白焔の魔女 ⑤ ※一部、ルナリア面
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
肌寒さを感じて、わたしは薄く目を開ける。
すごく眠くて、ちゃんと目が開かない。
眠気で頭がボーッとしていて、自分がどこに居るのかもよく分からない。
周りが真っ暗で、時々、微かな葉擦れの音が聞こえる他に聞こえるものは、すぐ隣の静かな寝息だけ。
頬に触れるわたしのものではないサラサラの髪の感触に、フィオレの存在を思い出す。
ああ、そうか。わたしは“魔の森”で逃避行中だったんだわ。
精霊様みたいに綺麗で、とても強くて、優しくて、沢山のことを知っている不思議な子。
わたし一人だったら、とっくに敵に殺されて、天国のお母様のお側へ行っていただろうことは想像に難くない。
今だって、わたし一人だったら不安で寂しくて眠れずに泣いていたはずだわ。
あの襲撃で運良く殺されず逃げ延びていたとしても、この身一つで“魔の森”に放り出されて。飲み水は魔法術式で出すことができても、携行食糧の持ち合わせも無くては、逃げる体力を維持することだって出来なかった。
“魔の森”は、文字通り、強大で凶悪な魔物と魔獣が支配する不可侵領域。
わたしと同じように身体一つで“魔の森”へ放り出されたフィオレは、わたしと出逢うまでの半年間以上も一人きりで生き延びて、わたしを敵兵の包囲から助け出してくれた。
本当なら、不安で辛くて、ちっぽけなわたしの心なんて押し潰されていたはずなのに、フィオレと一緒なら大丈夫だと信じられる。
フィオレが男の子だったら、フィオレと結婚すると言い出していた自信があるわ。
背中やお尻に感じる地面の冷たさと固さは不快だけれど、フィオレと引っ付いている半身から感じる暖かさが心地良い。
叔母様やお父様とは違う安心感に、わたしの身体から力が抜ける。
もぞもぞとフィオレの髪に頬を擦り寄せると、ふわりと甘い香りが鼻を掠めた。
「いい匂い・・・」
小さく呟いたら、身じろぎしたフィオレもわたしに身体を擦り寄せてきて、半身に伝わってくる暖かさが増した。
はぁ・・・、すごく安心する。
うとうとと微睡んでいたわたしの意識は、再び眠りの底へと落ちていった。
◇
「さあ! 行きましょうか!」
「・・・うん」
翌朝、迷いの無いスッキリとした顔で、私たちは宣言した。主にルナリアが。
いやあ。元気だねえ。予想以上だよ。
焚き火すら炊けない野宿で大丈夫かと心配したけれど、ルナリアもしっかりと眠れたみたいで安心した。
私にもルナリアにも体力が無いから、スッパリと不寝番を諦めて2人で眠ったお陰か、十分に睡眠を取った身体は快調そのもの。
手を繋いだ私たちの、自由な方の片手には、それぞれ魔石が握られている。
敵が現れたなら、遠慮なく魔法をブチかます。容赦も躊躇もしない。
靴を履いたルナリアは、昨日よりも早いペースでも問題なく歩けている。
余程、昨日までは、私が踏んだ後を選んで歩くことに負担が掛かっていたんだね。
私も痕跡を気にすることなく歩けるから、昨日よりも足取りが軽い。
あとは、進む方向さえ間違っていなければ、そこそこの距離を稼げるはずだ。
追跡してきた暗殺部隊に追いつかれたならば、そのときは血の雨を降らせてやる。
25分間歩いて、5分間休憩する。
二人で手を貸し合って、岩を乗り越え、倒木の下を潜る。
周囲の気配を探りながらも、足は緩めない。
雑談をすることも無く、二人とも黙々と足を動かし続ける。
昼食の休憩から数回の小休止を終えて、あと少ししたら今日の寝床を探すべきかと考え始めたときだった。
ピイイイイイイ―――ッ! っと、甲高い笛の音が森に響いた。
音の発生源からの距離は200~300メートルぐらいか。
「「―――ッ!!」」
見つかった! 追いつかれた!? いや、張られていた網に掛かったか!
ルナリアと固く手を繋ぎ合って、弾かれたように駆け出す。
急げ! 急げ、急げ、急げ!!
ホイッスルのような笛の音は森に溶け、応えるような笛の音が、もっと遠くから木霊して、あちこちの方向から聞こえてくる。
やはり、追撃では無く待ち伏せだ。ローラー作戦の探索網にでも掛かったらしい。
木々の合間を脇目も振らず、懸命に駆ける。
「・・・こっち!」
「うん!」
300~400メートル先の、進路の樹間に人影が過ったように見えたので、森の奥へと進路を変える。
ピッピイイイイイ―――ッ!
符牒が変わったらしい笛の音に追われて、必死に走る。
遠くから、何かを叫び合っている男たちの声も聞こえてくる。
拙い! 予想よりも敵の数が多い!?
騎馬も呼ばれたようだ。低い地響きのような音も遠くから響いてくる。
息が上がる。でも、足は止められない。
右へ、左へ、人影が見える度に転進を繰り返す。
ルナリアの足が縺れ気味になってきた。
「・・・くっ!」
もう、そんなに長くは逃げられそうにない。
大木の太い幹の傍を駆け抜けようとしたときだった。
ザザッ! と、葉擦れの音を引き連れて、私たちの目前の進路を大きな影が遮った。
白焔の魔女⑤です。
アアアー! アアアー!アアアアアー!
切る尺を間違えちゃったー!
読みにくくてサーセンサーセンサーセン!
次回、エマージェンシー! エマージェンシー! エネミーエンカウント!




