表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/78

58.敵じゃなくてよかった


 家に着くまでの間、クリスタ姉様によって筆頭侯爵家の説明がされた。ほぼ淑女教育といって間違いはなく、突然勉強の時間が始まったのだった。


 クリスタ姉様の話を簡単にまとめると、レリオーズ侯爵家は筆頭侯爵家ではあるものの、そこまで他家と差異があるわけではなかった。


「お父様は威張ることがなかったし、波風を立てるのを嫌っているのはわかるでしょう?」


「なんとなくそんな気配は」


 血気盛んな前世を持つ自分とは対極にいるのがお父様だ。優しく家族思いであるものの、確かにトラブルを苦手とする一面があるようには見えていた。


「だから筆頭侯爵家と言えど、変に目立つようなことはしていなかったの。だから侯爵家といっても同じ爵位を持つ者という認識でね。私もその意思を尊重したのよ」


だから以前姉様は、同じ侯爵家であれば挨拶をされるのを待てとは言わなかったし、テイラー嬢のことを対等に見ていたと言う。


「けれども状況が変わったみたいなのよね……テイラー侯爵家の財政状況が芳しくないという話は、最近になって聞くようになったのよ。お店での反応を見るからに間違いないみたいだけど」


 どうやらクリスタ姉様の〝末端〟発言は、鎌をかけたらしい。なんとも恐ろしい姉である。


(こえぇ。敵に回したくない相手って、こういうことを言うんだろうな)


 純粋に感心していると、クリスタ姉様は真面目に話を続けた。


「差異がない侯爵家同士だからこそ、一つの失敗は大きな影響を与えるの。オブタリア王国の侯爵家はどこも由緒正しい家で、領地経営も上手くいっているわ。だからこそ均衡が保たれているのだけど……もし本当に財政状況が芳しくないとしたら、テイラー侯爵家と他侯爵家で差ができてしまったみたいね」


 クリスタ姉様は大まじめに解説してくれたと思うのだが、私は半分ほどしか話がわからなかった。


「えぇと……つまりは、テイラー家は今落ち目ということですか?」


「言ってしまえばそうね。」


「だから本来なら、大きい顔ができない」


「えぇ。筆頭侯爵家を侮辱するなど、もってのほかね」


 そう言いながら微笑むクリスタ姉様だったが、その笑みは背筋が凍るほど冷たい雰囲気を持っていた。


(よかった、クリスタ姉様が身内で)


 屋敷に到着すると、「しっかりと復習をしておくようにね」と一言念を押すように告げて、姉様は颯爽と自室へ戻っていった。


(確かに私、知識が足りない部分があるよな)


 クリスタ姉様によってスパルタ指導を受けてきたものの、やはり勉強嫌いの性分は前世から引き継がれているようで、実践系以外の知識は見事に抜け落ちていた。


(思い返してみれば、目を開けたまま寝たことがあったっけ)


 座学というのはとにかく眠くて、まともに最後まで話を聞いた授業の方が少ない気がする。当時は嫌々受けていたものもあったので、その場しのぎができてよかった。しかし、今は違う。


(……ギデオン様の隣に立つには、もっと知識を付けないと駄目だな)


筆頭侯爵家の話だけではなく、社交界や貴族、そしてレリオーズ侯爵家に関する勉強を改めてし直した方がよいと感じたような一日だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
いつも楽しく読んでます! 本当に姉が敵でなくてよかったね(笑) どんぐりの背比べで、均衡が保ってるほうが平和なんだろうね〜 しかし、崩れる(落ち目)るとか悪さしないと良いけどね〜(悪循環に落ちる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ