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蒼焔の魔女 ~ 幼女強い 【感謝! 7000万PV・書籍版第1巻2巻2026年1月10日同時発売・コミカライズ企画進行中!】  作者: 一 二三


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幼女サバイバー ⑩

趣味で書いていた異世界転生ファンタジーです。


人様の目に触れさせるのは初めてのことなので躊躇いましたが、思い切りました。

雑で拙いかもしれませんが、異世界に見る夢を共有していただければ幸いです。

 背が低い上に力が無い今の私では、高い場所に実が生る木には登れそうにないし、蔓草なら地上へ引き摺り下ろせば高い場所へ登る必要が無い。

 試しに根っこを引き抜いてみたけど、蔓が途中で千切れることもなく子供の力でも根の先端まで簡単に引き抜けてしまって、根っこが食べられる品種では無いようだ。

 でもまあ、サルナシほどじゃなくても蔓に強度が有りそうならロープ代わりに使えるし。

 この蔓は柔らかいわりに折っても引っ張っても千切れないから使えそうかな? なんて考えつつ、蔓の一本を引き摺り下ろそうと体重を掛けて引っ張る。

 体重が軽い私では蔓の抵抗力と拮抗して、ぶら下がって遊んでいる猿みたいだ。

 いや、遊んでるわけじゃなく、むしろ必死なんだよ。


「・・・あれ? 何これ?」

 蔓草の葉が、もっさりと茂っていて見えにくいけれど、身体が小さな私から見れば小山のような大きさの、何かの人工物が埋もれているように見える。

 蔓草の葉を掻き分けてみると、雨による水垢と、こびりついた土埃で汚れてしまっているが、黒くて漆塗りのような手触りの木製板であることが分かる。

 木製板と言っても、真っ直ぐな平面ではなく、緩やかにカーブする膨らみを持った平面だ。

 この木製板を手作業で作るのは高度技術で非常におカネや手間暇が掛かるだろう。

 寝床作りに使えるものが何か見つかるかな。

 ガサゴソと蔓草を引き剥がしてみたり、覗けそうな空間が有りそうな葉の隙間に頭を突っ込んでみたりしていると、木製板とは逆側の、蔓草のカーテンの内側に空間が有った。

 空間の天井になっている部分を見上げると、「それ」が何か、を、理解できてしまった。


「・・・これって・・・」

 蔓草に覆われて天井のように見えていた物は、横向きになった木製の大きな車輪。

 つまり、これは横転して壊れた馬車だ。

 車輪との位置関係から言えば、漆塗りっぽい木製板は馬車の屋根だったのだろう。

 町で見た荷馬車とは明らかに違う質感の、黒塗り塗装が施された馬車に乗るような人物とは?

 1頭牽きの荷馬車よりも横幅が有る馬車なら、2頭牽きの高級馬車なのでは?

 厄介事の気配をひしひしと感じつつ、導き出される答えは、貴族のような高貴な身分を持つ人物が乗った馬車だったのだろう、ということ。

 そんな馬車が、こんな森の奥で壊れて放置されているのが普通か?


「この崖の上・・・、道が有るのかな」

 高さ20メートルの崖からの転落事故? 到底、乗客が無事で済んだとは思えない。

 馬車の中を覗いてみるべきか? 確かめたほうが良いかもしれないけど、私は怖いもの見たさで野次馬根性を発揮するような人種ではない。

 これだけ蔓草が生い茂るほどの期間が経っているなら、最悪のケースは、中に白骨死体が眠っている可能性が有るのでは?

 ・・・誰かに知らせるべきだろうか。

 で、でも・・・、高貴な身分なら、行方不明になれば捜索されるよね?

 未発見の高貴な身分の白骨死体を浮浪児が通報する・・・。

 街中で私に向けられた害虫を見るような蔑みの目を思い出した。

 私みたいな浮浪児が、事故、あるいは事件に関係している、なんて考える人は居ないと思うけど、見てはいけないものを見たと、文字通り、赤子の手を捻るように、証拠隠滅で私まで殺される恐れがあるかもしれない。


「・・・・・見ない方が良いよね・・・」

 そう呟いて、私はこの場を立ち去ることにした。

 蔓草のカーテンを潜って外に出て、息を整える。ばくばくと鼓動が早まっていて、私は随分と緊張していたようだ。

 子供の頃から数えきれないほど山に入ったが、白骨死体が有るかもしれない事故現場なんて発見した経験は無いのだから、無理も無いと思う。

 一応、馬車に両手を合わせて黙祷してから背を向ける。

 歩き出そうとして、私の素足が何か固いものを踏ん付けた。

 恐る恐る、「何か」の上に積もった枯れ葉を払い除けてみる。

 私の腕の長さほどもある、平たく十字型をした赤茶色の「何か」。


「・・・Oh・・・」

 心理的衝撃で立ち眩み、なんて初めて経験した。

 持ち手の部分まで入れての子供の腕の長さなので、鉈と大して変わらない長さだ。

 酷く錆びているけど、半ばで、ぽっきりと折れたそれは、どう見ても剣だった。

 ・・・・・きっと、事故じゃなく、事件で確定だよ。

 想像されるシチュエーションは、暗殺、・・・かな。


 でも、これで私は火が起こせる。大量生産品の西洋剣は鋳造だったはずだから、軟鉄になるのかな? 赤錆が浮いているのだから、念願の鉄片には違いない。

 周りの地面を見回すと、馬車から5メートルほど離れた場所に、不自然に盛り上がって見える枯れ葉の山が有った。

 手にしたままだった折れた剣で、枯れ葉の山を払ってみる。


「・・・やっぱり・・・」

 朽ちて腐葉土になりつつある枯れ葉に混じって、金髪らしき長い人毛が出てきた。

 人毛って、バクテリアに分解されるのに年月が掛かるんだよ。

 乾燥地帯でもなければ、肉はすぐに腐ってドロドロに溶けるけどね。

 ごくりと息を呑み込んで、覚悟を決める。もう少し枯れ葉を除けてみると、白っぽくて丸い骨が出てきた。

 猟で捕った獲物を解体すれば、当たり前に見慣れているモノだ。


「・・・骨格標本模型じゃない人間のを見るのは初めてよね」

 しかも、頭頂部の辺りに、深く刃物で割られた大きな傷がある。

 きっと、この傷が致命傷だったのだろう。

 諦めの心境で広く枯れ葉を除けてみると、俯せに倒れていたであろう彼、もしくは彼女は、西洋風の金属甲冑のようなものを着用していた。

 甲冑を着て高級馬車の客室に乗るとは思えないから、護衛役を務めていた人だろうね。

 こりゃあ、馬車の中にも死体が有る可能性が高まっちゃったなあ。

幼女降臨エピソード⑩です。


本作品はサスペンスものではありません!

ホラーものでもありません!

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― 新着の感想 ―
いったいどんな幼女が乗った馬車だったんだ!?
まともな道具が手に入る可能性ありそうなのに
なんでもやって生き残ろうとするサバイバーにしては、馬車内にありそうな生活に使えそうな品を即漁ろうとしないのは、潔癖寄りな前世のせいか?
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