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第31話

「……ワーラットが?」


「そうだ。あれ、いわゆる戻りだよな?」


 夕食後の報告会で、兄から聞いたモンスターの名前に、オレは思わず驚く。


 ワーラット……日本語にすればネズミ男。

 有名なマンガ作品に登場する妖怪……では、もちろん無く、その造形も大きく異なる。

 ワーウルフが、オオカミ男または人狼と訳されるのは有名なのだが、要はそれのネズミ版なのだ。

 人鼠?

 なんだかそれもピンと来ないが、同系統のモンスターには、人狼より上位のワータイガーや、人狼よりは下位だがネズミ男よりは上位のワーキャットなどもいる。

 ワーキャットのメスならネコむす……いや、それはともかくだ。

 ワーラットの外見については、ワーウルフの見た目から類推してほしい。

 乱暴な言い方をすれば、直立したネズミが人間寄りの動きをするようなモンスターだ。


 警戒心が非常に強く、兄達と出会った時も逃走しようとしたらしい。

 父が咄嗟の機転を利かせて、槍を脚部目掛けて投擲。

 見事に転倒したところを、妻がトドメを刺したということだった。


 ワーラットが最寄りのダンジョン第1層に出現したという情報は今までに無い。

 それはつまりこのワーラットが、ダンジョンでポップしたモンスターではなくて、ダンジョン外で現れ魔素を求めてダンジョンに入ってきた……いわゆる『戻り』と言われ始めたモンスターであるということになる。


 ワーラットのモンスターとしての格は、だいたいコボルト以上オーク未満といった評価だ。

 しかしながら、ワーラットが忌避されている要素を考えると、ある意味ではオーク以上の脅威になりかねない危険性を孕んでいる。

 ワーラットは、ゴブリンなどと同様に強者には怯み逃げ出す様な臆病な性質と、弱者には積極的に襲い掛かる狂暴性を併せ持つモンスターだ。

 しかし、この場合に問題になるのは、ワーラットに噛まれたりすると、病毒という特殊な状態異常に陥り、それが伝染性をも兼ね備えているということにある。

 治療自体は初期症状なら、解毒ポーションで充分可能だ。

 症状が少々進んだとしても、解毒ポーションの服用に併せて、医師から抗生物質を処方して貰えば、最悪の事態に陥ることはない。

 重篤な症状にまで進行した場合は上位の解毒ポーションが必要になりはするものの、治療自体は不可能ではない。


 問題は、今の情勢にある。

 もし病毒が流行した場合、流行を沈静化させるために必要な数の解毒ポーションが、恐らく今の世の中には足りない。

 もし足りていたとしても、それを流行の発生に合わせて、適切な場所に適切な数を送ることは出来ないだろう。

 接触感染、飛沫感染に加え空気感染までするという、極めて流行性の高い伝染病であるのに対して、今の情勢下ではそれに対抗する手段に乏しいのだ。

 せいぜい、抗生物質で進行を抑えている間に、どうにか解毒ポーションの入手を待つようになっていくだろう。


 どんどん危険性を増していく、この世界。

 ファンタジーを題材にしたゲームなら、絶対の安全地帯として扱われることの多い、町や村の中。

 そこに、いつ湧くか分からないモンスター達。


 まだ始まったばかりの悪夢は、今後どれだけの悲劇をもたらすことになるのか……。

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