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71.好きならば告白を




 好きだとわかったからには、やるべきことはただ一つ。


(好きなら告白しねぇと……‼)


 問題はいつどこで告白するのかなのだが、何も案は浮かんでいなかった。


(取り敢えず今日のお礼の手紙を書くだろ? その時に場所を指定するか…………でもどこがいいんだ⁉ 全くわかんねぇ)


 そんなことを考えているうちに、あっという間に自室に着いた。中に入ると、ミラが待機していた。ドーラとレベッカは離席中のようだった。


「お嬢様。ご用事は済みましたか?」

「あぁ。もやもやが解消したよ」

「それはよかったです」


 調べものをするとだけ伝えて図書室に向かったので、深堀はされなかった。


「ミラ、お礼の手紙を書きたいんだが、便箋と封筒はあるか?」

「既に用意しておりますよ!」

「ありがとう」


 手際のいいミラのおかげで、早速書き始めることができた。ひとまず、今日の感想やお礼を三枚ほど綴ると、ペンを置いた。


(問題はここからだな……)


 告白をするのにどんな誘い文句がいいのか、そもそもどこでするべきなのか、何一つとして正解がわからなかった。


「そういえばお嬢様。二週間後の夜会、パートナーは決まりましたか?」

「……パートナー?」

「はい。王家主催の夜会はパートナーと参加をするしきたりですから」


 デビュタント以降、王城に行くのは二度目になる。前回と違うのは、時間帯としきたりだった。


(夜会は頭の片隅にあったんだけど……)


 そういえばクリスタ姉様が、淑女教育の時に言っていた気がしなくもない。


(まずいな……ドレスはこの前新調したから問題ないけど、パートナーは抜けてた。……でも、パートナーならギデオン様とーー)


 現実から目を背けるように、下を向いた。書き途中の手紙を見た瞬間、電撃が走ったかのように閃いた。


「……ミラ」

「はい」

「ありがとう、ミラ!」

「よ、よくわかりませんが、お役に立てたのなら光栄です」


 告白したいけど最適な場所がわからなかった。


(……あったな、告白に良すぎる場所)


 思い浮かべたのは王城だった。

 

(しかも今回は夜。……ロマンチックなんじゃないか? あんまりわかってないけど)


 場所としては申し分ないはずだ。

 それに加えて、欲を出すならギデオン様と一緒に夜会に参加したい。


「ミラ。パートナー打診って、書き方とかあるよな?」

「そうですね。本があるかと思いますので、取って参ります」

「それなら私がーー」

「いえ! お嬢様はゆっくりしていてください」


 急ぎ足でミラは図書室に向かった。

 待っている間、お礼の手紙をまとることにした。




 ノック音が響くとミラが入室した。それだけかと思えば、ミラの背後からクリスタ姉様が顔を見せた。


「姉様」

「では、クリスタルお嬢様。よろしくお願い致します」

「えぇ」

「……?」


 ミラは頑張ってくださいと微笑むと、再び部屋を後にした。


「図書室付近でミラと会ってね。打診の書き方なら私が教えるわ。……よかったわ、アンジェが答えを見つけられて」

「姉様のおかげですよ。ありがとうございます」

「あら、私は本を渡しただけよ」

  

 クリスタ姉様はふふっと笑みをこぼしていた。

 私は急いで椅子を用意すると、クリスタ姉様と並んで座った。


「打診はお手紙とはいえ、招待状寄りの固さで書くべきね。紙も、便箋より上質なものを使いましょう」

「はい」


 クリスタ姉様の説明はわかりやすく、あっという間に手紙を書くことができた。


「姉様は夜会に出席されるのですか?」

「もちろん」

(誰と出るんだ? めちゃくちゃ気になる)


 私と同じく、クリスタ姉様には婚約者がいない。親戚の誰かだろうかと思い浮かべる。


「婚約者候補の方と出席するわ」

「えっ」

「顔に出てたわよ。誰と行くのかって」

「す、すみません。……えっ、それにしても婚約者候補って」

「ふふっ。アンジェがアーヴィング公爵と過ごしている間、私も何人かとお見合いして話を進めてたのよ。候補といっても、まだ婚約を結んでいないだけで、もう彼と歩む覚悟はできているわ」

「……おめでとうございます」


 初耳だ。

 突然の情報に驚きすぎて反応が鈍くなってしまった。どうやらクリスタ姉様は姉様で、レリオーズ侯爵家を継いだ時に支えてくれる婚約者探しを進めていたようだ。


「だから夜会で紹介させてね」

「もちろんです。楽しみにしてますね」

「えぇ」


 そう告げる姉様は、幸せそうに笑っているように見えた。


「……さてと、アンジェ。夜会まであと二週間ね?」

「そうですね」

「夜会となれば、ダンスは必須。……もしもアーヴィング公爵とパートナーになれなくても、踊れる機会はあるもの。完璧に仕上げましょうね」


 先程までの笑顔は消え、淑女教育の眼差しに一瞬で変化した。

 昔の私なら逃げ出していたところだが、今は違う。


「よろしくお願いします!」


 勢いよく頭を下げた翌日、地獄の特訓が始まるのだった。

 

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