幼女サバイバー ⑪
趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。
人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。
雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。
「・・・・・狼に、リンゴ? に、剣・・・かな?」
甲冑の襟首の下―――、肩甲骨の辺りには、盾状の紋章が刻まれている。
図柄の組み合わせから連想するのは、赤ずきんちゃん?
紋章のモチーフに描かれるものには決まり事が有って、紋章学って言うんだっけ?
竜のモチーフは王様の象徴だから王様しか使えない、とかのアレだ。
紋章を見るだけで、どの家系の、どの人の関係者か、が一目で分かるらしい。
残念ながら、雑学としても私は食べられないものに興味が無かったし、そういう学問が存在するって知識しか持っていないし、地球の紋章学と異世界の紋章学が同じものかどうかも分からない。
紋章について無学な私は、面白い取り合わせだな、としか思わなかった。
ごめんね、と、心の中で詫びる。
せめて、私が社会的身分の保証されている立場だったら、馬車の存在を誰かに報せることが出来るのだろうけど、鼻つまみ者の浮浪児では信用が無さ過ぎるのだ。
子供の私の痩せ細った手足では、お墓を作って弔ってあげることも出来ない。
無念の最期を迎えたのであろう犠牲者に、黙って両手を合わせる。
深々と脳を破壊されたのだから、痛みを感じる間もなく亡くなったと思いたい。
「・・・この折れた剣、お借りしますね・・・」
この人の剣だったのかは分からないが、心を込めて祈る。
火を起こせるかどうかは私の生存に関わる重大案件なので、不敬であってもお借りする。
馬車を探る気は毛頭なくなったが、折れた剣先側の破片もワナ猟のトドメ用の槍か何かを作れるかもしれないので、是非ともお借りしたい。
折れた剣の本体側が埋まっていた辺りを中心に、ふみふみと枯れ葉を踏んで回って剣先側の破片を探す。と、私の裸足が固いものを踏み当てた。
「・・・有った」
腐葉土の中から掘り当てた剣先側の破片は20センチメートルぐらいしか長さが無いし、本体側の破断面と合わないので三分割で折れたのかもしれないが、真ん中の破片は使い道が無さそうなので探すのを止めた。
他に現場から借り出したのは、落ち葉に埋もれていた金属製のマグカップを一つ。
地球で金属製マグカップと言えば錆びないステンレス製かホーロー被覆加工が一般的だったが、この世界のマグカップは折れた剣と同じぐらいに、しっかりと錆びている。
事件被害者の誰かの持ち物だったのだと思われるが、手鍋の代わりに使えそうなので、お借りすることにした。
誰かの遺品と思えば躊躇いが無いとは言えないが、生き抜くためには割り切るしかない。
これでツクシや他の山菜を茹でられる。
茹でる、これだけで美味しく食べられる山菜は圧倒的に増えるからね。
錆が気持ち悪い? すき焼きの鉄鍋と同じで、虚弱な私には良い鉄分補給になるよ。
しかし、この剣・・・、子供が持ち歩くには重たいな。
森を歩くのに、両手が塞がっている状態も危なくて頂けない。
はたと、町で見た戦闘職の人たちの出で立ちを思い出し、蔓草を切り出して葉を落とし、たすき掛けで背中に蔓のバッテンを作って、本体側の剣を背中に背負ってみる。
十字型に張り出した鍔が蔓に引っ掛かって、ずり落ちることも無い。
「・・・うん。・・・良い感じ」
残念ながらヤマノイモでは無かったけれど、蔓はワナ作りの他にも色々な用途に使えそうなので、私の身体で運べそうな範囲内で何本か切り出して、丸く束ねて肩に掛ける。
小川へ適当な大きさの花崗岩を探しに行かなきゃ、と考えながら、今度こそ事件現場を後にした。
剣やマグカップを借りたし、咲いている花を見つけたら、お礼でお供えに来てあげよう。
小川の方角は分かっているので、崖から離れる側の森の中へと再び進む。
道に迷わないように、定期的に樹の幹に土を塗りつけて目印は付けてるよ。
土なら雨が降れば落ちるし、目印に気付いた他人が野生動物のマーキングだと誤認してくれるかもしれないから、敢えて土にした。
足跡を残さないように枯れ葉や雑草の上を選んで歩いたり、注意もしてるよ。
私は体重が軽いから、柔らかい土でも無ければ足跡は残りにくいし。
別に私は逃亡者ではないけど、抗う力も無い小さな女の子が無人の森で赤の他人に遭遇するなんて、恐怖でしかないからね。
猟師なんかの専門知識が有る人が相手だと、すぐに見破られるとは思うけど。
「・・・あっ。松ぼっくり・・・?」
しばらく森の中を散策していたら、ひときわ幹が太い大きな樹があって、その根元に、私の顔ほどもある細長いボールのようなものが大量に落ちている。
でも、私が知る松ぼっくりよりも10倍は大きいんだけど・・・。さすが、異世界品種。
松ぼっくりの一つを拾い上げて、鱗片の中を確認してみる。
「・・・やった。残ってる」
カチカチとげとげの鱗片の隙間に、平たい栗ほどもある大きな種子が挟まっていた。
松の実は栄養価が高くて薬膳や漢方薬にも使われる食材だ。世界的に見ても松の実はナッツ類として一般的に食用されている。
煎ったり炒めたりして加熱する必要はあるが、今の私はマグカップという文明の利器を装備している。
殻に切れ込みを入れれば焚火にブチ込んで焼き栗のように調理することも出来るだろう。
なにせ、今の私は、折れた剣という文明の利器を装備しているのだから!
土塗れで錆塗れのマグカップを加熱殺菌する必要もあるので、先ずは、火を起こして煎ってみよう。
その場に座り込んで、小枝で鱗片の隙間から種子をほじくり出す。
一個の松ぼっくりに残っていた種子は7個。周囲の地面を見回す。
ざっと見ても、落ちている松ぼっくりは間違いなく数百個以上ある。
周囲の頭上も見回すと、ここの一角は松の樹が群生している様子で、高い場所の枝にもまだまだ松ぼっくりが残っていて、さらに落ちてきそうだ。
松ぼっくりは油分が多くて優れた薪にもなる。
松の枯れ葉は火が付きやすいから着火剤になるし、枯れ葉も大量に積もっている。
「・・・これ、大勝利なんじゃ?」
とりあえず、明るい内に、と、松ぼっくりを大きな樹の根元に集めて回る。
せっせ、せっせと松ぼっくりを集めてみると、ぜんぜん拾い切れていないのに、松ぼっくりの数は早くも1000個を超えた。
いくつか適当に手に取って矯めつ眇めつしてみると、どの松ぼっくりにも、複数個の種子が残っている。
私が手に入れた松の実は、数千個に及ぶということだ。
種子をほじくり出す作業は内職のような単純作業なので、今する必要は無いね。
幼女降臨エピソード⑪です。
幼女に新たな食料が襲い掛かりました!
逆です!
幼女が新たな食料に襲い掛かりました!
文明の一端を手にした幼女は生き残ることが出来るのか!




