幼女サバイバー ⑬
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「・・・・・・・・はぁぁぁぁ。・・・本気で焦ったよ・・・」
心配だから、今夜は洞の外で見張って居よう。
火が消えたとはいえ、洞の中は熱々で確かめに入れないしね。
種火を作った方の焚火は、炎は落ちているけど、まだ松ぼっくりが赤々と燻っていて、落ち葉と小枝を継ぎ足して息を吹きかければ直ぐに炎が立ち上がった。
いつまでも脱力しても居られないので、まな板石の上に置いた松の実に剣を振り下ろして殻に切れ目を入れ、焚火の端っこへ転がす。
今日は疲れたから、煎るのは明朝以降にすることにした。
まだまだ松の実は大量に有るから、20個ぐらい放り込む。
松の実が燃えてしまわないように枝の先で突っついて転がしたり、火から遠ざけて殻の焼け具合を調整したり、20個も有るとなかなかに忙しかった。
裏も表も満遍なく焦げて火が通ったと思われる実を、順に火から離して冷ます。
焼き栗ほどじゃないけど甘い香りが漂ってきて、もの凄くおなかがすいてきた。
「・・・あちっ。大丈夫、このぐらいならイケる・・・!」
空腹に耐えかね、熱々の焼き松の実をまな板石の上へ移して、殻の切れ目に剣を当てて半分に押し切る。
「うまぁ・・・」
唾液がとめどなく出て来る。
小枝でほじくり出した松の実を口へ放り込んで、ハフハフと咀嚼する。気持ち控えめな甘みが有って、柔らかくもコリコリとした軽い歯ごたえが残っていて、普通に美味しい。
そこからはもう、焚火に追加の松の実を放り込みながらも、ひたすらに食べた。
涙の味で塩味が追加されたけど、鼻水を啜りながら食べ続けた。
焚火の炎が暖かくて、食べられることが幸せで、目を覚ましたときには朝だった。
相当に疲れが溜まっていたのだろうけど、私は寝落ちしたみたいだ。
春の森の中は季節相応に早朝が冷えるらしく、薄く煙が上っている熾火に落ち葉をくべて火を起こし直した。
「・・・結構、食べたんだね」
中身を食い尽くされて地面に散らばっている松の実の殻は、50個以上あった。
おなかは痛くないし、昨日よりも体調が良さそうだから、この世界の松の実にも毒は無いと確定かな。
ゴミをそのまま放置というのは私のモラルに反するので、私の背丈ほどの木の枝で地面に穴を掘って埋める。
「・・・あれだよね。ゴミ埋めの穴は食べ始める前に掘っておくべきだよね」
虫が湧いても嫌だし、臭いで寄ってきた野生動物に不意を突かれるのも怖いし、ゴミの始末にも気を払わなきゃ。
喉の渇きも覚えているし、折れた剣を背負って、剣先とマグカップを片手に小川へ顔を洗いに行って、出来るだけ硬そうで真っ直ぐな木の枝を探す。
枝なんて何に使うのかって?
作るんだよ。
折れた剣の剣先側と蔓を使って、トドメ用の槍を。
昨夜、私が食べた松の実は50個。
拾い集めた松ぼっくりが1000個有ったとして、松ぼっくり1個あたり平均5個の松の実を回収できたとしても5000個しかない。
1日に2食摂ったとしたら、たった50日分の備蓄でしかないのだ。
松ぼっくりはまだまだ落ちているし、もちろん、もっと備蓄を積み増しするつもりでは有るけど、その程度では安心できない。
地球基準で11月半ばから翌年の3月下旬まで、食料を備蓄に頼る期間は120日を超える。
今年の秋には今年の松ぼっくりが生るにしても、秋まで7~8ヶ月間は有る。
幸いにも、春なら越冬を終えた野生動物が食欲旺盛になる季節だから、活発に移動して活動しているはず。
だから、野生動物が通る獣道にククリ罠を仕掛けて、干し肉の生産を試みる。
ワナに掛かった野生動物は興奮していて近寄ると危険だから、トドメ用の槍を作る。
もっとも、暴れる野生動物の脚の力に蔓が耐えられることが前提なんだけどね。
やってみないと始まらないし、やるしかない。
「・・・これなんて良さそうかな」
川の流れに洗われてツルリと表皮が剥けた流木を見つけた。
剣先の幅よりも心持ち細いぐらいだから私の手のひらで握るには少し太いけど、適度な長さで1.5メートルほど。
岩に叩きつけてみるけど、いい具合に乾燥していて硬くて軽い。
金床代わりの岩の上で、金槌代わりの石で剣先の根元側を叩いて半分ぐらいの刃を潰す。
刃がそのままだと蔓で縛っても蔓が切れちゃう。
折れた剣を鉈代わりに、流木の先をU字に切り込みを入れて削る。
ぐりぐりと抉ったり刃を立てて切ったりして、剣先が嵌る10センチメートルほどの溝が出来る頃には、昇ったばかりだった太陽が中天まで昇っていた。
朝ごはん抜きで午前中を丸ごと働いたから、おなかがすいて松の樹へ戻ることにした。
後の作業は松の実を食べて洞の中を確認してからにしよう。
セリをポリポリと齧りながら、ついでにツクシとギボウシの新芽を少し摘んで、マグカップに水を汲んで帰る。
6時間ぐらい放置していたけど、火が落ちた焚火は松ぼっくりの炭がまだ赤々としていた。
炭火の上にマグカップを載せたら、まな板石の上でギボウシの新芽を切って葉柄だけを取り出す。
茹でて食べられるのって、この葉柄(葉の茎)の部分だけなんだよ。
小川の水で洗ってはきたけど、ツクシも軽く掃除してギボウシと一緒に沸いたお湯へ放り込む。
さっと茹でただけだけど、しんなりしたツクシの灰汁も抜けていて、ぬめりが出たギボウシのシャクシャク感と合わせて、ごはんを食べている実感がある。
青臭さに錆の臭いが混じって微妙に臭いけど、ぜんぜん食べられるね。
醤油は無理だと諦めてるけど、せめて塩は欲しいなあ。
棒で突っついて転がしていた松の実も焼けたし、ほじくって食べる。
うん。普通に美味しい。
おなかも落ち着いたし、ゴミも埋めたし、やるか。
今朝、起きたときには覗く勇気が無かったんだよ。洞の中。
根っこの隙間の外から、洞の中へ腕を差し込んで冷めていることを確認する。
全く熱は残っていないし、ちょっとひんやりしてるぐらいだね。
枯れ切っていない葉が付いた枝を拾ってきて、洞の中の燃え滓や灰を外へ掃き出す。
土と混じっているけど、火事が怖いから念のため後で灰も埋めるかな。
幼女降臨エピソード⑬です。
幼女は棲み家を手に入れることが出来るのか?
次回、ハウジング編?




