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第90話

 兄が温泉街のダンジョンから持ち帰った戦利品の山は、前回にも増してキラキラ輝いて見えた。


 何しろ武具素材系、食料系が多い。


 そしてドーピング剤、マジックアイテムであろうアクセサリー類、スクロール(魔)、各種の良質なポーション。


 それより何より前回に同じく入手して来てくれた結界柵は、今の情勢下では最高の土産と言えるだろう。

 早速、兄と手分けしてアンデッドモンスターが侵入可能に思える場所に、設置していくことにした。

 暗夜の作業だし、いまだに今朝の雪が尾を引いているのか酷く冷え込むが、今はそんなことも言っていられない。


 さすがに【鑑定】を今から全てのアイテムに掛けるのは時間的にキツいうえに、明日の探索にも支障が出かねないので断念。

 そのため見たことのないポーションの等級判定などは、明日の夜の探索が終わってからに回さざるを得ないのが心残りだ。


 個人的には、結界柵はもちろんのこと、ウルブスファング(武器攻撃力強化アクセサリー)など、見たことのある有用なアイテムが今回も並んでいることが嬉しい。

 これらを【鑑定】する必要が無いからということもあるが、既に実際に使ってみたことが有って間違いなく生存難易度の低下や、戦力増強に役立つという確信が持てるからだ。


 その他の実力未知数なアクセサリー類を1つずつ【鑑定】していく……が眠気が酷いためか、どうにも捗らない。

 さらに言えば、温泉街のダンジョンは探索難易度が、それほど高くないダンジョンだからか、有用なのは間違いないのだが、抜群の性能とまで思えるアクセサリーは無かった。

 反面、武器や防具の素材となるアイテムや、食肉系のアイテムも入手しやすいようだし、ポーションの種類と等級については、最寄りのダンジョンより明らかに良いので、これは単にダンジョンごとに特性が違うという話なのかもしれないのだが……。


 それでも11階層のボス、クルーエルベアから今回はベアーズクローという、まるっきりウルブスファングの上位互換のようなアイテムが入手出来ていたりと、収穫と言えそうなマジックアイテムは確かにあるのだから、いつの間にか最寄りのダンジョンを基準にしてしまっていて、要求が贅沢になっているようだ。

 そもそも、能力向上系アクセサリーの傾向が違うだけでも、今のオレ達にとっては得るものが大きい。

 前回も取得していた頑健の腕輪は、対象能力こそ異なるが盛運の腕輪と同じく、同系統の指輪系マジックアイテムの上位に位置する有用なアクセサリーだし、今回は同レベルのアイテムであろう巧妙の腕輪も新しく入手している。

 他にもバイタリティ(生命力)の指輪、マインド(精神力)の指輪、デクステリティ(器用さ)の指輪も、それぞれ複数手に入った。

 また、ゾンビによる負傷からのゾンビ化の原因がハッキリとしない今、同じく8階層のボスから得られたアンバーカメオ(耐呪アクセサリー)の価値は、否応なしに高まっている。

 同じ耐性系では、耐暗のモノクル、耐眠のバンダナ、耐乱のハチマキ、耐毒のネッカチーフと、それぞれ1つずつでは有るが入手に成功。


 ……うん、やはり抜群のアイテムこそないが、質も量も良い。


 眠いと人間こんなものなのかもしれないな。


 まだ目眩がするほどでも無いが、目ぼしいアイテムの鑑定は終わっていると言えば終わっている。

 今日は、このあたりにしておくべきだろう。



 ◆


 深夜……。


 オレは、息子はもちろん妻も起こさないように、ことさら静かに起き上がった。


 まだ少し遠い……遠いが位置が良くない。

【危機察知】の反応の有る、ウチの裏手には民家が無く、そちら側に有るのは小川と、その川原だけだ。

 ちょうど反応が発生したところと、ダンジョンとの直線上に位置するのがウチなので遅かれ早かれ、こちらに来るだろう。


 物音を立てないように慎重に動きながら、居間に向かうと、そこには既に兄の姿が有った。

 どうやら父は起きて来てはいないようだ。


 兄は、いっそ凶悪と表現したくなるような不機嫌な表情で、まるで睨んでいるかのような眼を向けてくる。

 これは誰かを心配している時の顔だ。

 この場合の誰かとは、つまりオレ達全員だろう。


「ヒデ、これ……強いのか?」


 せっかちな兄らしく、端的な質問。

【危機察知】を取得してから日の浅い兄には、まだスキルの感覚だけで敵の強弱を掴むことが、正確には出来ていないようだ。


「強いね……少なくとも、リビングアーマーなんかよりは余程。たぶんだけど、オーガあたりじゃないかな」


 かく言うオレの感覚も、このぐらい距離が離れていると少しばかり正確性には欠ける。

 恐らくはオーガか、そうでなくとも同クラスのモンスター。

 この距離で分かるのは、せいぜいがその程度だ。

 モンスターの現在地は徐々に近付いて来ているが、川に苦戦しているのか少し移動の遅いタイプのモンスターのように思える。


「……そんなもんか。オレが片付けるか?」


 兄の基準からすれば、そういう反応になるんだな。

 だが……


「魔法の方が有効なタイプの可能性も有るからね。今回はオレが行くよ。勝てないほどでも無さそうだし」


「……そうか。万が一、ヤバそうならすぐに退けよ? オレも居るんだから、無理はするな」


「了解……じゃあ、行ってくるよ」


 会話の途中でも装備を身に付けることは、お互いに滞りなく出来ていた。

 フル装備でこそないが、とりあえず主要装備は身に付け終わっている。

 最後に新緑の靴を手早く履いて、家の裏手へと急ぐ。


 ……先ほどから移動していない?


 もしやオレの気配に気付いて、待ち構えているのだろうか?


 だとすれば相当に用心深いのだろうし、鋭敏な感覚の持ち主か、あるいはそういったスキル、または能力を有しているのだろう。


 奇襲で討伐出来たらそれがベストだったが、どうやらそんなに甘い相手ではないらしい。


 いよいよ川原まで来てしまったが、モンスターの姿は見えない。

 梟のピアスが暗視能力付与とかだったら、良かったのになぁ……。


 いつの間にか【危機察知】の反応が、まるでジャミングでもされているかのように、ハッキリしなくなってしまった。


 間違いなく、何かは居る。

 反応が完全に消えたわけではない。


 そして戸惑い視線をさ迷わせているオレに向かって、急速に迫り来るモノに気付いた時には……既に手遅れだったのだ。

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