魔法使いの誕生 ⑭
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「森の奥は強い魔獣が居るから、行っちゃダメだって叔母様が言っていたけど仕方ないわ」
なんと、この森の奥へ向かうと、幽霊しか出ない迷宮まで有るらしい。
こっちの世界には幽霊も実在しているのか。
魔法が存在するのだから幽霊が居ても不思議は無いな。
いよいよファンタジー系の気配が濃厚になってきたから、もう驚かないけど、一応は確認しておこう。
「・・・魔獣って、具体的にどんなの?」
「魔力を持っている強い動物って話はしたわよね? 判別方法は体内に魔石を持っているかどうか。魔石が採れるから辺境では魔獣を狩るのも重要な産業の一つでもあるわ」
ほうほう。流通価値が有ると。
ゲームと違って動物を殺しても死体は消えたりしないから、今まで私が丸ごと捨てていた内臓の中から抉り出す必要があるからスプラッターな作業になるけど、売れるものなら、かなり興味あるよ。
「・・・魔石って、具体的にどんなの?」
「フィオレが狩っていた鹿や猪みたいに大体は心臓に有るのが普通。幽霊なんて心臓が無い魔物も居るから絶対じゃないけど、宝石みたいに綺麗な石で、魔法道具の材料として輸出するのよ。魔獣が持っている魔力の属性によって色が違うし、その魔獣や魔物の強さによって大きさも違うわ」
大きさによって流通価格も変わるらしい。
この世界では本当に棲息しているらしいドラゴンの魔石ともなれば、リテルダニア王国で保有している最大級の魔石で、スイカよりも大きいサイズだそうだ。
こっちにもあるんだね、スイカ。涎でてきた。
「・・・魔法道具の材料って、何に使うの?」
「魔力が固まって出来るのが魔石って言ったでしょ? 魔石の中に貯まっている魔力を道具に利用するのよ」
「・・・へぇ」
バッテリー的な用途に使うのかな?
魔石の魔力を道具に使うのなら、どうにか武器に使えないかな。
すっくと立ちあがって槍を掴んだ私を、座ったままのルナリアが見上げてくる。
「どうしたの?」
「・・・たぶん臭いから、ここで待ってて」
「分かったけど」
全部のゴミ穴の場所までは覚えていないけど、どれかは回収できるはず。
ゴミ穴は、古いものでも雨がほとんど降らない気候だから被せた土が柔らかいままで、掘り返すのは簡単だ。
動物性タンパク質が腐敗した、独特の甘ったるさを持つ強烈な臭いが鼻を衝く。
腐敗と分解が進んでドロドロねちょねちょに土と混じった生ゴミの中へ手を突っ込んで、固形物を探す。
埋めていて良かったよ。ミミズみたいな虫が混じっていることは有るけど、大量の蛆が湧いていたりしたら、さすがの私も生ゴミに素手を突っ込む勇気は無かった。
「・・・有った」
太さ1センチメートル、長さ4センチメートルほどの、若干、平べったい石。
まだ所々に肉片がこびり付いているけど、私の小指ほどの結石は、いくらかの肉片が剥がれ落ちていて、透き通った緑色の地が見えている。
恐らくだけど、これが魔石で間違いないと思う。
そして、予想通り、くっさい。
目的のモノを見つけたので、さっさと埋め戻してニオイの元を断つ。
違いが気になったので、別のゴミ穴も2ヶ所、掘り返した。
地面の土に擦りつけて肉片の残りを落とし、小川へと走って、石と手をよく洗ってから洞へと戻る。
ルナリアは、大人しくアマチャヅル茶のお代わりを飲んでいたようだ。
「・・・ただいま」
「あら。お帰りなさい」
「・・・ああ、臭かった」
「確かに、少し臭うわね」
私の手を取って鼻を近づけたルナリアが、微妙な顔をした。
手を取られたついでで、ルナリアの手のひらに石を載せる。
「風属性の魔石ね。何の魔獣から採れた魔石?」
「・・・シカ」
「この鹿、風属性だったのね」
すでに燃えカスになっている焼き肉の串に使った小枝を見る。
「・・・こっちがイノシシで、こっちがヘビ」
「ボアは土属性で、バジリスクも風属性なのね」
差し出すと反射的に手を出したルナリアの掌に、茶色と緑色の魔石を置く。
茶色がイノシシで、シカと同じ緑色だけど少し大きいヤツがヘビだ。
何の魔獣が何の属性か、まではルナリアも知らなかったらしい。
「・・・それで、使い方は?」
「詳しくは知らないわ。刻印術式で魔石の魔力を吸い出して魔法道具の魔力源として使うの。大昔にエルフ族が滅んで以降、刻印術式は神教会の独占技術になっているから私たちには使えないわよ」
「・・・エルフ! って、滅んだの?」
「神教会が難癖を付けて、西方諸国が寄って集って滅ぼしたのよ。あの連中、“ヒト族至上主義”で獣人族も邪悪な魔物だって迫害しているわ」
「・・・うわぁ・・・最低」
人族至上主義、だっけ? 前に情報量が多すぎて聞き流したヤツだったな。
なんで、わざわざ「人」族なんて言うのかツッコむか迷ったけど、聞きたいことの優先順位ランキングで上位に入れずに私の脳内から忘れ去られたヤツだ。
偏った「選民思想」を利用する宗教なんて地雷以外の何物でも無いヤツじゃん。
「でしょ!? 神様の名前で処罰するから獣人族を捕まえて罪人として神教会へ送れって、うちの王国にも、ずっと圧力を掛けて来てるのよ」
「・・・送ってるの?」
「拒否するに決まってるじゃない!」
「・・・だよねぇ」
やっぱりこの国は、まともっぽい。
「・・・そういや、ヘビ食べる? 一応、干し肉にしてあるけど」
「食べるわ! 高級食材なのよ?」
高級食材なの? あれが?
こっちの世界でも、ヘビ皮の価値は高く売れるのかな。
「高級って言うくせに、そんなに美味しくなかったわね!」
お気に召さなかったか。
私は小学生時代にも食べようか悩んだこと有ったからね。
日本のヘビじゃあ小さすぎて食べるお肉が殆ど無いから止めたけど。
私、子供の頃、虫を食べるか真剣に悩んだことも有るんだよ。
用水路のザリガニも食べたけど、残留農薬が何たらかんたらって聞いてから止めた。
魔石は大きい方が魔力が強いんだよね?
ヘビの魔石のほうが強いのなら商品価値が高そうだし、また捕るよ。
デカいヘビでも箱ワナかトラバサミなら安全、かつ、大量に捕るのは可能な気がする。
ヘビが風属性って なんでなんだろう?
魔法道具というのは家電製品的な便利道具で、用途の違う属性の魔石で動かそうとすると魔法道具の性能が落ちるらしい。
やっぱバッテリーだな。
とても高く売れるのは、火属性と光属性。
魔法道具の武器と火属性の魔石は相性が良いらしくて、世界各国の軍隊や治安組織なんかの需要が高いんだって。
魔石の他、魔獣から採れた素材の輸出はリテルダニア王国経済の柱で、食料や塩、武器なんかを他国から輸入している。
神教会からの要求を拒絶しているせいで、神教会しか作れない魔法道具は西方諸国を経由してクッソ高い金額で輸入するしか無いらしい。
これが“融和派”が「融和」を掲げる理由の一つで、“融和派”は獣人族を含めた亜人種族を神教会へ献上することも主張しているそうだ。
生活必需品の塩の調達を輸入に頼らざるを得ないのは、リテルダニア王国には海が無いかららしい。
ん? それって、塩が採れたら状況が一変する?
ちびっ子魔法使い⑭です。
魔石には夢が詰まっているんだよ。
次回、さらに魔法は進化する!




