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第150話

 想像していた通り……いや、贔屓目に見積もっても、想定以上の苦戦を強いられていたというべきだろうか。


 同じ視界を阻害することを目的とする魔法でも、天使の使う光属性魔法は閃光を放つ魔法で、オレの使う闇属性魔法は夜闇の如きカーテンで敵の眼前を覆う魔法となる。

 閃光に焼かれた眼は回復にそれなりの時間を要するし慣れられるものでも無いが、漆黒のカーテンは必ず敵の視界を塞げるとは限らないし、そもそも天使の持つ魔法抵抗力の高さは異常の一言で、首尾よく視力を奪えてもそれほど長続きしないようだった。

 これはあくまで一例に過ぎないのだが、光属性と闇属性の魔法は表裏の関係に有るものが多く、どう見ても使い勝手が良さそうなのは光属性魔法の方だ。

 そして魔法への抵抗力は明らかに天使が上回っている。


 武器は互いに槍……あちらは長槍、こちらは短鎗。

 これについては本来なら、どちらが有利とも言えない。

 取り回しが良いのが短槍で、リーチが長いのが長槍。

 間合いさえ上手く詰められれば、むしろ短い方が手数で上回れるし、こうしたリーチの長さで不利な相手には、いつもオレは自ら間合いを詰めることで対処してきた。

 純粋な槍術においてはオレが上回っているようだ。

 それは、ここに至るまでの有効打の数の違いが教えてくれている。

 問題は天使の翼だ。

 ここでラッシュを掛ければ、致命打になるかもしれない……と言った場面では必ずと言って良いほど上空に逃げられてしまっている。

 ならば翼を優先的に狙うべきなのだろうが、それはヤツも先刻承知なようで、なかなか上手くいかない。

 それにオレの方が槍術に長けているといっても、その差は残念ながらそこまで大きなものではないのだ。


 そして武器の材質……恐らくまたも敵の武器の材質はオリハルコンだ。

 天使の繰り出した槍の穂先を、オレの鎗側面の月牙で弾いたところ、月牙の上弦部が抉り取られてしまっていた。

 ミスリル製の月牙を豆腐でも切り裂くようにして容易く損壊させるとなると、材質で思い当たるものはオリハルコンぐらいなのだ。

 柄にも差が有るような気がするが、その材質の確かなことはわからない。

 (しな)りと硬さの両面で魔鉄製のオレの鎗の柄を上回りながら、見た目としては木製のもの。

 オレの知る限りでは、そうした材料に心当たりは無い。


 精神的な疲弊は戦闘の高揚感で誤魔化せているし、体力もスタミナポーションで補えた分で今しばらくは持つだろう。

 これまでの戦闘中に失った血液は戻らないが、それは仕方ない。

 とりあえず傷口をポーションや、水魔法で塞げているだけでも良しとすべきだ。

 間違いなく長期戦はオレにとって不利に働く。

 それなのに明らかに攻め手に欠いてしまっている今の状況は、次第にオレの心を曇らせている。

 焦ったところで状況が良くなるわけではないのだが、どうしても勝負を急ぎたくなるのは仕方のないところだ。



 これでもう何度目になるのか。

 オレの間合いでの戦闘を嫌った天使が、一瞬で上空へと舞い上がっていく。

 そのたびに魔法での追撃を試みているのだが、あちらも魔法で対抗して来るため、決定打にはならない。

 魔法光を宿した鎗を投擲するわけにもいかず、ただ鉄球やスローイングナイフを投げても意味を成さないだろう。

 敵の体内魔力(オド)と同時に、付近の魔素(マナ)を奪うマギスティールは、今回は自殺行為になるため使えない。

 大気中の魔素が枯渇すれば困るのは、天使よりむしろオレの方だ。

 今回のように実体を持たないモンスターを傷付けるには魔法の力に頼る他は無く、それなのにオレの方は肉体を捨て去るわけにもいかず、つまり敵は魔法を必ずしも必要としない。

 はなはだ不条理と言うしかなかった。


 ……待てよ?

 …………不条理?

 敵からすればオレの持つスキルだって、立派な不条理なんじゃないのか?


 魔力の向上は最初こそ、ネタスクロールと思われていたスクロール(魔)の使用に頼るしか無かった。

 それは大多数の人にとっては今でも同じだ。

 今では、その日のスクロール(魔)の取得数に一喜一憂し、誰もが使いたがるアイテムになっている。

 しかし初めはそうでは無かったのだ。

 遊び半分と言っては聞こえが悪いが、家族のうち誰かがスクロール(魔)を集中的に使用して、本当に役立たずなのか、実際は有用なアイテムなのかを検証するため、たまたまオレが最初にこのダンジョンでスクロール(魔)を得たばっかりに、その後も暫くはオレが優先的に使用させて貰うことになっていた。

 スクロール(魔)の真価が判明してからはむしろ使用するのを控えていたが、オレはそれを補って余りあるスキルを得ている。


【存在強奪】


 ゴーストやレッサーデーモン、先ほどのモーザ・ドゥー(黒妖犬)や目の前の天使のように、実体らしい実体を持たないモンスターの存在を支えているのが、いわゆる魔素(マナ)だ。

 当然、敵の存在力を奪った際に最もオレが多く手に入れている力とは、つまり魔力に他ならない。

 これはファハンや、リザードマンロード、それから以前のマチルダのように、しっかりとした実体を持っていたとしても大きくは変わらなかった。

 ダンジョンが地球上に発生したから、今ではゴブリンやスライムを知らない者など居ないほどになっているが、ダンジョン発生前にこういったモンスターが実際に存在するとは誰も思っていなかっただろう。

 つまり今までオレが倒して来たモンスターは、その存在の根拠の大部分を魔素に依存しているのだ。


 【存在強奪】を得てから、あの悲惨なスタンピードを経験し、マイコニドの殲滅戦に従事し、そして第7層に蔓延(はびこ)っていた理不尽なまでに強いモンスター達をオレは倒し、そのたびにオレはヤツらの存在を()()()()来た。

 一度はマチルダからさえも全てを奪ったのだ。


 どのみち今のままでは勝機は掴めない。


 ならば賭けるのも悪くないだろう。

 当の本人でさえどこまで増えているのか想像すら及ばない、オレの魔力に……。

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