魔法使いの誕生 ⑯
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「・・・うーん。コレ、勿体ないな」
地面に当たって散った風のロスが気になるんだけど、どうにか有効活用出来ないものか。
指先の向きだけじゃ無く、風の向きを変えられないものだろうか?
直線で切るのでは無く・・・、アレだ! 回転刃ならどうだろう?
道路工事でアスファルト舗装を切ったり、大工さんが木材を切ったりする回転刃。
うううううう・・・ダメか? これでどうだ!
「・・・曲がれ~、曲がれ~、曲がれ~、曲がった!」
「ええええええ!?」
噴き出す風を外側から曲げようと意識しても曲がらなかったので、指先に出た魔力がダンボール箱送風機を動かしているのだから風も送風機の延長線だと考えて魔力の動線をイメージしたら風の向きを変えられることに気がついた。
指の向きを変えなくても、風が出る向きが指先みたいにクイックイッと曲げられる。
噴き出した風が円を描いて噴き出し口に合流するイメージにしたら、散って霧散していた分の風のロスが減ったのか、消費魔力量も一気に減った。
円盤状に回転する風の刃は地面を耕すのでは無く、地面の土を巻き込んで斬っている。
風越しの景色を歪ませるだけだった透明な刃は、土の粒子を巻き込むことで白っぽい茶色に濁って汚くなってしまった。
汚くはなってしまったが、切断力は上がってね?
アレだ! 研磨剤を混ぜた水で硬い金属をもカットするウォータージェットの風版だ!
ダイヤモンド鉱石でもカットできる超・切断技術なのだから、何だって斬れるはず。
風の霧散ロスが少ない分、アスファルトカッターみたいに綺麗に斬れる。
土の地面はアスファルトみたいに硬くないから、バターみたいにザクザク斬れるよ。
「・・・フヒッ」
何だか楽しくなってきた。ハイだよ、ハイ。
これなら剣で武装した大人を相手にしても戦えそうじゃない?
だって、回転刃の大きさもイメージ次第で自由自在に変えられるんだよ。
大人と子供のリーチの差を埋められるし、剣を振り回すための腕力も必要ない。
何よりも、「剣で斬らなくても回転刃に触れれば勝手に斬れる」のが私たち向きじゃん。
ザッシュ、ザッシュと地面に刻まれる斬り跡を見て顔色を悪くしているけど、私が覚えたんだからルナリアも覚えるんだよ。私がルナリアに覚えさせるんだから。
ここまで来たら、もう一歩踏み込んで、省エネ化か威力向上を目指したいなあ。
少し離れた場所まで歩いて細い木に向けて回転刃を振り抜いてみたら、「シャ―――ン!」と軽い音を響かせて、立木を切り倒せてしまった。
「ヒッ!」
「・・・フヒヒッ!」
押し殺した悲鳴みたいな声が聞こえた気がするけど気のせいだろう。
直径10センチメートル程度の木の幹なら、殆ど抵抗を感じないほどの切れ味だった。
色々と試行錯誤している間にも魔力消費が進んだのか、体がダルくなってきた。
一旦、魔法を解除して、大きく息を吐く。
ようやく終わったと安心したのか、青くなっていたルナリアも大きく息を吐いている。
「ね、ねえ、フィオレ? 今の、一体なに?」
「・・・風魔法?」
「違うから! 風魔法って、あんなのじゃないから!」
「・・・じゃあ、風ジェットカッター魔法」
「じぇっとかったあ?」
「そういう道具が有るんだよ。そういうものだと覚えれば良いよ」
「え? まさか、わたしも覚えるの?」
「・・・そういうものだと覚えれば良いよ」
「なんで2回言うのよ!」
「・・・大事なことだから2回言った」
そんなに絶望的な顔しないで。
「・・・原理を解説しよう」
「ううっ・・・」
及び腰なルナリアを捕まえて座らせ、空気砲の原理やドライヤーの原理を地面に絵で描いて説明する。
ドライヤーは現物を見ていないせいか理解が難しい様子だったけど、空気砲の、外から掛けられた圧力で箱が変形して箱の中の空気の押し出される体積が狭い噴射口を通ることで速度に変換されて空気の塊になって飛ぶ原理は、驚くほどにアッサリと理解した。
ルナリアは、物理法則は理解しているのに家電製品や機械が苦手なタイプかもしれない。
ドライヤーを「そういうもの」だとゴリ押しで理解させたら、ジェットカッターの噴射までは出来るようになったけど、こっちの世界の一般的な風魔法がどういう物かを知っているだけに噴き出す風までが一体のものだと認識するのは難しいみたいで、風を曲げて回転刃に整形するとこるまでは、「今日は」至らなかった。
いつの日か、きっと、ルナリアにもマスターさせて見せよう。
賢い子だから、というよりも、私が回転刃の風ジェットカッターを使っているのを見慣れれば、ルナリアの常識が塗り潰されて、ルナリアも使えるようになる気がするんだよ。
何たって、「魔法の法則は物理法則の常識に囚われないんじゃないか」って手応えを感じるから。
私の常識の色にルナリアを染め上げるのも悪くないと思うんだ。
逞しく、原始人しようぜ!
ちびっ子魔法使い⑯です。
その昔、あるプロレスラーは、こう言った。
元気が有れば何でも出来る。(ダー
次回、ご都合は音速を超え、光の速さへ!




