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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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血塗れの精霊 ④

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

 わくわく! なんて思っていた頃が私にも有りました!

「・・・・・・・」

 まだ1キロメートルも歩いていないが、私の表情は憮然としたものになっていた。

 たかが20メートル、標高が上がった程度で大きく植生が変わるなどと期待してはいなかったけど、代わり映えし無さ過ぎる。


「・・・リスクを冒してまで崖を登った意味とは」

 崖の上も地勢はほぼ平坦で、微妙に登っている気はするけど、地表に顔を覗かせている岩石の数が増えてきたぐらいで、本当に崖下と変わらない。

 小川の向こう側も同じ感じなのだとしたら、馬車や甲冑の人の真上にある崖の上には、本当に道が有るのだろうか?

もう、数百メートルは崖から離れているのに、有るのは獣道ぐらいだ。


 私の予想では、崖上には森の中を貫通する街道―――、というか馬車が通れる道が有って、小川を越える吊り橋みたいなものが有るんじゃないかと思っていたんだよ。

 これだけ岩石が多くて地面の凹凸が大きいと、簡単に道なんて整備できない気もする。

 それでも道を整備するほどに重要度が高い経路なのだとしたら、もっと人間の往来が多くて野生動物は近付かないだろうなあ。

 そもそもが、崖上を崖に沿って平行移動して来ても、小川に突き当たると高さ20メートルの谷に行く手を阻まれるんだよ。

 吊り橋が無ければ、完全なるドン詰まりの場所。


 そんな場所に何しに馬車で来たんだろう?

 私みたいに山菜採りや狩猟をしている最中に、襲われた?

 荷馬車は有っても、あんな高級そうな馬車で森に入るなんて無さそう。

 予期せぬ襲撃者に追われて、仕方なく道無き森の中を突っ切ってきた?

 仮に、そうだとしても、襲撃者側が何とか馬車が通れるルートを事前に調べて、相当に上手く誘導してそのルートへ追い込まないと、崖まで辿り着かないんじゃないかな。

 何らかの裏取引で人気(ひとけ)の無い場所で落ち合って、密談相手に襲われた?

 それにしては森の奥まで入り込み過ぎている気がする。

 ・・・仕方なく森を突っ切て来た線が一番濃厚かなあ。

 馬車を操る御者が襲撃者の一味なら、追手と結託すれば可能かもしれない。

 足を止めて大きな溜息を吐いた。


 ・・・ダメだな。

 思考が悪い方向へと入っている。

 黙々と歩いてるのに「何も無い」から余計な方向へ思考が逸れるんだよ。


 馬車と甲冑の人を見つけたときから、ずっと不安に思っていた。

 他に行くアテが無いから、気付かないフリをしてきただけだ。

 常識も基礎知識も何もかもが違う異世界で、私一人きり。

 生き残れる可能性が僅かでも有りそうな森へと逃げ込んだけど、半年耐えても先行きの見通しは立たない。


 ・・・もう、どうすりゃ良いんだよ。

 私の深い場所にある不安な思いが、死者にお花を手向け続けていた理由かもしれない。

 空元気で誤魔化したところで、決定的な何かが起こりそうで、ずっと崖の上に登らないほうが良いと避けていた。

 避け続けても不安感を拭えないほどの、どん詰まりを感じていたから崖上へ登った。


 半年以上先まで食い繋げるほどの干し肉を作って、まだ作り続けているのも不安な心理の表れだったのかも知れない。

 売ればおカネになると自分に言い聞かせていたけど、売りに行ける目処も立っていない。

 そこに居るだけで攻撃対象になる浮浪児から、誰が干し肉なんて買ってくれる?


 外壁に守られたあの町の門番は人間の出入りを検閲していた。

 私はあの町から外に出るだけでも神経を磨り減らしたんだ。

 存在自体が疎まれている浮浪児の出入りを、門番が通してくれるとは思えない。

 人間コミュニティからの排除。この時点で、もう詰んでるんだよ。

 冬の寒さを乗り越えるための炭団も作っては居るけど、実際の冬が来て寒さに耐えられなければ一巻の終わりだ。


 更には、自分の住居周辺が暗殺に打って付けの場所に使われていて、下見に来た暗殺者集団の一味が、うろついているかもしれない。

 敵対的な相手に襲われたら、幼女に対抗策なんて逃げの一手しか無い。

・・・社会から排除対象になっている浮浪児が、これ以上、どこに逃げられるんだよ。


 人間コミュニティとの断絶は、日本に居たときだって、ここまで酷く無かった。

 前世の私は日本で生まれた日本人だったから、互いに避けていただけで日本社会からの排除対象とまではされていなかった。

 今の私の髪は銀色で、あの町で私と同じ髪色は誰一人として見掛けた記憶が無い。

 あの町の―――、いや、この地域で私は浮浪児である前に、異民族である可能性が有る。


 地球の歴史上、異民族に対する弾圧と排除の例は数え上げるまでも無かった。

 異物への警戒と恐怖心が排除を生み、断絶と暴力は殺戮へと至る。

 異物である私は、いつ殺戮対象になってもおかしくない。

 町へ近付くこと自体が私にとって危険なのだ。森なら安全かと言えば、それも違う。

 今まで森に入って来た人間と遭遇しなかった現状の方が奇跡的だろう。

 餓死寸前の幼女が1日も掛けずに歩いて来られたほど、町から近すぎるのだから。


 森から出なければ攻撃されないと楽観的に考えたとしても、長くは現状を維持できない。

 いくらかの体力が付いたとはいえ、6歳児が一人で森の木を切り出して家を建てる?

 そこまでの体力も腕力も無いし、出来たとしても精々が竪穴式住居っぽい何かだ。

 バナナの葉みたいな屋根に使える大きさの植物も発見できていない。

 これで、もう少し体が成長して、洞の寝床に入れなくなったら完全に詰む。

 考えれば考えるほど、どうしようも無いぐらい追い詰められてる。


「ああもう! 休憩、休憩!」

 すごく悪い予感がする。悪い方向での私の予感って当たるんだよなあ。

 前世の私の人生は、私にとって良くないことが起こる方が圧倒的に多かったし。

 あの大量の干し肉、どうしよう?

 逃げるにしても、私の半年間の幸運と努力と試行錯誤の結晶が。


「・・・あれを全部捨てて逃げるなんて報われ無さ過ぎるよ・・・」

 涙でてきた。

 非力が悔しくて、無力が悲しくて、洟を啜る。

 殺されるよりマシ、なんて分かっている。

 それでも涙が出る。


 力が欲しい。

 独りでも生計を立てて暮らせる力が欲しい。

 理不尽に振るわれる暴力に負けない力が欲しい。

 他人を信じられない女一人の身で、蓄えられるだけの知識は蓄えたつもりだった。


 もちろん、まだ確定したわけじゃない。でも、その可能性が有る。

 ならば、最悪を想定して、覚悟と方針だけは決めておくべきだ。

 悔しいなあ・・・。せっかく、がんばってきたのに。

 危なくなったら逃げる。持てるだけの食料を持って、寝床を変える。

 再確認に過ぎないけど、そう決めた。


 いつまでも泣いていられないと洟を啜って居たら、聞こえてしまった。

「―――!」

 遠くから聞こえる怒鳴り声と、甲高い声が。

森の小人さん④です。


現実見ろ?(やだよ)

次回、エマージェンシー!

インシデント発生! インシデント発生!

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― 新着の感想 ―
 怒号が聞こえるとは、状況が既に起こっているからインシデントの次のステップと言う可能性も無きにしもあらず……
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