第47話
頬に季節外れのモミジを貼り付けたまま、オレはデスサイズ率いるカマキリの群れと、正面から対峙する。
デスサイズから得られたアイテムが、オレの鎗に恩恵を与える物では無かった以上、昨日との戦力的な相違点は、倒したモンスター達から吸収した力の一部と、上昇した槍術スキル。
そしてデスサイズ側の取り巻きモンスター、ジャイアントマンティスの数が減っていることぐらいだろうか。
その数、わずかに5匹。
しかしデスサイズ本体が弱体化したわけではないので、大きな戦力差があるとも言えなかった。
しかし昨日と今日、オレ自身の士気に関して言えば雲泥の差があるだろう。
まずは実績。
何だかんだで勝った経験があるというのは大きい。
それからデスサイズの動きのパターンや、実際の戦闘力を知れているというのも、実は大きなアドバンテージだ。
人間、知らないものには恐怖感があって当然だ。
今でこそ、車や電車などより安全だと一般に知られ始めている飛行機だが、そうは言っても一度も乗ったことが無ければ、どうしても不安や恐怖を覚えてしまうだろう。
未知と既知の間には、依然として大きな差がある。
そして何より【勇敢なる心】というスキルの有無。
相手を呑むという言葉が有るが、それに近い状態に常に自分の精神状態をキープすることが出来るようになった。
決して相手を舐めてかかるということではない。
精神的な優位に立って勇壮に戦えるというのは、戦闘する際に非常に有利な条件と言えるだろう。
さて……始めるとするか。
まずは小手調べに、デスサイズから最も遠い位置にいる、ジャイアントマンティスに迫る。
デスサイズは様子見……難なく1体、減らさせて貰った。
さて、ここからだ。
ここからはデスサイズの鋭利な鎌の間合いに入らなければ、邪魔な取り巻きを減らすことさえ出来ない。
だからと言って、ダイレクトにデスサイズを攻撃しに行くと、ジャイアントマンティスの攻撃に晒される。
根気強く隙を見付けては、時折放たれる死神の鎌を避けたり受け流したりしながら、しっかり取り巻きを減らしていく。
昨晩とは違い、無理にデスサイズを狙ったり、不用意に取り巻きを連続して倒すため、長く一ヶ所に留まったりはせず、ヒット&アウェイを心掛けた。
急がば回れ……昨日より圧倒的に数が少ないのも相俟って、無駄なタイムロスは皆無といったところだ。
あっという間にデスサイズとの一騎討ちに移行する。
そこからは、なるべく昨日の勝利パターンに近付けていく。
勝負を急がず、じっくりとデスサイズの巨大な身体に、鎗を突き刺し穴を増やしていく。
意識したのは、昨日より胸部や腹部への刺突を減らし、致死の鎌を支える肩や、特徴的な逆三角形の頭部を支える頚部への攻撃を優先したぐらいだろうか?
早々に最大の脅威となる鎌が地面に落ち、すぐ後を追いかけるようにして、頭部も落ちる。
昨日は盛大に地面を濡らしていた胸部や腹部からの体液は、全く比較にならないほど少なかった。
カマキリ達の落とした戦利品の回収をした後、主の居なくなった階層ボスの部屋で、しばらく休息していたオレだったが、あまり長々とここで時間を潰しているわけにもいかない。
そろそろ今日の本命、第4層へと進もう。
!
危ない、危ない。
また無意識に頬にモミジを貼るところだった。




