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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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白焔の魔女 ③

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

 今の季節がまだ秋で本当に良かったと思う。夜も涼しい程度だから、暖を取る焚火を起こさなくても、ルナリアと二人で体を寄せ合えば凍えずに睡眠を取れるはずだ。

 鬱蒼としたジャングルと違って、比較的、見通しが利きやすい森の中だと、数百メートル程度なら焚火の明かりを発見される恐れが有るから火を焚けない。

 夜間から早朝の気温がもう少し低い季節だったら、睡眠中に凍死してもおかしくないからね。

 そこから、また1時間弱を歩いて小川の上流に出た。


 遠くから見通せない適当な河原の窪みに2人で座り込んでお昼を摂る。

 しっかりと体を休ませるために30分間の休憩とした。

 静かだなあ・・・。目を閉じて静かに息を吐いた。

 樹間を渡ってくる風が梢をさわさわとさざめかせる他に、耳に届くのは私とルナリアの息遣いだけ。こんな状況で無ければリフレッシュに持ってこいの静寂だ。

 頬を撫でる風が心地いい。

 はらり、と、落ちてきた葉っぱが私のおでこに当たって、ふと、瞼を開いた。


「―――ッ!」

「―――きゃっ・・・!」

 反射的に、隣に座るルナリアの肩を全力で突き飛ばす。

 頭上の梢から音も無く落ちてきたのは、巨大なヘビだった。

 眉間から生えているのは1本の触角。

 ルナリアを突き飛ばした反動で私の身体も仰向けに倒れ、逃げなきゃ、と考えるよりも早く、ドスン、と、おなかに強烈な衝撃を受けた。


「―――カハッ・・・!」

 私の喉から声にならない音と一緒に空気が押し出され、息が詰まる。

 痛みを感じるよりも先に、全身に響いた衝撃で思考が白く吹き飛んだ。

 視界が激しく回って、自分が揉みくちゃにされていることに気付くのに、数瞬。

「フィオレ!」

 ルナリアの叫びが耳朶を打つ。

 く、苦しい・・・! 呼吸ができない!

 全身を締め上げられる痛みが、ようやく襲ってきた。

 手探りで掴んだものを、纏わりつく異物に必死で叩きつける。


「か、カッターッ!!」

 何秒間ほど手足を振り回していただろうか。

 唐突に私の身体は放り出され、地面に転がった。

「・・・あ・・・ケホッ。・・・ケホッ、ケホッ・・・!」

「フィオレ!」

 また体を締め上げられる。今度は首の周りだけ・・・?


「・・・る、ルナリ・・・、くる、・・・くるしい・・・!」

「あっ! ご、ごめんなさい!」

 細く小さな背中をタップする。

 圧力が緩んで、私は大きく新鮮な空気を吸い込んだ。

 ハッ、ハッ、と、絶え絶えの荒い呼吸を整えながら、おなかの痛みに顔をしかめつつ、ぼやける視界で周りの状況を確認する。

 ルナリアの向こうの地面には、力なく口を開いたヘビの頭が転がっていて、千切れ飛んだ傷口からダラダラと鮮血を垂らしている。

 胴体のほうは、死んでいるくせに、うねうねと血液と何かの液体を撒き散らしながらのたうっている。


「・・・くそ。・・・このヘビ」

「大丈夫!? フィオレ!」

「・・・なんとか生きてる」

 ルナリアによると、突然、ルナリアを突き飛ばした私の上に、ほぼ同時ぐらいのタイミングで触角ヘビが落ちてきて、私に巻き付いて締め上げたらしい。

 動揺しつつも無事に風ジェットカッターの発動に成功して、ヘビの首をチョンパした。

 ぼろぼろと涙を零すルナリアの頭を撫でる。


「・・・助かったよ」

「何言ってるの! 助けられたのは、わたしのほうじゃない!」

「・・・じゃあ、お相子で」

「もう!」

 また締め上げられた。苦しいって、ルナリア。


「・・・はぁ・・・。壊れちゃった」

 呼吸が落ち着いた私が発見したのは、柄の二股部分が折れて蔓が引き千切れた槍。

 力任せに夢中で振り回したからなあ・・・。

「直せないの?」

「・・・蔓が無いし、柄も折れちゃってる」

 身軽であるべき強行軍に多くの荷物なんて持って出られないし、現地調達できる可能性が有る蔓は洞に置いてきていた。

 外れて飛んで行っていた剣先は無事に発見できたけど、具合の良い枝を新しく拾えても、剣先を縛り付けるための蔓が手元に無い。


「・・・仕方ない。置いて行こう」

 そう言えば、コイツ毒を持ってたんだよね。2人とも噛まれなくて本当に良かった。

 地べたを這うヘビのくせに魔石が風属性なのは、樹上の枝から枝を這って跳んで、狙った獲物を頭上から襲う生態だからだと確証が得られた。

 この触角は、距離感知レーダーか何かかな?

 ヘビは夜行性が多くて熱感知器官を標準装備してるもんね。異世界仕様で熱感知だけでなく獲物との距離を感知する高性能器官を持っていても不思議では無いだろう。


「・・・ふむ」

 頭部を失った胴体の傷口から滴る血に、改めて目が留まった。

 血の体力増強効果で受けたダメージを回復出来ないだろうか。

「どうしたの?」

「・・・ルナリアも飲む?」

「ええっ!? 血をそのまま!?」

「・・・すごく、精が付くんだよ」


 傷口から零れて地面を濡らしている血の滴を、掌で受け止めて啜って見せる。

 ああ~、効くなあ。体が活性化することで痛みが和らいだ気がする。

 ルナリアが目を剥いてるけど、シカの解体中に血を飲んでるところ見てなかったっけ?

 小川の水で血に汚れた掌を洗い落としてから、ガッツポーズ。


「・・・ほら。元気になった」

「そ、そうなの?」

「・・・確証は無いけど?」

 ルナリアが首を傾げるから、首を傾げて返したら、呆れた顔から一転、楽しそうに笑う。

「変なの」


 知ってる。日本でも異世界でも私は変わり者なのだろうって自覚は有る。

 ガリガリに痩せ細っていた私の身体が早期に体力を取り戻すことが出来たのは、仕留めた獲物の生き血を摂っていたことも関係しているんじゃないかと疑ってるんだよね。

 運動して体が疲れている今は、栄養補給源に獲物の血は最適なんじゃないかと。

 血の雫を飲んだ私が余程元気そうに見えたのか、結局、ルナリアも掌に血の滴を受け止めて啜っていた。


白焔の魔女③です。


辛勝! 蓄積するダメージ! 果たして無事に脱出できるのか!

次回、幼女たちは決断する!

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― 新着の感想 ―
大蛇の血をすする美幼女二人。神秘的なような、猟奇的なような。
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