血塗れの精霊 ③
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「・・・小川の向こう側からは上れるか試していないな」
この森に居着いて間も無い頃に行けるところまで小川を遡上したら、崖から先は小川の土手が谷に変化していて、崖から数百メートルも奥まった辺りで滝に行き当たって、それ以上、遡上できなかったんだよ。
栄養不良幼女が水に濡れた高さ20メートルの滝を登ろうと試みるなんて、自殺行為以前の問題だったしね。
滝壺までの谷底の往復は大変だったし、その一回こっきりで滝壺へは行っていない。
じゃぶじゃぶと小川を渡って、対岸の土手を登る。
こっち側も崖だよね、当然。
予想通りではあるけど、突き当たった崖に沿って小川から離れる。
こっち側の植生も洞の近くと同じで、崖上も崖下も高木が生い茂っていて、日陰になりやすい崖下の土はしっとりと僅かな湿気を含んでいる。
「・・・崖崩れ」
起伏が少ない森の中を歩いて、小川から2キロメートルは離れただろうか。
夏の余韻を残した秋の日差しが明るく差し込む場所に出たと思ったら、差し渡しで100メートルほども大きな岩や倒木が散乱している一角に出て、崖の上を仰ぎ見れば45度ぐらいの角度の斜面になっている。
斜面の中ほどで落差3メートルほどの崖は残っているが、土から抜けた根っこが剥き出しになった倒木の頭が段差に引っ掛かっているので登れそうに見える。
幹の直径が1メートル近くある立派な大木だけど、根っこを伝えば斜めになった倒木の上に問題なく上れた。
倒木の角度は40度近く有りそうで、素足でもギリギリ足を滑らせずに済むぐらい。
踏んだ感触が予想以上にフワフワしているので、油断すると新たな崩落を起こしそうだ。
崩落現場は崩れて数ヶ月ぐらい経っていそうだけど、雨が少ない気候だから崩れた地面は締まっていないだろうし、余計な刺激を与えると再び崩落してもおかしくないだろう。
少なくとも、半年前に私が森へ住み着いて以降、崖崩れのような大きな音は聞いていないし、6ヶ月以上は前に崩落したはずなんだけどね。
「・・・おお・・・、危かった」
ガラガラと眼下へ転がって行った岩を見送って、冷や汗が噴き出す。
倒木の枝に手を掛けた震動が伝わったのか、いくつかの仲間を道連れにして行った。
私の背丈よりも大きな岩がゴロゴロと転がっている斜面を横目に、足元に注意を払いながら倒木の幹を登って行くと、時折、不安定なまま絶妙のバランスで奇跡的に引っ掛かっている岩が有る。
崖の中腹を越えた辺りまで登って来たから今日は崖の上まで行ってみるけど、この崩落跡は危険すぎて常用ルートには使えないと判断した。
いくら降水量が少なくても、数十年、数百年後には、この崩落跡にも木々が根を張って安定した斜面になるのだろうけれど、今はまだ無理。
緊急時なら兎も角、採集で荷物を抱えていることも有るだろうし、毎回、こんなに不安定なルートを昇り降りしていては、命がいくつ有っても足りない。
崖上まで登り切ると崖下から見上げていたよりも斜面の勾配はキツく見えるし、高低差20メートルと言えば6階建てのビルの屋上から地上を見下ろしているようなものだ。
崖下へと下りるときの危険を考えて少しうんざりした。
ちょっと休憩。
蔓で肩に提げていた水筒の栓を抜いて、中の水を少し飲む。
この水筒。崖下の探索中に「竹っぽい何か」が少しだけ生えている一角も見つけたから、今の私は竹筒(?)製の水筒を装備しているのだよ。
この水筒が有ってこそ、探索範囲が広がったとも言える。
竹筒は焚火に突っ込めばお鍋の代わりにも使えるから、スープも作れるようになったよ。
直火で熱して焚火の上で割れた実績がある素焼きの壺よりも確実な安心感がある。
竹っぽい植物は無数に生えているわけではないから、調理に常用できるほど確保できていない稀少資源なんだけどね。
ハラハラしながら登った崖の上から望む眺望は・・・、崖下に生えている木々の背丈の方が遥かに高いので木々の枝葉しか見えなかった。
がっかりだよ。
「・・・・・どっちへ行くかな?」
森の奥へと向かう方向か、それとも崖に沿って小川から離れる方向へ行くか。
小川の方向へ崖上を戻ると谷にブチ当たって行き止まりになるから、選択肢は2方向。
崖上と崖下の植生に大きな違いは見られないから、行くなら森の奥かな。
いつもとは違う植物が生えている可能性が、いくらかは高いだろう。
何が採れるかな?
「・・・わくわくするね」
意気揚々と槍を担いだ私は、崖から離れる方向へと木々の間を歩き始めた。
森の小人さん③です。
生活圏マップに新たなエリアが開放されました!
次回、幼女は鬱に入る!




