魔法使いの誕生 ⑥
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
沢山のことが有って、沢山歩いて疲れてて、沢山頑張って、お腹がいっぱいになったら眠くなるよね。用意してあった灯明に急いで焚き火の火を移す。
「・・・ルナリア。ここで寝ちゃダメだよ」
「んー・・・」
「・・・こっち来て」
「はぁい・・・」
眠そうに目を擦るルナリアを先導して、樹の根の隙間を潜って魔法で行灯に火を灯し、天井の穴へとルナリアのお尻を押し上げる。
「・・・寝床が固くて寝苦しいかもしれないけど」
「ううん・・・。大丈夫」
「・・・じゃあ、おやすみなさい」
「ねえ、フィオレ」
「・・・何?」
焚火の周りを片付けようかと1階に降りようとしたら、呼び止められた。
寝床への移動で目が覚めちゃったかな?
「あの・・・。一緒に寝て?」
「・・・片付けて来るから、ちょっと待ってて」
「うん・・・」
壺に放り込んだお肉の残りとか、マグカップのお茶とか、そのままにしておくと臭いで野生動物が寄ってくる恐れが有るからね。
ほんの5分ほどで片付けて寝床へ戻ると、ルナリアは眠そうだけど、まだ起きていた。
向かい合わせになってルナリアの隣に寝転がる。
獣脂の行灯は小さな炎で薄暗く、臭いはずの脂が焼ける臭いは、上まで抜けている樹の空洞の煙突効果か、寝床に籠らず薄い煙と共に抜けていく。
目を伏せていたルナリアが、迷いを含んだ眼差しを向けてきた。
「ねえ・・・。二ホンで暮らしていた頃の話を聞かせてもらってもいい?」
「・・・いいけど、気持ちのいい話じゃないよ?」
「うん・・・」
ルナリアには、ちゃんと話しておいたほうがいい気がして、生い立ちから話した。
ルナリアも努力と挫折を知っている子だから、あなただけじゃないよ、と伝えたかった。
31歳まで一人で生きた私が、何をされ、何を感じ、何を考え、どう生きて、死んだか。
誰かに自分の人生を話したことなんて、一度も無かった気がする。
そんな余裕も無かったし、生き延びるだけで必死だった。
小学生の頃なんて特に、私って、よく生き残っていたな、と感心せざるを得ない。
施設に回収されて以降も、他人との接し方や距離感がまるで分からなくて、最期の瞬間を迎えるまで友達の一人も居なかったしね。
私を捕獲して回収した地方公務員も施設の職員も、ビジネスの1案件として粛々と処理していただけだったから事務的な受け答えをするだけで、お肉を引き取ってくれる肉屋さんとジビエ料理店の人と毛皮のオッサン以外とは、まともな会話をしたことも無かったし。
彼らだって、変わった便利な子供、ぐらいの認識で私を面白がっていただけだろう。
高校時代の3年間だって、交渉して施設に居させてもらっただけで、全ての学費や生活費も自分のバイト代や狩猟成果で稼いでいた。
就職してからも、業務以外で私が自分から口を開くことは無かったし、空気の私を当て馬にするか食い物にするかの、下心が見え見えの連中しか近付いて来なかったから、私も頑なに空気で在ろうとし続けた。
自分の口に出して話してみると、最悪の寂しい人生だったんだなあ。
境遇にも、周りの人間にも、自分自身にも恵まれていなかったことを、今さらながらに気付かされた。
自分自身の人生だったのにね。
「どうして・・・! そんなのひどい・・・!」
ルナリアは、わんわん泣いた。
「・・・もう。なんでルナリアが泣くの」
「だって! ・・・だって、酷すぎるわ・・・!」
怒って、泣いて、また怒って。
泣き疲れて眠ってしまうまで、ずっと泣き続けていた。
ありがとうね。あの世の私も浮かばれると思うよ。
あれ? 私、あの世には行っていないのか。
自分の話なのに、ルナリアから貰い泣きしそうになっていた私の涙が、今、この世界で生きている自分に気付いたら引っ込んでしまった。
子供って体温が高いから、引っ付いていると暖かくて気持ちいいんだね。
ぽかぽかしていて湯たんぽみたい。
ぐずぐずと洟を啜りながら眠りに落ちるルナリアを抱きしめて宥めていたら、いつの間にか私も寝落ちしていた。
ちびっ子魔法使い⑥です。
アハーン。イヤーン。
ベッドシーンでした!
次回、状況が判明する!




