幼女サバイバー ⑭
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「・・・お邪魔しまーす・・・」
意を決して、根っこの隙間に頭を突っ込む。暗いけど・・・。
「・・・おお。意外に広い?」
中の広さは畳で2畳分ぐらいはあるかな。
円形状の空間は天井の高さが1メートルぐらいで、小さな私でも腰を屈めないと頭を打ってしまいそうだ。
生木を燃やした効果は有ったみたいで、ツンと鼻を刺激する臭いが有る。
アルデヒドだっけ、殺菌、防虫効果があるけど、虫だけでなく動物や人間にも有害ではあるから、掃除をする必要があるね。
一張羅のワンピースを真っ黒に汚すのは躊躇ったので、潔く脱ぎ捨てて再びのすっぽんぽんになった。
身体だけなら汚れたら小川で行水すればいいし、新陳代謝でそのうち落ちる。
段々、お外で脱ぐのも抵抗感が無くなってきた気がするけど、乙女的倫理観に抵触するので気付かなかったことにする。
別に、お外で脱いだからって幼女が性的な意味で興奮するわけでも無いしね。
母親に対する恐怖と嫌悪感から私は淡白に育ったから、そういう行為に対して31歳の私は最期の最期まで興味も縁も無かったし、正真正銘の喪女だった。
今度は全身で再突入してみると、足の裏に炭を踏み潰すシャリシャリとした感触がある。
適度に焼けたせいか、床―――というか底が丸みを帯びていて、細かい隙間には焚火に掛けた土が詰まったのか何かの出っ張りを踏ん付けて足の裏が痛い、なんてことも無い。
床に土を敷いて踏み固めれば簡単に、平坦になるかな?
上手く行けば、寒い冬には洞の中で焚火を焚いて暖を取れるかもしれない。
「・・・ここか」
暗闇に目が慣れてきて、気付いた。
なるほど、焚火の炎や煙が抜けたであろう穴が天井の奥に空いている。
穴の大きさは直径50センチメートルほどの円形で、私が通り抜けられる大きさがある。
それ以上の奥は暗くて見えそうにないので、一旦、外へ出て焚火に松の枝を突っ込んだ。
何をしているのかって、松明だよ。
松は油分が多い木だから長く燃えるので、文字通り松明になる。
ぱちぱちと燃え盛る松明を手にしたすっぽんぽんの幼女ってシュールな絵だわ。
炎が上がる枝を片手に洞へと戻って、天井の穴の中を照らしてみた。
松明の炎が燃え移って、せっかく消火できた木が再炎上しないように気を付けなきゃ。
「おお・・・、これは」
虫に食われたのか、天井の穴の中には別の空間が有った。
屋根裏みたいに、ほぼ平坦なスペースが有るのだ。
うんしょ、と、松明を手に穴の上へ這い上がってみると、2階の天井の高さは1階よりも若干低い80センチメートルほどだった。
さらに、2階の天井には、煙突のような直径15センチメートルほどの穴が開いていた。
炎や煙は、この穴を通って上へ抜けて行ったらしい。
こちら側にまで炎が回ったのか、細かな木くずやゴミや凹凸まで炭化した床は概ね平坦だから、炭化部分を削り落として磨けばキレイな床になると思う。
「柔らかい草か落ち葉を敷いたら寝られるんじゃない?」
試しに寝転がってみたら、私程度の一人や二人ならば十分に横になれるだけのスペースは有った。
感覚的にはカプセルホテルの個人スペースぐらいの狭さかな。
今の私は小さいから、実際にはもっと狭いのだろうけど。
31歳の私が子供だった頃は、食べることに必死で遊んだ経験なんて無かったけど、秘密基地を作って遊ぶ男の子の気持ちが今なら分かるよ。わくわくするよね!
やるなら、僅かにでも食料に余裕が有る今のタイミングしか無いだろう。
洞から出た私は炭塗れで真っ黒クロスケなすっぽんぽんのまま小川へと歩いて行水して、ごつごつと粗い石と、ざらざらとした幾らか滑らかな石を拾って洞へと戻る。
床から壁から天井から、手が届く範囲を片っ端から、ごつごつとした石で、ごりごりと擦り始めた。
快適な生活のための引っ越しに肉体労働は付き物だ。
弱った体のリハビリにもなるだろう。
ごりごりごりごり
お掃除は上から下へ。
ごりごりごりごりごりごり。
炭化した2階の天上から壁。壁から床へ。
私、こういう無心に没頭できる単純作業って得意なんだよ。
無言で誰とも喋らずに作業できるのが落ち着ける。
ブロック状にヒビ割れた炭化部分を取り除けば意外と綺麗な木目が顕わになってくる。
破砕されて刮ぎ落とされた炭の破片や粉は、床の穴から落として1階へ。
1階も同様に上から下へ、ごりごりごりごり。
炭化した木の表面をこそぎ落したら、ざらざらとした石に持ち替えてブラッシュアップ。
2階の天井から再び、ごしごしごしごし。
もっと目が細かい肌の石で磨き続ければ、かなり綺麗な質感に仕上がりそうだよね。
まだ炭の粉塗れだけど、一通りの炭は削り落とせたと思う。
箒状に広がった枝を使って炭の粉を洞の外へ掃き出そうとして、手を止めた。
・・・これ、炭団が作れるんじゃない?
確か、炭団って売り物にならない炭の粉を糊で固めて作るんじゃなかったっけ。
糊は無くても泥状に練って団子に固めれば「炭団っぽい何か」にはなりそう。
掃除前に「寒い冬には洞の中で焚き火を焚いて」と考えたが、あれは嘘だ。
1階の床に木枠を置いて焚き火の灰を貯めれば囲炉裏になるはず。
細かい粉末になった灰って沢山の空気を含むから空気層が断熱材になるんだよ。
火鉢も同じ理屈だけど、空気層で断熱されて熱が伝わらないから、木造家屋の中で炭団や炭を燃やしても火事にならない。
再び小川で行水して土手に生えているイネ科の雑草を千切り集めて洞へと戻り、マグカップの水に浸した雑草を絞って、ついでに採ってきたセリを齧りながら、洞の内部を2階の天井からごしごし。
汚れて残った水は炭の粉に投入して、もちもちと良いカンジに練ったら団子にする。
この団子が内部まで完全に乾燥すれば自家製炭団の出来上が・・・ったら良いなあ。
焚火の種火が消えてしまわないように定期的に松ぼっくりを放り込みつつ行水と掃除を繰り返していたら、森の中は暗くなってきていた。
「・・・終わり、で良いかな」
大きく溜息を吐いて、満足を表明して頷く。
磨かれて滑らかな手触りになった洞の内部を撫でても、もう炭の汚れは手に付かない。
自画自賛だけど、お世辞抜きになかなかの仕上がりだと思う。
私は帰る家を手に入れた。
晴れて、裸族からも卒業できる。
昨日に引き続き今日も疲れたけど、今日の疲労は昨日よりも心地よいものだった。
松の実を焼いて食べながら、流木の溝に剣先を挟み込んで根元をぐるぐると蔓で縛って槍を完成させたら集中力か途切れて瞼が重くなってきた。
洞の2階へ潜り込んで泥のように眠る。
風に吹かれるのを防げるだけでも暖かいんだよ。
おやすみなさい、私。
幼女降臨エピソード⑭です。
ついに棲み家を手に入れました。
雨風を凌げる家が有るだけで生存率は上がります。
次回、大自然が幼女に牙を剥く!
もとい
幼女が大自然に牙を剥く!




