに設定された松の大木の洞へと、私とルナリアは一泊二日での帰還だ。
発掘現場の照明を光魔法からカンテラの明かりへと切り替えさせたフレイア様と、野営地の設営を担当する5人の騎士様に護衛されて、私とルナリアが先導する。
洞の周囲に仕掛けてきたブービートラップも私が解除しないと危険だしね。
半年間も過ごした場所だから、真っ暗がりでも崖下から洞までの道のりを、私が間違うことなど無い。
まさか、これほどすぐに戻ってくることになるとは、まったく考えていなかったよ。
ほんの数百メートルの距離だから、数分で松の大木へと到着する。
ハロルド様たちのお迎えは要らないのかな? と心配したが、野営地設営班が引き連れている馬たちの蹄跡を辿れば、問題なく野営地まで来られるらしい。
フレイア様の光魔法に照らされて、暗い森の中に松の大木の姿が浮かび上がった。
帰って来ちゃったな。
「・・・到着しました」
「ほう? ここか」
興味深そうに、フレイア様が大木とその周囲を見回す。
洞の樹は大きな樹だから、周囲の森に比べれば、ほんの少しだけ樹間が広い。
とはいえ、延焼を防ぐために焚火を焚いていた場所の辺りだけ落ち葉が無いのと、生活するのに私が歩き回ったせいで獣道が出来上がっているぐらいで、周囲の森と大した違いが有るわけではない。
フレイア様の合図で、騎士様たちが馬の手綱を手頃な木に繋いで設営作業に取り掛かる。
飲み水の心配をしている様子だったので、小川までの道筋を教えたら、すごく喜ばれた。
「・・・そのままにしておくと危険なので、ワナを解除しに行ってきます」
「罠だと?」
「・・・敵の追跡の足を鈍らせられるかと思いまして。行ってきます」
「待て、待て。私も一緒に行ってやる」
「・・・でも、お手を煩わせるわけには・・・」
「子供は甘えていいんだ。それに、明かりが要るんじゃないのか?」
フレイア様が、ご自分の胸に手を当ててニヤっと笑った。
「・・・あ。確かに」
「わたしも行くわ! 行きましょう、叔母様、フィオレ!」
「・・・うん」
さっさとルナリアに手を繋がれてしまった。
フレイア様に光魔法を使っていただいて、私が先導して洞の周辺を回る。
足を止めて、後ろに居るフレイア様を見上げた。
「・・・ここで止まってください。ルナリアも、前へ来ちゃダメだよ」
「分かったわ!」
ルナリアがフレイア様の隣まで下がったのを確認して、適当な小枝を拾う。
仕掛けたワナが作動していない。
落ち葉を被せて偽装したトリガーは、私が設置したときのままだった。
暗殺部隊は、洞まで辿り着けなかったかな? それとも、見破られて避けられた?
なかなかの自信作だったんだけど、敵もさるもの引っ掻くもの、って感じ?
いちいち解除して、ってするよりも、作動させちゃったほうが早いよね。
誤作動で私が怪我をしたら、フレイア様やルナリアに余計な手間を掛けちゃうし。
トリガーの上へ小枝を投げたら、ストッパーが外れて、蔓で木杭が結わえられた若木がブオン! と風を切る唸りを上げてスイングした。
ヨシ。1個目の処理完了。
振り返ると、フレイア様が目を丸くしていた。
「おいおい。おっかないな」
「・・・対人用なので?」
「なので!」
ルナリアも得意顔。
狩猟の捕獲目的じゃなく、命ァ殺ったるわ! と、殺意マシマシで作ったからね。
苦笑したフレイア様が、若木の先に付いた木杭を検めている。
「子供が作ったものだと舐めていたが、シャレにならんな」
「・・・ありがとうございます?」
褒められた、・・・んだよね?
洞の周囲に仕掛けたワナは10か所ほど。若木の振り子ワナと頭の上へ石が落ちてくる落下ワナは作動させて処理し、底に逆茂木を据えた落とし穴はフレイア様が土魔法で埋めてくださった。
「お前、今すぐからでも工兵種で騎士団に入れそうだな」
「・・・おお。就職先が」
マジか! と、驚いてフレイア様を返り見たら、すごく楽しそうだった。
「はははははは!」
すごく上機嫌なフレイア様に、盛大にぐりぐりされて、ちょっと首が痛い。
ルナリアのふわふわの金髪も、盛大に掻き回されて鳥の巣みたいになっている。
とはいえ、ウォーレス家の騎士様たちが掛かってしまったらシャレにならない、ということで、崩落現場までの道のりに仕掛けたワナは、明日の朝、騎士様たちに護衛してもらって私たちが解除しに行くことになった。
掛かれば見つけもの、とばかりに、解除したままだったククリ罠を、いくつか仕掛け直してから洞へ戻ると、すでにハロルド様が松の樹に到着されていた。
ククリを仕掛けた理由? ウォーレス領軍の携行食は美味しくないとルナリアから聞いたし、少しでも皆さんに美味しいお肉を食べさせてあげられれば、と思っただけだよ。
ククリなら、騎士様たちが間違って掛かっても命に係わるような怪我はしないしね。
白焔を継ぐ者④です。
プレゼンターイム!
次回、第2次面接!




