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第254話

 次々に現れては、間髪を入れずに白い光の渦に呑み込まれていくモンスター達。


 ティターンやシルバードラゴン以上の格を持つモンスターが居ないからこその光景だが、こうなると既に戦いとは呼べないものに成り下がっていた。

 最早これは狩りですらない。


 ……作業だ。


 何しろ()()が進めば進むほど、オレの力は増していくのだし、従って敵は相対的に弱く感じるようになっていく。

 ドラゴンのブレスを風魔法で押し返す試みは以前から(おこな)ってきたが、ここまで力の差が広がると風魔法の中では最弱の筈のワールウインドでさえ、ブレスを押し返すだけに留まらず散々に敵を切り裂いて、時にはそれだけで勝負が決まってしまう。

 もうすっかり別モノの魔法だ。


 巨人も竜も、その他いかなるモンスターも瞬く間に全滅していく。


 雑な戦いをしないように努めて意識しているため、昨日までのように急速に得た力に振り回されてしまうようなことにはなっていないものの、どうしても緊張感に欠ける戦いになってしまうのは避けられなかった。

 まぁ、今日の目的自体は充分に果たしたことだし、戦いにそれ以上の意義を求めてはいけないのだろう。

 大物を狩るたびに自分の意識と、実際の自分の能力との差に悩まされることになったのは最初の方だけだ。

 今はどれほど化け物じみたモンスターを倒そうが、そうしたモンスターの力を大量に喰らおうが、既にギャップは感じなくなっている。

 そろそろこの付近のモンスターも狩り尽くす頃合い……そんな時に限って出て来るものらしい。

 目の前で黒い渦同士が合流していく。


 妻達から聞いていた、イレギュラー出現の兆候そのものだ。


 みるみる大きくなっていく禍々しい渦。

 さらにまた1つ合流し、拡大の速度を上げていく。

 最終的5つの渦が集まって出来た大渦は、都会の小学校の狭い校庭ぐらいなら余裕で飲み込むほどのサイズにまで膨張し、それから唐突に収束した。

 中から現れたのは巨大という表現が、いっそ陳腐にすら感じられてしまうほどの巨躯を誇るモンスターだ。

 真横に有った30階建てのビルよりもよほど背が高く、今は折り畳まれている翼を広げればどこまで翼長が有るかさえ不明瞭。

 ここまで巨大な鳥型のモンスターというのは過去に遭遇した者は居ない筈だった。

 パッと見では、こないだのグリフォンにも似ているような気がするが、こちらの方がよほどデカいし、ヤバそうな気配がビンビン伝わってくる。

 コイツと比べればシルバードラゴンさえも、赤子みたいに無力な存在に見えることだろう。


 ……なんなんだコレは?


 試みに各属性の攻撃魔法を放ってみたが、まるで効いていないように見える。

 顔はワシやタカなどの猛禽類のものに見えるが、猛々しさよりもむしろ何故か神々しさが勝っているから不思議なものだ。

 取って置きの【無属性魔法】さえも通用せず、それらの攻撃を全く意に介さずに、ついに巨鳥はその翼を広げた。

 途端に暗くなる周囲……理由は言うまでも無い。

 それほどにヤツの翼が馬鹿デカいのだ。


 呆気に取られるオレの目の前の怪異が軽く……本当に軽く羽ばたく。

 凄まじい暴風が道路に停められていたカーキャリアを、積んでいた車ごと吹き飛ばしてしまった。

 当然オレも無事ではいられない。

 抵抗する間もなく吹き飛ばされ、背後に有ったホテルのガラス窓に叩き付けられてしまう。

 オレがぶつかったところはもちろん、それ以外のガラスも一斉に割れ内部のものを(ことごと)く傷付けながら微細な破片へと、その姿を変えていく。

 オレが何とか生きていられたのは【竜身(ドラゴンボディ)】や【生命力強化】などのスキルのおかげだろう。


 ヤツからしてみれば飛翔前の何気ない予備動作に過ぎない、本当に何でもない動き。

 それだけでこの惨状だ。

 ホテルのエントランスは既にグチャグチャのボロボロ。

 ヤツがほんの気紛れ程度にでもここに体当たりして来ようものなら、建物自体が倒壊してしまうかもしれない。

 急いで回復魔法を掛けたが、それでも膝が笑ってしまっている。

 これが傷が癒えてなお抜けきらないダメージによるものなのか、本能的な恐怖からくるものなのかまでは分からない。

 分からないが、それでもこの建物の内部にいることは危険なのだと【直感】がうるさいほどに告げ続けている。

 裏口に相当する出入り口のドアを蹴破り、ホテルから抜け出す。

 オレがホテルの壁を盾にするように走りながら空を見上げるのと、先ほど以上の暴風が吹き渡るのとは、ほぼ同時だったと思う。

 何が当たったのかまでは分からないが、ホテルの火災報知器がけたたましく鳴り響いているのが聞こえる。

 いまだに建物の中にいたらあるいは今頃オレは生きていられなかったかもしれない。

 肝を冷やしながらオレが見上げた上空に……


 居た。


 ヤツは既に高空に舞い上がっていた。

 ……辺り一面、酷い状況だ。

 横転どころでは無く転がったのだろう原型を留めていない車が、そこら中で火を吹き黒い煙を上げ続けている。

 杜の都と(うた)われる一因ともなった街路樹が折れ、建物や車などに突き刺さって無残な様相を晒していた。

 看板は落ち、標識や信号機は倒れ、どこから飛んで来たのか有名なファーストフードの象徴的なキャラクターの人形が四散して、まるでバラバラ死体のような有り様になってしまっているのが見える。


 デタラメにも程があるだろう。

 存在自体が脅威……いや、災厄だ。


 あまりにも最悪なモンスターの登場に、しかしオレの闘争心は何故か燃え盛る気配を見せている。

 デタラメなのは、あるいはオレの方なのかもしれないな。


 やれやれとため息を吐くと、それで肩の力が抜け、さらには膝の震えも止まってしまう。

 そして疼く……。


 忘れかけていた渇きが……飢えが……にわかに疼き始める。

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[良い点] ヨルムンガルドとか?
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