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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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白焔の魔女 ②

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

「それで、どうするの?」

 水筒の水を一口飲んだルナリアの目は、20メートル以上は上空の崖上に向けられている。

「・・・こう、するんだよ」


 私は、風ジェット切断魔法を発動した。

 腕を振ると、シャアアアアアアアアン! と擦過音が響いた。

 先ず、私の目の高さで、崖に正対した面の幹を半ばまで切断する。

 2振り目は、身を屈めて低い位置から斜め上へと斬り上げる。

 楔形に切断された幹のパーツが、ドスンと重い音を立てて滑り落ちた。

 真横から見れば、幹に、フの字の欠き込みが入った状態になるが、このぐらいの欠損で樹は倒れてくれない。

 倒れる方向を測りつつ、幹の斬り口の反対側に3振り目を振るった。

 しっかりと斬れたようで、ミシミシ、バキバキ、と言った破断音はしなかった。

 すぅっと、音も無く、大地との繋がりを断たれた木は傾き始める。

 ザザザザザアアアアアアン! と、葉擦れと枝擦れの音を立てて、斬り倒された木が崖へと寄り掛かる。


「おお―――」

 ぱちぱちとルナリアが手を叩いている。

 ドヤ。

 想定通りに行って、私も口元が緩む。

 当初の脱出計画では崩落現場の斜面を無理押しで登るしか無いと考えていたのだけれど、風ジェットカッター魔法の習得で崩落現場そのものを登る必要が無くなったのだ。

 選択肢が増えたのは嬉しい誤算だし、大きなアドバンテージだ。


 ともあれ、これで崖に新たな大木の梯子が掛かった。

 梯子の角度は少し急で60度ぐらいかな。離れて確認しても、ちゃんと崖上まで木の天辺が届いている。

 一番下の枝まで、まだ3メートルほど有るが、あとは、適当な枝が生えた、2人で運べる程度の若木でも切ってくれば、この木の一番下の枝に手が届くようになる。

 森の中は静かだけど、そこまで大きな音では無かったはずだ。

 あのぐらいの音量なら数百メートル先ぐらいまでしか届かなかったんじゃないかな? 届いていないと良いな。

 音を聞きつけた敵が急行して来ないとも限らないので、靴を履かせたルナリアのお尻を押し上げて、枝を伝って崖上まで登りきった。


 地上20メートルという高さは恐怖に足が竦むのが当たり前だから、ルナリアには「決して下を見ないように」と言い含めて、私自身も地上を見下ろさないようにしている。

 ルナリアも、どうしても地上の景色が視界に入って、更には、いつ崩れるか分からない崩落現場の倒木のときと違って、なかなかの安定感で寄り掛かっている今回の木は怖くなかったみたいで、足を竦ませることもなく、するすると崖上まで登りきって見せた。

 ずっと上を見ているだけで良かったのも恐怖心を刺激されなかった理由かもしれない。

 極度の緊張感から解放されて息を吐いているルナリアの背中をポンと叩く。


「・・・お疲れさま。行こう」

「うん!」

 用が終われば長居は禁物だ。ルナリアの靴を再び脱がせ、さっさと崖から離れて森の奥へと向かう。

 ここからは、時間との勝負だからね。

 未だ、人間の気配は感じ取れないけれど、敵の中に追跡技術を持った人間が居れば、そう時間を掛けずに崖を上った痕跡を見破られるのは必然。

 マメに休憩を取りつつも、出来るだけの距離を稼ぎたい。

 私の焦燥感がそうさせたのか、見積もりよりも早く、1時間ほどで崖から3キロメートルほど奥まで入って来れた。

 1分間あたり50メートルぐらい進んだ計算だね。


「・・・ちょっと休んでて」

「分かったわ」

 休憩しているルナリアを待たせて、私はわざと足跡を大きく残しつつ、100メートルほど東へと進んだ。

 そこから、慎重に自分の足跡を重ねて踏んで後ろ歩きで戻る。

 私が戻ったとき、ルナリアは魔石を片手に魔法の発動練習をしていたようだった。


「何してきたの?」

「・・・ワナの一種、かな。“戻り足”って言うんだよ」

 これは、野生の熊でも使う、追跡を躱すための欺瞞工作技術だ。

 追っていたはずの痕跡が突然途切れて無くなるように見せかける。

 追跡のプロフェッショナルである熟練の猟師でも騙されることが多々あるから、敵の本業が兵隊だとすれば、専門教育を受けた斥候でもなければ騙されてくれる確率が高いはずだ。


「それ、すごいわね!」

「・・・そう?」

 “戻り足”の意図を解説すると、しきりに感心している。

 特に、「熊でも使う」という部分に。

 熊になんて感心しなくていいんだよ。所詮は本能丸出しの畜生に過ぎないんだから。

 あいつらは、そのうち私が絶滅させるんだし。

 ルナリアが魔法を教えてくれたお陰で風ジェットカッターって武器を手に入れたから、二度と熊なんかに負けないよ。

 (ゆう)(たん)って言う熊の胆嚢(たんのう)が、こっちの世界でも薬として売れるのなら、私のこの手で熊を乱獲して薬の相場価格を暴落させてやる。

 熊鍋って味噌仕立てで肉の臭みを取れば美味しいらしいから、一緒におなかいっぱい食べようね。

 こっちの世界に味噌が有るのかは知らんけど。

 大豆と麹と塩が有れば味噌は自家製で作れるはずだし。


 休憩を終えた私はルナリアと連れ立って、本来の目指す方向である南へと2度目の転進を行った。

 ここからは、真っ直ぐにウォーレス領内を目指す。

 1キロメートルほど歩いては、また休憩。

 やっぱり足の裏が痛いのか、弱音は吐かないものの、ルナリアは自分の足の裏を揉んでいる。

 落ち葉が地表をふかふかに覆っている比較的柔らかい地面とはいえ、裸足歩きに慣れていないルナリアの足が心配だから、早く靴を履かせてあげたい。

 利発で芯がしっかりしている子だから泣き言を漏らさないけど、裸足で数キロメートルも歩いて辛くないはずがない。


「・・・疲れてない?」

「ぜんぜん平気よ」

「・・・そう。なら良い」

 次の休憩で昼時になるだろうから昼食を摂ろう。頑張っているルナリアには、せめて、マメに休憩を挟んであげたい。干し肉を齧りながらでも歩くことは出来るけど、まだまだ先は長いからね。


白焔の魔女②です。


ご都合ツールは都合良く使うために有る!

次回、襲撃者、現る!

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― 新着の感想 ―
クマー「僕たち地球のクマーと関係無いよ」 フ「知るか!」
熊「生態系の破壊反対!」
伐木の際外国では切り口(受け口)がフの字ですが、日本では∠の字で上下逆になり 後で成形します、理由は大量に切る時、下部に砂が多いためチェーンソウの刃が傷む。
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