魔法使いの誕生 ③
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
ルナリア先生によると、この異世界の歴史の一面は、こうだ。
何と、その勇者召喚というものは、記録―――、というか、その勇者が遺した書籍が現存している人だけを取り上げても、500年以上も昔から常習的に行われているらしい。
その異世界拉致被害者たちが遺した書籍には、故郷に残してきた家族を想う記述や、地球でやり残したことを悔いる記述が有って、その写本を読んだルナリアは、その人たちが可哀そうで、悲しくて、腹が立って仕方が無かったそうだ。
しかも、拉致犯罪者集団である宗教団体は、ルナリアの母国に対して頻繁に無理難題を吹っ掛けて粘着してくるサイコなカルト教団らしい。
いきなり右も左も言葉も分からない異世界に召喚されるなんて、その拉致被害者たち、私のときよりも、ある意味ではハードモードだったのかもね。
ん? 召喚?
日本では異世界モノのエンターテイメントって一般的に馴染んでいるから、危うく聞き流すところだった。
他にも聞き流した情報が有った気がするけど、色々と情報量が多すぎるから、今は一番重要そうなヤツ以外は全力でスルーだ。
「・・・ルナリア。召喚って言った?」
「ええ。召喚術式よ」
「・・・それって、魔法?」
「クソ教会が独占、秘匿している魔法術式ね」
また、クソって言っちゃってますよ? お嬢様。
それよりも。
「・・・あるの? 魔法」
「有るわよ。ほら」
ぶつぶつと何事かを唱えて、「ふぃあ」とか何とか言ったら、ルナリアが立てた人差し指の1センチメートルほど先に、ライターの火ぐらいの小さな炎がポッと灯った。
「・・・おおっ! すごい!」
「すごいでしょう!」
目を瞠る私を見て、ルナリアがフンスと得意げにぺったんこの胸を反らした。
何じゃ、こりゃあ! 火打石、要らないじゃん!
ずっと火を出せるのなら調理するのに薪も要らないじゃん!
ルナリアの両肩を、がっしりと掴んだ。
「・・・教えて。魔法」
「構わないけど、魔力を持っていないと使えないわよ?」
「・・・まりょく、って何?」
「魔力は魔力だわ。こう、胸の中にある熱と言うか・・・」
分っちゃったよ。ルナリア・・・、説明が上手なタイプじゃ無いんだね。
んん? あれ?
「・・・熱って、熱い塊みたいなやつ?」
「そう! それよ! ・・・有るの?」
「・・・うん」
この子の魂じゃなかった! どこ行ったの! この子!
死んだんだろうなあ、とは思ってたけど、ちょっと、ショックだよ!
動揺している私とは対照的に、ルナリアの表情がパァっと輝いた。
私の両手を捕まえて、ぎゅっと握る。
「フィオレもやってみるのよ! わたしが教えてあげるわ!」
「・・・う、うん」
一瞬でレッドゾーンへ振り切ったらしいルナリアのテンションに、ちょっと引く。
私たち以外は無人の森の中だから良いけど、街中だったらご近所迷惑になるレベルだよ。
ああ、無人じゃなかったね。
暗殺部隊が居るはずだけど、数キロメートル先までは聞こえないよね、たぶん。
「魔法を使うには、魔力を出して呪文を覚えなきゃいけないのよ! だから、まずは魔力を出す練習をするのよ!」
「・・・出す? ・・・これ、出るの?」
自分の胸に手を当てる。
そこに熱が有るって分かるだけで、意図的に動かせる気がしないんだけど。
「出るわ! すごく難しかったけれど、出たわ!」
「・・・出すのが難しいんだね?」
そっかあ、頑張ったら出たのかあ。
「慣れると、そうでもないわ!」
「・・・お、おぅ。慣れの問題、と」
「慣れるまでが大変なのよ! 叔母さ・・・先生なんて、お話ししながらでも魔法を使えるのに!」
オバサン先生? ・・・いや、叔母様がルナリアの先生なのかな。
ふぅん? 現物が出ないときの検尿や検便みたいに、気張って体の中から何とか絞り出すものなのかと思ったけど、そうでもない?
ものの例えが下品? 伝われば何でも良いんだよ。
一番、最初に習う、魔法の初歩の初歩らしい“火”の魔法の呪文は、「熱きものよ来たれ。赤きもの。かたち無きもの。姿を持ちて顕現せよ」という、何となく仰々しい言い回しの一文らしい。
でも、どこから出すんだろ?
「・・・ルナリア。ちょっと、指見せて」
「わたしの指?」
首を傾げながらも手を差し出してくれたので、さっき火を出していた人差し指の指先を、まじまじと観察する。
「・・・穴、空いてないね」
「空いてるわけないじゃない! でも、どうして?」
「・・・いや、どこから、その魔力が出たのかな、と」
鼻水は鼻の穴から出るし、唾液は口から出る。
おしっこやおならは―――、いや、何でもない。
ちびっ子魔法使い③です。
ついに、魔法と出会いました!
次回、穴の話!(ウソです




