白焔の魔女 ⑧
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
乗馬パンツっぽいスリムラインのボトムと編み上げブーツの腰回りから爪先までのラインは、実に女性的な絶妙の肉感がありながらも、キュッと引き締まっていて無駄な贅肉の気配も無い。
軍服っぽい立て襟のジャケットに、左肩だけに羽織った純白のマント。
胸も大きい。いや、マジで大きいよ。
血振りをして鞘に納めた細身の剣はサーベルかな?
凛々しくて、目付きのせいか少しキツめの顔立ちに見えるけど、ルナリアを大人にしたら、こんな感じになるのかなと思わせる、ものすごい美人で、一部の隙も無く、完膚無きまでに―――。
「・・・タカ〇ヅカだ」
「えっ? 何?」
「・・・あ。気にしなくて良いよ」
小首をかしげるルナリアに、ぱたぱたと手を振った。手を振った動きで脇腹に鋭い痛みが走って私は口を閉じる。
私たちの元まで来た女性は、片膝を地面につき、ぎゅっとルナリアを抱きしめた。
「よくぞ無事だった」
「叔母様・・・」
かなりの力で抱きしめられたんだろうね。
「えうっ」と、ルナリアの呻き声が漏れていた。
数秒の抱擁の後、寝っ転がったまま動けない私を女性が見下ろした。
悪意も、嘲りも無い、その辺の子供を見る普通の目だ。
「こっちの娘は?」
「私の大切なお友だちで、命の恩人よ!」
「そうか」
さっと私の全身を見渡して、くっきりと男の靴跡が付いた脇腹を指先でグッと押した。
「・・・ぐえっ」
痛いよ、叔母様。
「肋骨を何本かヤラレているな」
続いて、血で濡れた私の髪を掻き分けて、傷口を確認する。
「こっちは切っただけか」
「ど、どうかしら? 叔母様」
「心配ない。命には関わらん」
サーベルが提がった腰とは反対側の腰嚢から小瓶を取り出し、キュポっと栓を抜く。
「飲め」
有無を言わさず、口に突っ込まれた。
いきなりだったから、鼻の奥にまで流れ込んできた液体で悶絶する。
ぐえっ! めっちゃ青臭い! 苦、エグい!
何これ!? 毒じゃないよね!?
目を白黒させる私の様子に気付いたのか、叔母様はニヤリと笑った。
不敵に笑う表情まで格好良くて綺麗とか反則だろ。
「回復薬だ。美味かろう?」
「・・・けほっ。お、美味しくないです」
ポーション!? ポーションだって!! これが!? ふおおおおお!!
私でも知ってるファンタジードラッグの代表格じゃん!
内心では盛り上がっているのに、動揺が収まりきっていない私の口から転げ出た言葉は、実に正直な味の感想だった。
「はははははは! そうか、そうか!」
この人、体育会系っぽいね。
なんで嬉しそうなんだよ!
スゴいねぇ、ポーションって。あれだけ痛かったケガなのに、2分でゴハンが暖まるよりも早い短時間で、スーッと痛みが引くんだよ。
後で聞いた話では、なんと、このポーション、すごく高価なお薬で、一般市民には手が出ないものだったらしい。
バカみたいに高価なだけ有って、単純骨折ぐらいなら一晩で治る代物だそうだ。
「ん? これは・・・干し肉か?」
「・・・どうぞ。・・・でも、土で汚れてるかも」
「構わん。土を被った干し肉ぐらい、戦場では普通に食う」
たすき掛けしていた蔓ごと外して渡すと、男前な叔母様は一枚引き千切って、何の躊躇いも無く齧りついた。
「鹿肉か・・・? 旨いな。それに柔らかくて良い」
「・・・ありがとうございます」
「お前も食っておけ。栄養を摂ると治りも早い」
「・・・はいムグッ」
また口に突っ込まれた。
この人、変! 絶対、変わってるよ!
「術式を使うと、腹が減ってイカン」
次から次へと干し肉を噛み千切りながら、叔母様は死体の検分に行った。
みるみる痛みが引いてきたので、よっこらせ、と体を起こす。
ポーションって、本当に凄いな。
白焔の魔女⑧です。
ポーションって良い響きですね。
ポーション! ポーション!
次回、パパ登場!




