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45.華やかなオーラ……?


 塩キャラメルプリンは非常に美味しく、すぐに食べ終わってしまった。

 初めて食べる味だったので、ギデオン様の口に合うか不安だったが、終始美味しそうに口に運んでいた。


「不思議な感覚ですね。しっかり塩気があるのに甘みも感じられて、キャラメルの良さが上手く生きている……凄く美味しいです」


 食レポ並みにしっかりと感想をこぼすギデオン様の隣で、私も同意するように頷いた。


「私は普通のプリンよりも好きかもしれません」


 甘いものが苦手という訳ではないが、単純に甘すぎるものより塩気のあるプリンの方が美味しく感じたのだ。新しい発見に、私は少し胸を躍らせていた。


「今日ギデオン様と食べられて良かったです」


「……だとすると、アンジェリカ嬢のおかげですね」


「私の?」


「はい。このお店はアンジェリカ嬢に連れて行っていただいたので」


 そう言われると、胸に込み上げてくるものがあった。

 流行のお店はクリスタ姉様に教えてもらったものと言えばそれまでだが、今日の道順やエスコートなど準備するために努力しなかったわけではない。ギデオン様から評価してもらえたことで初めて、今日のために頑張って計画を立てて良かったと実感した。


「ありがとうございます、ギデオン様」


 口角を上げながらお礼を告げると、ギデオン様も嬉しそうに口元を緩めた。


 休憩も兼ねて穏やかな一時を過ごすと、次の場所へ移動する流れになった。


「次の場所なのですが、ギデオン様の意見も聞きたいなと。どこか王都で行ってみたかったお店や、食べてみたいスイーツはありませんか?」


 そう問いかけると、ギデオン様は驚いた様子で固まってしまった。


 これはクリスタ姉様の案を受けて、私なりに考えた結果だった。甘い物好きなギデオン様なら、王都の美味しい物や食べたいものがあると踏んだのだ。しかしこの提案には二面性がある。一つは、自分の行きたい場所に行けるという考えだが、もう一つは丸投げと感じてしまう場合もある。


(どうしよう。悪く捉えられてしまったかな)


 そう思い悩んでいた瞬間、私は目を疑う光景を目の当たりにした。


「よ、よいのですか……⁉」


 固まっていたかと思ったギデオン様は目を輝かせ、期待のこもった眼差しを私に向けていた。そして彼の背後には花が舞っている光景が一瞬見えた。


(これは覇気か? ……にしては華やかすぎる気が)


 ギデオン様からあふれ出るオーラに目を奪われる。


(……あ、あれ? 見間違いか)


 パチパチと瞬きをすれば、花は消え去っていた。

 私がギデオン様の背後に気を取られていると、彼はいつもより少し早口で語り始めた。


「今回食べた塩キャラメルプリンも食べたいと思っていたお店の一つだったのですが、実は他にも食べてみたいものがあって……。す、少しだけお時間いただけますか? すぐに決めますので」


「も、もちろんです。ゆっくり考えてもらえれば」


 私の不安は嘘のように吹き飛ばされ、ギデオン様の喜びが興奮具合から伝わって来た。思いもよらなかった反応に、今度は私の方が衝撃を受けてしまい、間の抜けた返事になってしまった。


 長考するギデオン様を見ていると、段々自分の提案が間違っていなかったことに対して安堵と嬉しさが浮かび上がってきた。悩んでいる様子を見るあたり、行きたい場所が多いのだと踏んだ私は、さらに一つ提案をした。


「ギデオン様。まだ日が落ちるまで時間がありますから、行きたい場所に片っ端から向かいましょう」


「えっ。ですがそれはさすがに」


「いいんです。今日はギデオン様に楽しんでもらうための日ですから。それに元々趣旨はスイーツ巡りです。なのでせっかくなら、お腹が許す限り多くのものを食べましょう」


「よ、良いのでしょうか」


「もちろんです!」


 恐る恐る尋ねるギデオン様に、満面の笑みを返した。


「そうと決まれば早速次のお店に向かいましょう」


 こうして私達はベンチから立ち上がると、塩キャラメルプリン専門店を背にして歩き出すのだった。


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