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【コミカライズ】人類裏切ったら幼なじみの勇者にぶっ殺された  作者: 溝上 良
最終章

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第91話 浮気しているようだから

 










「……懐かしい夢を見たな」


 目を覚ます。

 周りを見れば、まだみんな眠っていた。


 姫さんは俺にへばりつくようにして、ナイアドはその柔らかく大きな胸を布団にして眠っていた。

 オフェリアは地面にべったりと転がっている。


 寝相、どうなってんだ。

 基本的に夢の内容はすぐに忘れるものだが、俺はまだ覚えていた。


 忘れることのできない過去の情景を見させられたからだろう。

 ふうっと一息。


 そんなに嫌な記憶ではない。

 結局、最後にはアオイを取り戻すことができたのだから。


 だからこそ、ミカエルから伝えられたことは、俺は許容できない。

 ようやく、アオイは休むことができたのである。


 そして、生まれ変わったら、今度こそ一緒に、と。

 それを無視し、また彼女に聖勇者としての重荷を無理やり背負わせようとしているのであれば、俺はそいつを許すことはできない。


 それが、かつて俺たちを引き離したゴルゴールと知れば、なおさらだ。


「どんな夢だったんですか?」


 そんな俺に声をかけてきたのは、シルフィだ。

 ウンディーネで、サイドテールと無表情が特徴的な彼女。


 第四次人魔大戦では、俺と一緒に戦ってくれた戦友だ。

 彼女は水の身体を自在に変形させることができ、普段は俺の胸ポケットにナイアドと一緒に入っているのだが、今はいつも通りの豊かな凹凸の肢体である。


 すぐ隣に座るシルフィに、俺は短く答える。


「昔の夢だ」


 それだけで、俺とシルフィには意味が通じる。

 彼女はコクリと頷いた。


「私も何度もあの頃の夢を見ました」

「そうか。折り合いはつけられているのか?」

「ええ。あなたが戻ってきてくれましたから」


 俺が?

 疑問に抱いていることが伝わったのだろう、シルフィは俺の腕をつまみながら言う。


「私はあの時、あなたの元に駆け付けず、逃げ出したことがずっと心残りでした。それを何度も夢に見て……」

「もともと俺がそう指示していたから、シルフィの選択は正しかった。あの時、俺の元に来られていても、俺は君を気にする余裕はなかったしな」


 逃げ出したと言うが、それは俺が命令したことだった。

 時間は十分に稼げていたし、あれ以上残っていたら文字通りの全滅である。


 十中八九死ぬと分かっている戦場に連れて行ったくせに、俺は彼女たちに生きてほしいと思っていた。

 それに、シルフィが援軍に来てくれていたら、俺はダーインスレイヴの力を全力で使うことができなかった。


 彼女も影響を受けて、力を吸い取られることになっていたかもしれないからだ。

 あの時、あれが正しかった。


 それは、間違いないと思う。


「それでも、残された方は、もっとああしておけばよかったと悩むものなんですよ」

「……そうだな、悪い」


 シルフィが儚い表情を浮かべる。

 俺もそのことはよくわかっている。


 たとえば、アオイが連れて行かれる前。

 俺が少しでも早く戻っていたら。


 おそらく、どうにもならなかっただろう。

 当時の俺にはダーインスレイヴもなければ、頼りになる仲間もいなかった。


 相手は軍人だし、抗っても意味はなかった。

 それでも、何もせずにアオイが連れて行かれたという事実は、ずっと俺の心を蝕んでいた。


 だから、シルフィの言いたいことは、とてもよく理解できた。


「悪いと思ってくれているのであれば、これからずっと私と一緒にいてくれたら、それで構いません」

「ああ、一緒に旅をするって約束したもんな。シルフィが飽きて俺から離れたくなるまで、一緒にいるよ」

「では、ずっと一緒ですね」


 そう言うと、そっと肩に頭をのせてきた。

 プルプルのひんやりとした心地いい感触と体温が伝わってくる。


 普段なら騒ぎ立てる姫さんやナイアドも眠っているから、まさしく二人きりだ。

 シルフィがそうしたいのであれば、俺としても拒否する理由はどこにもない。


 少しドキドキとしながら、彼女の肩を抱き寄せた。

 ビクッと一瞬肩を跳ねさせるも、すぐに身を預けてくる。


 そうして、少し刺激的だが穏やかな時間が流れて行って……。


「私もその夢の内容を聞きたいのだけど、いいかしら?」


 そんな綺麗な声が聞こえてきた。

 いや、そんな詳しく話したくないから、シルフィにも言っていなかったんだけど。


「いや、そんな詳しく話すつもりは、ない、ん、だが……」


 どんどんと言葉が細くなっていくのは、誰に尋ねられたのかということ。

 姫さんとナイアドは眠っている。


 オフェリアも爆睡中だ。

 そして、シルフィの声でもない。


 なら、誰だ?

 いや、分かっているんだ。


 俺が彼女の声を忘れることはありえないのだから。

 だが、だからこそ信じられない。


 なぜなら、この声は……。


「…………」


 見れば、シルフィも唖然としている。

 彼女が言葉を失うような姿は初めて見た。


 俺はゆっくりと時間をかけて彼女を見上げた。

 会いたいと願い、そして俺が殺した彼女を。


「……アオイ?」

「久しぶりね。浮気しているようだから、一発殴っていいかしら?」


 額に分厚い青筋が浮かんでいる!?




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