生態系の覇者 ⑲
「レティアの町でも目にしたが、素晴らしい生成速度だ。僅か6歳でこれほどまでの技術を身に付けているとは、将来は歴史に名を残す魔法術師になる可能性が有るだろう」
「・・・ありがとうございます」
「が、がんばります」
次代の成長を自身の目で確かめたバルトロイさんはホクホク顔だけど、前魔法術師団団長だったバルトロイさんも魔法が得意なんだから手伝ってくれても良かったんじゃないかな!?
その辺、スパルタなお母様が手助けしてくれるとは考えていなかったけど、拠点構築の度にこんな追い回され方をすると戦闘どころじゃなくなっちゃうよ。
でもまあ、私たちが土と戯れている間、お母様が何をしていたかというと、不測の事態に備えて地下の空間を監視し続けていてくれたんだよね。
「ダンジョンかも!」とか焚きつけたのは私自身だし、防衛力強化を言いだしたのも私自身だし、地下空間を見付けたのも私自身だしね。
おかしなことにならないか監視を引き受けていてくれただけでもお母様に感謝しなきゃ。
そのお母様がどこにいるのかと探してみれば、周辺の掃討作業を新人さんたちがしている姿が見渡せる場所で、岩に腰掛けて目を伏せていた。
相当に意識を集中していた様子で、私たちがほんの数メートルの距離に近付くまで気付いていないようだった。
「おう。終わったか」
「何とか~」
私たちの接近に目線を上げたお母様は、モコモコ作業に集中することを強いられた結果ヘロヘロになっているルナリアの頭をグリグリする。
「・・・地下はどうだった?」
「問題は無さそうだ。ま。今のところはだが」
ぐりぐりついでにルナリアのモチモチプニプニほっぺをビニョーンと伸ばして遊びながら、お母様は肩を竦めた。
「・・・何か気になることでも?」
「気になると言い出せばコレの存在自体が気になるが、問題はコレがどこまで続いているかだな」
「コレ」とお母様が指先で指したのは足元の地面だ。
「そんなの関係ねえ!」とばかりに突っぱねて見せていたけど、バルトロイさんに指摘されたことを結構気にしてたんだな。
でも、そこは大丈夫だよ。
「・・・レティアの地下までってことは無いと思うよ」
「なぜ、そう言える?」
私の大丈夫宣言にお母様が首を傾げる。
「・・・慰霊碑のときにも城壁移動のときにも固い地盤を探して、かなり深いところまで地下の様子を探ったから」
「ふむ。結果は?」
探索深度は地下100メートルどころじゃなかったからね。
超絶重量物を設置するために強固な地盤が有る地下深くまで構造体を伸ばしたんだから。
その途中に水の存在は感じ取れた―――、というより、水が有って嬉しかったのか胸の中で精霊が騒いでたし。
「・・・深い場所に大きな水脈が有るのは感じ取れたけど、空間のようなものではなかったよ」
「大きな水脈というのは?」
「・・・伏流水―――、空洞じゃない地下水脈だと思う」
“伏流水”というものは、地中にある玉砂利みたいな隙間が大きな地層を流れる、いわば“地中の川”のようなものだったはず。
水というものは高きから低きへと流れるけど、圧力が低い場所へ流れる性質が有る。
いや。水の性質ではなく純粋に圧力の問題かな。
抵抗が少ない場所へ流れると言い換えても良い。
「空洞じゃない」という部分にお母様が食い付く。
「魔獣が入り込めるようなものではないんだな?」
「・・・スライムなら通れるかも知れないけど、肉の体を持つ魔獣は通れないよ」
ポドック領の地下水脈みたいに、魚が通って来られるような空間は無いと自信を持って言える。
あの地下水脈も今の私ならもっと詳細に把握できるんだろう。
またポドック領を通る機会が有ったら調べてみよっと。
「そうか。なら良い」
私の自信にお母様が安堵の表情を見せる。
お母様は本当にレティアの町が大切なんだな。
私もお母様と一緒にレティアの町を守るからね。
敵だろうが魔獣だろうが絶対に脅かさせないよ。
とはいえ、お母様がそこまで心配するのが気になって足元の地面へと「足」を潜り込ませてみる。
地中に広く魔力を広げると、私の魔力を感じ取ったらしいお母様が私へと目を向け直してくる。
ん? あれ?
「・・・なんか空洞の位置が浅くない?」
「ああ。移動している間のどこかの時点で浅くなっていたらしい」
おおう。また悪寒が・・・。
そりゃあ、お母様も気にして貼り付くわけだわ。
「・・・こ、これって、大丈夫なのかな?」
「大丈夫というと?」
私の意見を求めてお母様の首が傾ぐ。
だってさ。
焼却炉の場所では30メートルは有ったはずの高低差が、今現在は10メートルちょっとぐらいしかない感じがする。
あくまで感覚的なもので、ハッキリと認識できないから余計に不安感を煽られてしまう。
生態系の覇者⑲です。
フラグ強化!?
次回、異変!?




