第18話
残された東側の探索に移るため、通るルートを変えつつ、入り口の方に戻って行く。
そこそこ狩り残したモンスターが残っていたようだが、特に問題にせず蹴散らしていった。
これまでのところ、他の探索者には全く遭遇していなかったのだが、入り口付近に来たこともあってか、ここに来て初めて思い思いの装備を身に纏った若い連中が、モンスターと戦っている場面に遭遇する。
相手はジャイアントセンチピード。
このダンジョンに出現するモンスターの中では、初心者には少しキツい相手なのだが、何かと拙い部分も有りながら、数的有利を活かして順調に戦闘を進めているように見える。
前衛に西洋風の剣と盾を装備しているのが1人と、両手で斧を持ち大げさ過ぎるほど重厚な防具を装備したのが1人。
中衛にロングスピア持ちが2人。
邪魔にならないよう戦闘領域にゆっくり近付いていたオレは、彼らの後ろから迫り来るモンスターに気付いて、警告の声を上げると同時に全力で走り出した!
「後ろ! 危ないぞ!」
「なっ! 邪魔すんなや、オッサン!」
状況が呑み込めていない様子の前衛の小僧が、非難の声を上げるが、駆け寄りざま構わずジャイアントセンチピードにトドメを刺し、勢いそのまま、中衛の少年に襲い掛かっていたイビルバットに突き掛かる。
惜しくも空中に回避されたが、とりあえずはモンスターと若者達の分断には成功。
目線は宙を舞うモンスターに据えたまま、腰のポーションストッカーを鎗を持っていない方の手で探り、無事に回復ポーションを引き当てると、怪我をしてない方の槍持ちの少女に、そのまま後ろ手で差し出す。
「ほら、早く治療してやってくれ」
女の子は少し悩んでいたようだが、それでも痛がっている少年の様子に腹を決めたのか、ポーションを受け取ってくれた。
前衛の連中が苛立たし気な足音を立てながら、こちらに向かって来ようとしていたところに、叱責気味の一声を掛けてやる。
「ムカデが来た方、ちゃんと見とけ! また挟み撃ち喰らいたいのか!?」
ピタッと足音が止まる。
どうやら忠告を受け止めてくれた様だ。
ようやく後顧の憂いが無くなったので戦闘に集中……飛び回るコウモリに少し手こずりながらも、きちんと決着をつける。
「危ないところを、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
怪我をした少年と、よく見ればその少年に良く似た顔立ちの少女は素直に頭を下げた。
礼も言わずムスッとした剣持ちのガキ。
何やらオドオド視線が定まらない、ずんぐりむっくりの斧持ちの少年。
パッと見18~20歳ほど。
高校卒業したてか、大学生ってとこかな。
「いや、別に礼は良いよ。今は、外からもモンスターが来るようになっちゃったから、戦ってる時でも後ろに気を付けてね? じゃあ……」
厄介ごとはゴメンだ。
ムカデとコウモリの落としたアイテムは彼らが拾えば良い。
そう思って予定通り東に足を向けると……
「待って下さい! これ、コウモリの……」
少年がポーションの瓶をこちらに差し出してくる。
「待てよ! それはオレらのだろ?」
「何言ってるんですか! これはあちらの方が倒したコウモリの落としたアイテムですよ!」
ポーションの所有権を主張する剣ガキと、律儀に筋を通そうとするお嬢さん。
「あぁ、いいから、いいから。またケガした時用に持っときな。じゃあね」
「そんな! 助けて頂いたうえ、これは受け取れません! むしろ、何か他にもお礼をしないと……」
「そうですよ、今は大したものは持っていないので、良かったらお名前を教えて頂けませんか?」
「いいって言ってんだから、いいじゃん。しつこくすんなって!」
ダメだな、これは。
「ゴメン! オレも急ぐからさ……」
逃げるようにして駆け出す。
善良そうな兄妹には悪いけど、あの頭の悪そうなのに名前を明かすとか願い下げだしなぁ。
何だか、どっと疲れてしまったが、出口には彼らが居るので帰るに帰れない。
このまま予定通りに東側の探索を完遂することにしよう。
オレは行く手に現れた罪も無い(?)モンスターに、苛立ち紛れに鎗を繰り出すのだった。




