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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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白焔の魔女 ⑨

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

「・・・なかなか、男前な方みたいだね」

「格好いいでしょ! わたしの目標なのよ!」

「・・・うん。格好いいね」

 でも、人間の死体を見て回りながら干し肉を食べるって、神経が図太すぎない?

 叔母様は、私たちが斬り倒した死体の傷口を観察しているようだった。

 内臓とか色々と漏れていると思うんだけど、干し肉を齧りながら弄り回すとか・・・。

 あんまり真似したくないね。


 私たちは、あっちこっちの死体を見て回る叔母様の姿を、ぼーっと眺めていた。

 なんか、もう。本当に助かったんだな・・・。

 ルナリアも張りつめていた緊張が解けたのか、放心しているようだ。

 遠くのほうから、地響きが聞こえてくる。

 「敵か!?」と、身構えかけたけど、叔母様が地響きのほうへチラリと顔を向けて検分作業に戻ったので、敵では無さそうだと再び脱力する。


 急速に近付いてきた地響きの正体は、数十騎もの騎士様たちだった。先頭を駆けてきた甲冑の騎士様が、ひらりと馬上から飛び降り、ガッシャガッシャと金属製の音を立てながら自分の足で駆けてくる。

 張りのある男声が炎の灯りに照らされた森に響く。

「ルナリア!!」

「あっ! お父様!」

 名前を呼ばれて放心状態から醒め、弾けたように立ち上がったルナリアは、膝で滑り込むようにして跪いた騎士様に、力強く抱きすくめられた。


「ぐええっ」

「ルナリア! よくぞ無事で居てくれた!」

 潰れたカエルみたいな声が出てたけど、大丈夫?

 滂沱と涙しながら抱きしめる男性の甲冑に包まれた背中を、鯖折り気味に仰け反ったルナリアがバシバシと全力で叩いている。


「おっ・・・! おとうさまっ! く、くるし・・・!」

「おっ? おおっ! 済まん、済まん!」

「ぷはぁ・・・」

 涙の意味は違うけど、ようやく解放されたルナリアも涙目。

 溺愛されてるっぽいけど、ものすごい脳筋一族の気配がする。


「もう! お父様ったら! 死ぬかと思ったわ!」

「何だと!? コーニッツのクソ野郎どもめ! 根絶やしにしてくれる!」

「そうじゃないったら!」

 号泣から一転して激高して立ち上がったお父様の甲冑のおなかを、がんがんとルナリアが叩く。

 そこへ検分を終えた叔母様が干し肉を片手に戻ってきた。


「来たか。ハロルド」

「フレイア! コーニッツのクソどもは何処だ!」

「エゼリアたちに残党を追わせている。そのうち捕らえて帰ってくるだろう」

「そうか。・・・それにしても、森で“白焔”を使うのは、やり過ぎだろう。大火(たいか)になったらどうする気だ?」

 ルナリアのお父様は、ハロルド様っていうんだね。

 ハロルド様は、周囲一帯に燻り続ける炎を見回して叔母様を咎めた。

 叔母様の名前は、フレイア様。

 対するフレイア様は、何のことも無いように肩を竦めただけだった。


「はん。“魔の森”がこの程度で焼けるなら苦労せん」

「それもそうだな」

 秒で納得しちゃったよ!?

 そういえば、フレイア様も消火活動をしていないのに、だんだん火が収まってきてるね。

 一撃で周囲一帯を焔の海にした魔法は“はくえん”という名前らしい。

 良いなあ・・・。この魔法、私も使いたいなあ。

 これだけの攻撃力が有れば、逃げ回らなくてもルナリアを守れた。

 そんなことを考えていたら、座り込んだままの私と、ハロルド様の目が合った。


「おや? 君は?」

「フィオレよ! わたしの命の恩人で、わたしの大切なお友だちなの!」

「そうなのかい? こんなに小さな子が?」

「そうよ! フィオレはワナを作るのが得意で、鹿を捕ったり干し肉を作ったりしていたの! それで、騙されて襲われているわたしを助けてくれたのよ!」

「そうか。ありがとう、お嬢さん」


 ハロルド様は、浮浪児の私の前へ跪いて頭を下げてくれた。

 ルナリアのお父様は、甲冑の上からでも鍛え上げられていることが分かるガッシリとした体格で、ルナリアよりも少しだけ濃い色の金髪を撫でつけた、理知的な目の、物腰が柔らかい壮年の男性だった。

 ぶっちゃけ、紳士な優男系の男前。

 でも、脳筋なんだよね?


「・・・フィオレと申します」

 私も慌てて立ち上がって、ぺこりと頭を下げる。

 私だって社会人経験者だから、敬語ぐらい使えるよ。

 股の前へ手を重ねて、お辞儀は背筋を伸ばして30度の角度。

 日本式だけど、初対面の印象を決めるものだから、礼節は大事。


「私はハロルド・ウォーレスと言う。この通り、ルナリアの父だ」

 優しい目で私を見下ろすご自分の腕には、愛娘のルナリアが引っ掛かっている。

「フィオレも、お家へ一緒に帰ってもらっていいわよね? お父様」

「構わないとも。フィオレには、ウォーレス家として十分なお礼をしなくては」

「フィオレ! 一緒に帰るわよ!」

「・・・え? ああ、うん」


 良いの? ルナリアのニュアンスと、お父様のニュアンスは違うと思うんだけど?

 意図して作ったような優しい顔で、ハロルド様がルナリアに向き直った。

 柔らかく微笑んでいるけど、目の光に剣呑なものを感じる。


白焔の魔女⑨です。


ナイスミドル!

次回、本章最終回!


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野生のハロルドくまが現れた たたかう まほう アイテム にげる
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