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43.全制覇の約束です


 ギデオン様からの言葉に衝撃を受け、目が見開かれた。


ギデオン様からこぼされた言葉は、褒め言葉でそれ以上にも以外でもなかったと思う。けれども、他のどの褒め言葉よりも嬉しくて、胸の中が一気に満たされていった。


(……何だろう、すっごい嬉しい)


 思わず口元が緩むと、私はそのまま返答した。


「私も、ギデオン様と一緒だから凄く楽しいです」


 嬉しいと感じた言葉は共有したい。そう思いながら返せば、ギデオン様に微笑みが浮かんだ。


(今日は顔が良く見える分、笑顔がより大きく見えるな)


 表情が堅いのはいつものことだが、眉までよく見える状況なので、普段と比べて笑みが柔らかいように思えた。


「今日は一日中楽しみましょうね」


「はい」


 ギデオン様と微笑み合いながら、ほのぼのとした会話をしている内にパンケーキが運ばれてきた。


 三段に重なったパンケーキには、シンプルにシロップとホイップだけがトッピングされていた。シンプルな見た目だが、漂う香りは甘く美味しそうなものだった。


 チラリとギデオン様を見てみれば、パンケーキの到着に喜んでいる雰囲気を感じた。


(あれは……無表情に見えて、実は喜びを噛み締めている表情、に見えるな)


 無表情に見慣れたからかもしれないが、ギデオン様の表情が動かなくても雰囲気で様子を感じ取ることができた。


「凄く美味しそうですね」


「はい。早速ですが食べましょうか」


 幼い子のようにわかりやすいほど目を輝かせているわけではないが、ギデオン様からは高揚している様子が伝わって来た。食べ始めると、味も申し分ないほど美味しいもので、食べ終わるのはあっという間だった。


「三枚もあったので多いかなと思ったのですが、むしろ少ないくらいですね」


「わかります。一つ一つが軽い食べ心地ですよね。シンプルな味付けが美味しくて凄く食べやすいです」


 甘いものは好きとは言え、正直三枚は多いかなと思っていたのだ。それでも非常に食べやすく、また食べたいと思わせる美味しさだった。これが王道かと感じるとともに、この店のパンケーキが人気の理由がよくわかる味だった。


 ギデオン様と味の感想を話しながら、食後の紅茶を楽しんだ。少しゆっくりすると、私達はパンケーキ店を後にした。


「ギデオン様、これは全制覇ものですね」


「そうですね。また一緒に来ましょう」


「はい、約束です」


 一度交わした約束は必ず守り遂げる。そう強い意思を抱きながら、ギデオン様の方を見て頷いた。


 美味しかったら全制覇をしようという提案を約束に変えたところで、次の店に向かった。

 さらりと自然に差し出された手に、無意識に重ねたところでエスコートされている事実に気が付いた。到着してすぐほどの緊張はなくなり、安心感と嬉しさが浮かび上がっていた。


「次は王都で流行りのお店に行こうと思います!」


「流行の……!」


 気合いを入れながら目的地を告げれば、ギデオン様からは嬉しい声色の反応が返って来た。


「色々流行のお店があるんですが、今回はプリンのお店に行こうかと思いまして」


「プリン。いいですね」


「プリン専門店なのですが、その中でも塩キャラメルプリンが看板メニューかつ王都の流行の一つのようで」


「塩キャラメル……食べたことのない味です。凄く楽しみです」


「私もないので、どんな味か想像しただけかわくわくしますね」


 ギデオン様がまだ口にしていないことに少し安堵しながら、プリン専門店を目指すのだった。


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