魔法使いの誕生 ⑤
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「なななななな、なんで、いきなり成功してるのよ!?」
何とか言うカードゲームアニメのオープニング曲みたいになってるよ?
ナナナナナナナー、ラッシュ、ゴー、ラッシュ、とか言うやつ。
私は見たこと無いけど、昔、高校時代の短期バイト先で、バイト仲間が歌ってたんだよ。
でも、出来ちゃったねぇ。火打石さん、お疲れ様でした!
今日まで大変お世話になりました!
なんで出来たんだろう?
「・・・やっぱり、イメージ?」
魔法って技術は物理現象と無関係では無いんだと思う。
魔力の存在自体がファンタジーではあるけれど、徹底的にファンタジーでは無いんだね。
両肩を掴まれて、がくがくと揺すられる。
「初めてなんでしょ!? すごいわ! でも有り得ないわ! どうなってるのよ!」
「・・・るるるルナリア。ももももうちょっと静かに」
「あっ・・・!」
暗殺部隊に追われている身であることを思い出したのか、パッと両手で口を押える。
ほんと、ルナリアって可愛いよね。
「わたし、術式を発動できるようになるまで、すごく苦労したのに・・・」
「・・・そ、そうなんだ」
「しかも、無詠唱で、なんて・・・」
今度は一転して、がっくりと落ち込み始めた。
肩を落として俯いている、ふわふわの金髪をなでなでする。
「・・・先生って、厳しいの?」
「うん・・・。叔母様は100年に一人って言われる、すごい天才魔法術師だもの」
そっかぁ・・・。
ルナリアの先生である叔母様は、ルナリアの家の親戚家の御当主様でもあるらしい。
女傑ってやつかな。
この世界では「魔法使い」ではなく魔法術士と呼ぶらしい。
術士? 術師? 偉い先生っぽいから「魔法術師」かな?
ルナリアは、先生を尊敬しているんだね。
天才肌の先生なら、厳しくても不思議は無いのかな?
要求水準が高いのかも。
自分自身が学んだときにどうだったかが判断基準で、誰にでも同じことが出来て当たり前って人が、たまに居るんだよね。
そういう人って別に悪気があるわけじゃなくっても、「それ、判断基準がおかしくない?」 ってツッコミたくなるときがある。
がんばったのに上手くできなくて、叱られることも有ったんだろうね。
ルナリアは賢い子だけど、「出来ない」って尊敬する人に責められるだけでも辛いよね。
ヨシ、ヨシ。がんばったんだね。
ちょっと、罪悪感・・・。
落ち込ませてごめんね。でも、お陰で魔法って技術の理屈が少し理解できたよ。
使い方とか使い所とか検証の余地が色々と有るけど、手段が増えたことは素直に嬉しい。
とはいえ、このままルナリアを落ち込ませておくのも良くないよね。
なにせ、私たちには「暗殺者から逃げ切る大仕事」が待っている。
「・・・ルナリア。見てて」
「何するの?」
ごそごそと始めた私の手元をルナリアが覗き込む。
焚き火の傍には火熾しに使う火打ち石と火種用の枯れ草の繊維が転がっている。
丸めた枯れ草の真横に火打ち石を立てて、斜めに振り下ろした折れた剣と火打ち石がガツンと当たってパシッと火花が散った。
何度か打ち合わせていると、弾けた火花が枯れ草に移ってポッと小さな火が熾った。
発生した熱が冷めないうちに急いでルナリアの手を取る。
「・・・どう?」
「熱っ!」
ルナリアに指先で触れさせたのは枯れ草の火種ではなく火打ち石。
火花が飛ぶほどの擦過熱で火打ち石の打撃痕は熱を持っているのだ。
火傷するほどではなくても、それなりに熱くなっている。
「・・・ルナリアは、何かに肌が擦れて熱く感じた経験は無い?」
「あるわね」
「・・・物と物が擦れると熱を持つんだよ。その熱の温度が高いと火が点く」
「へぇ・・・。火って、こうやって生まれるのね?」
ふむふむと頷くルナリアの目には理解の光がある。マジで賢いな、この子。
「・・・そう。火が点く過程を想像しながら魔法を使ってみて」
「想像―――、いめーじするのね。・・・いめーじ。・・・いめーじ」
うんうんと人差し指を立てて暫く唸っていたルナリアの指先に、ポッと火が灯った。
「やった! やったわ! 無詠唱よ!」
「・・・がんばったね」
肩を抱いてヨシヨシと頭を撫でていたら、魔法を使って疲れたのか、気持ちよかったのか、ルナリアがこっくりこっくりと船を漕ぎ始めた。
ちびっ子魔法使い⑤です。
無事に進化しましたね!
次回、ベッドシーンです!




