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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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血塗れの精霊 ⑩ ※ルナリア面

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

 しばらく這っていると、溝が終わって隠れる場所が無くなってしまった。

 精霊様に手を引かれるまま、太い木の幹の陰に隠れる。

「・・・行くよ。私が踏んだ場所だけを踏んで、付いてきて」

「あ、あの、精霊様?」

 どこへ? と、聞いていいものかと迷いながらも声を掛けたら、チラリと馬車の方を見た精霊様は、再び前を向いてしまった。


「・・・急いで。・・・騎士様たちが頑張っている内に」

「あっ、はい」

 そうだった。わたしは彼らの意思を無駄にするわけには行かないのだ。

 精霊様を真似て、腰を低く、身を屈めたまま、精霊様が踏んだ場所だけを選んで歩く。

 精霊様に手を引かれて、自分の足元だけに集中して歩く。

 裸足で歩くのは足の裏が痛かったし、慣れない中腰で歩くのは、なかなかに足腰に負担が掛かって辛かった。

 生きるか死ぬかの瀬戸際でなければ、弱音を吐いていたと思う。

 わたしの代わりに敵兵と戦ってくれている騎士たちを想えば、泣き言なんて言えない。


 どのぐらい歩いたのか、精霊様が足を止めた。

「・・・ちょっとだけ休憩しよっか」

「はっ、・・・はいっ・・・」

 もう、そろそろ限界、と思っていたところだったので、ありがたく岩陰に座り込む。

 叔母様に鍛えられてはいるけれど、普段、使わない筋肉を使ったことで、足はパンパンだし、すごく喉が渇いた。


 大きく息を吐いたわたしの目の前に、すっとバンブーの木の切れ端が差し出された。

 バンブーの木っていうのは、様々な道具の材料に使われる木材で、遠い異国の呼び名だと“タケ”って言うのだったかしら。

 ちゃぽん、という音がバンブーの木の切れ端の中から聞こえて、水が入っていることを察した。

 飲め、ってことよね?


 普段のわたしだったら、毒殺を警戒するように言いつけられているので、傍仕えの毒味も無しに何かを口にすることは無いのだけれど、今のわたしに精霊様を疑う気持ちなんて、これっぽっちも無かった。

 躊躇い無く水筒の栓を抜いて、コクコクと喉を鳴らして水を飲む。

 はあ・・・、生き返る。

 独特の木の臭いがする水は、とても美味しくて体に染み渡るようだった。

 幸せな気分で大きく息を吐いた。


「はふぅ・・・」

「・・・よく頑張ったね」

 わたしの隣に精霊様も腰を下ろして、労わるように髪を撫でてくださった。

 嬉しいけれども、少し恥ずかしかった。

 だんだん顔が熱くなってきて、わたしは俯いてしまった。

「あ、あの、ニンフ様・・・?」

「・・・あっ、つい。ごめんなさい」

 あ、謝らないでください。

 お父様は包み込むように抱きしめてくださるけれど、髪を撫でることは滅多に無いし、叔母様は、よく撫でてくださるけれど、叔母様のは、がしがし、とか、ぐりぐり、って感じなのだもの。

 優しく撫でる手つきは、なんだか、亡くなったお母様みたいだったから・・・。

 精霊様が首を傾げる。


「・・・その、にんふ、って何?」

「精霊様・・・ですわよね?」

「・・・・・せいれい?」

 怪訝なお顔の精霊様が、ご自分を指す。

 うん? 話が嚙み合っていない?

 続く言葉に、わたしは飛び上がって驚いた。


「・・・私、人間だけど」

「ええっ!? ・・・あっ」

 わたしは自分の声が大きい自覚が有るから、慌てて自分の口を塞ぐ。

 ちょっ! うそ! 人間!?

 こんなに綺麗なのに!?

 少しでも目を離したら、光の粒になって消えてしまいに思うほどなのに、わたしと同じ人間なの!?

 心の中の動揺を呑み込んで、もう一度、確認してみる。


「・・・あの。本当に人間なんですの?」

「・・・・・人間に、見えない・・・?」

 精霊様―――、いいえ、目の前の女の子は、ショックを受けたように肩を落とした。

「いっ、いえ! そうじゃなくって、あんまりにも綺麗でしたので! ・・・あっ!」

 慌てて否定しようとしたら、また声が大きくなって、慌てて自分の口を塞ぐ。

 疑わし気に見られたので、大きく頷く。


「だって、そんなに綺麗な銀色の髪に、質素だけど森の木と同じ色の服を着て、菫色の瞳も綺麗で。・・・それに、とっても良い匂いがしますもの」

「・・・服の色? これ、返り血・・・」

 自分の耳を疑った。

「か、返り血?」

 声が裏返ってしまったわたしに、女の子はうんうん、と頷いた。

 よく分からないけれど、何か納得した様子。


「本当に人間なんですのね」

「・・・そうだよ?」

「・・・そうですのね」

 精霊様に、どうやってお礼をしたものかと思っていたけれど、人間だったら、わたしも人間として礼を尽くすべきだと思う。

 顔を上げて立ち上がる。

 背筋を伸ばして深々と一礼する。


「まず、危ういところを助けていただいたことを、心より、お礼申し上げますわ」

「・・・ん」

 当たり前のことをしただけだ、と言わんばかりの気負いのない答えが返ってきた。

 じっと薄紫色の澄んだ目を見る。

 そう・・・。あなたは何の見返りも求める気が無いのね。

 簡単に人を信じるな、と、お父様も叔母様も言うけれど、彼女は信じられると思う。


「わたくしは、ウォーレス家、三女、ルナリアと申します」

「・・・アッ、ハイ」

「お名前を伺っても?」

 そう聞いたら、数瞬ほど目を見開いて固まって、それまで淡々として落ち着いて見えた彼女が、急におろおろとし始める。

 わたし、名前を聞いただけよね?

 目を泳がせたり、周りを見回したりと落ち着きを失くした末に、その子は、本当に消え入りそうな小さな声で呟いた。


「・・・フィオレ」

 そうなのね。

 それが、あなたの名前なのね。


 フィオレ。

 心の中で反芻して、噛み締める。

 自分の頬が緩むのを感じるけれど、引き締められない。


「フィオレ様、ですのね」

「・・・様、なんて要らない。あと、敬語も要らない」

「そう。だったら、わたしのことも、ルナリア、と呼んでちょうだい。フィオレ?」

「・・・ええ?」

 困った顔で慌てる姿が可愛らしい。

 だから、わたしはもう一歩踏み込んだ。

「よ・ん・で・ちょ・う・だ・い」


 この後、突然、泣き出してしまった彼女を宥めるのに、わたしは大慌てしてしまった。

 泣きながら笑う彼女も、本当に可愛くて綺麗だった。

 これが、わたしルナリアと、わたしの半身とも言える不思議な少女、フィオレとの出会いだった。

森の小人さん⑩です。


互いに繰り出す拳と拳!

ダブルノックアウトから始まる熱き友情!(ウソです

次回、幼女は決意する!


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― 新着の感想 ―
ペンネームはにのまえ ふみ とおよみするのですか?
確信してしまった これは最高の作品だと
>森の小人さん⑩です。 前から気になっていたんですけど森の小人さんって何ですか? 旧題からサブタイトルを変更して反映していないとかですかね??
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